12・母親は子を嫌わない
携帯で書いたのと久しぶりだったのとで、多少書き方が変わってるかもしれません
僕はあまりの恥ずかしさ故に、ジャングルジムに登り、その頂上から地面に向けて飛び降り自殺。
皆は目に涙をためて笑い、万歳三唱し、「地球温暖化はこれで終わりだ」と言いだし、僕の死は歴史に残る名誉の死となりました。
ああ、僕はいらない子だったのね~。
「晃、遠い目してどうしたの?」
「あ、いえ、なんでもありましぇん」
しまった!語尾噛みました。しぇんってなんですか!
自殺した後の最悪の展開を妄想し、現実逃避していた僕を見て不思議に思った葵が話しかけてきました。
ところで、僕はある程度礼儀作法があるものと自負しています、いや本当に。
なのに何故僕は語尾を噛んでしまったのか。その理由はCMの後!
クラ、新アルバム、ビリオンヒット達成。みんな、話題に乗り遅れるな!
安い、死ぬほど安い。あのダブル味噌スープバーガーが今ならたったの2万ペソ。このチャンスを見逃すな!
本当にやるとは………作者は馬鹿か。まあ今更か。
では答え、それはずばり、彼女が僕の顔をじっと見ているからです。しかも超至近距離で。少しでも体が動けば、僕の唇が彼女の額に触れるぐらいに近いです!純情少年(だと自分で思ってる)僕は、他の人から見れば目に見えて狼狽していることでしょう。
「大丈夫………?」
「だ、大丈夫。大丈夫でしゅから!」
これ以上近づかないで、お願い!理性が死んでしまいますから!いや、もう半死半生な状態なんだけど!
僕は彼女から少し後ずさりながら、何度も「大丈夫!」と発しました。まあ、そんな人間が大丈夫なわけはないのですがね。ノープロブレムなら怪しまれずにすんだのに、僕ときたら(大して変わりません)。
まあ、説得(?)のかいあってか、彼女はそれ以上言及してきませんでした。やっぱり、あなたは優しいですね。もう僕と結婚するしかありません!
「わがまま、過ぎ…だ、よね………」
ガーン!酷いや、酷いや!確かに僕と秋月さんは釣り合いませんよ!まず顔からして釣り合わない、性格も釣り合わない……だからって何もそこまで言わなくても!
ええ、彼女に釣り合うのは奏のような奴でしょうね!僕より成績優秀ですし、運動神経抜群ですし、顔だって………………僕だって!…無理ですね、トホホ。
「いえいえ~、そんなことはありませんよ~、楓ちゃん」
日向さん、あなたって人は、どこまで優しいんですか!?もう僕と結婚するしか、って………えっ?楓ちゃん、って誰でしょうか?
僕は、なにやら先程から僕の様子を見て困惑の視線を送ってくる葵を気にしないようにしつつ、日向さんのいる方を向きました。
すると、先程まで目を真っ赤にして泣いていた女の子が泣きやんでいて、日向さんとお話をしているようです。って待ってください。ということは先程までの言葉は、僕に対してじゃなかったのですか!?うわ、恥ずかしい、死んでくる、天皇陛下バン、……何度も同じネタやる僕って…。
つまらない事はさておき、僕と葵は日向さんとその女の子のもとへ歩み寄ります。そして女の子の前にしゃがみ込むと、警戒しているのか、日向さん(こちらもまたしゃがんでいます)の背中に隠れて、こちらの動向を伺ってきています。
肩に掛かるか、かからないかくらいの黒髪で、かなり背が低く、また大きなくりくりっとした目をしている非常に可愛らしい女の子です。
僕はその女の子に微笑み(僕の笑顔は今まで多くの人々を陥落させてきました、全員男子ですが…)、警戒心をほぐしてもらおうと画策します。
「僕は河合晃といいます、あなたのお名前は何でしょうか?」
どうですか、この紳士的な対応。これなら下心があるなんて誰も思いませんよ。
「ロ、ロリコンさんですか?」
何故~!?今の僕の対応の中に、それを思わせる節なんてありましたか!?
「いいえ、ケフィ……違いますよ」
「で、でもお母さんが、見知らぬ人に声をかけられたら、ロリコンだと思いなさいって」
この子のお母様ァ!あながち間違いとは言えませんが、妙な躾をしないでください!
「ロリコンではありませんよ、仮にロリコンだとしても、ロリコンという名の紳士なのです」
「ところで、ロリコンって何ですか?」
知らんのかい!お母様ァ、肝心なところが抜けてます!
「ロリコンは、ロリータ・コンプレックスと言って、語源はナボコフの小説“ロリータ”の主人公が8歳から12歳の女の子にしか興味を持たなかったことからきてる。つまり、小さい女の子に恋愛感情をもってしまう人のこと」
「それなら良かったです、私まだ7歳ですから」
「葵、なんでそんなに詳しいのですか!?というか、7歳であろうとロリコンには関係ありませんから!」
「じゃあ~、河合さんは、楓ちゃんに恋愛感情をもってるんですか~?」
「いや、それとこれとは関係ありませんから!」
「………!」
「って驚かないでください、それから真に受けないでください、葵!」
「あ、あの不束者ですが、よろしくお願いします!」
「って、なんであなたまで真に受けてるんですか!それに、なんでそんな難しい言葉知ってるんですか!」
「え、えっと、お母さんが教えてくれた」
「あなたのお母様って一体………」
「少し変わってるから、私のお母さん。って、え?あの、何で私を抱き上げてるんですか、お姉さん?」
「晃が犯罪者になるのはなんとしても防ぐ」
「いや、なにが!?ってその子を連れてどこに行くのですか!?待ってくださーい!」
「待たない」
「あらあら~、楽しそうですね~」
数分後、追いついた僕は彼女の誤解をなんとか解きました。まあ、その説得の言葉はあまりに情けないのでカットします。
「晃は、巨乳が好き、巨乳が……」
葵~!何、説得の言葉呟いてくれちゃってるんですか!
そう、説得の言葉とはズバリ「僕は巨乳好きなんですから、ロリコンではありません!」です。そういうと彼女は、納得したのか、女の子を話し、自分の胸を見て、少し嬉しそうな顔をしました、何故?
そうして、今現在、僕達がいるのは公園のブランコ。4つある隣合ったブランコに、それぞれ一人ずつ座っています。ちなみに奥から順に、葵、僕、楓ちゃん、日向さん。ちなみに自己紹介は先程すませました。楓はもちろん先程の女の子の名前です。というか、さっきから葵が自分の胸をしきりに見て、その度先程の台詞を呟くのですが、なんてかしてください。
「あ~、楽しかった!」
「僕は心底疲れましたが…」
「ごめんね、ロリコンのお兄さん」
「その呼び方やめてください…」
笑顔キラキラの女の子は可愛いですが、そんな言葉を吐いたせいで台無しです。
自己紹介の後、彼女は僕のことをそう呼ぶようになりました。まじで、やめてください。もし、知り合いに見られたら恥ずかしすぎて、ニッシーを地獄送りにしてしまいますから。
僕は諦めのため息をつき、話題を変えました。
「早くお母様を探さないといけませんね」
「あ、うん…」
「元気出してください。大丈夫ですよ~、私達も探しますから~」
そう、今彼女はお母様とはぐれているのです。だから早いうちに探しださないと、彼女のお母様は大変心配なさるでしょう。そして、僕と葵のデート時間も減る。良いことなし!
しかし、僕達が探してあげると言っているのに楓ちゃんはどこか浮かない顔をしています。
というのも、これは先程自己紹介の際に日向さんに教えてもらったのですが、親子喧嘩をしたらしいのです。
なんでも、彼女の一家は夏休みの旅行先に、毎年海に行ってたそうなのですが、今年はお爺さんが夏に来て、一緒に山に行くことになったそうで。しかも、そちらに、お金を使うから、海にはいけないと言うことを、買い物中にポロッとお母様が口を滑らしたそうで。そして、海に行きたい彼女は駄々をこねたそうですが、それでも海にいけない、と言われたそうで。
最後は「お母さんなんて大嫌い!」と行ってお母様から逃げ、そして走り回って気がついたら知らない公園にいた、ということ。
「私、お母さんにひどいこと言っちゃった」
彼女は、今にも泣き出しそうな、歪んだ表情でそう言いました。そして、俯き、嗚咽をもらしながら続けました。
「私、本当は、お母さんのこと、大好きなのに………なんであんなこと言っちゃったんだろう…?お母さん、怒ってるだろうな…。嫌われちゃったかも…」「いや、そんなことはありませんよ」
「えっ…?」
「仮に怒ってたとしても、それはあなたが好きだから、あなたを愛しているから、だから怒ってるんです。それに、母親というのは、どんなに憎らしくても、どんなに自分勝手な子でも、嫌いになるなんてできないんです。今も必死に探してると思いますよ。大好きなあなたの事を」
「本当…?」
「ええ、命をかけてもいいです。でも、いいですか?それでも、ちゃんと謝るんですよ、お母様に」
僕がそう言うと、楓ちゃんは指で目をこすった後、満面の笑みでこう言いました。
「ありがと、ロリコンのお兄さん!」
ロリコン余計だって!せっかく決まってたのに台無しだよ!
「河合さん、格好いいですよ~」
「ふっ、それほどでもーーー」
「楓~!」
格好つけようとしたら、また遮られました。今日ってまさか厄日?
そう思いながら、声のする方を向くと、何やら美少女がこちらに走ってきているではありませんか!なに、あの黒髪ボブの背の低めの超絶美少女!
「お、お母さん!」
うえ~!楓ちゃんのお母さんだったのですか!?見た目どうみても、せいぜい高校生ですよ!どんだけ若いんですか!
僕があまりの事態に呆けていると、日向さんが楓ちゃんに言いました。
「お母さんなんですか~。良かったです~。楓ちゃん、早く行ってあげてください~」
「う、うん」
楓ちゃんは、ブランコから降りるとお母様の元へ走っていきました。そして、感動の再会。
二人はひしとお互いに抱きしめあいました。イイハナシダナー。僕も思わず、涙が
「河合さん、はい、ハンカチ~」
「あ、ありがとう御座います!ってこれ僕の!なんであなたが持ってるんですか!?」
「あら~、よく見たら私のじゃありませんね~。なんででしょうか~?」
天然恐るべし。というか、ハンカチが自分のじゃないことくらい気づいてください!
「ま、まあ、何はともあれ、一件落着ですね、葵」
「晃は巨乳好き、晃は……」
まだ言ってたのですか!?
携帯でうつのは時間がかかるなあ