1・愉快な仲間達
さて、とうとう書いてしまった。穴があったら入りたい。とにかくノリで書いていきます。まず、言っておきたいのがこの小説はあくまでコメディーであることです。
なので三角関係、その他もろもろはまず出ません。ほんの少し行事があって、特に山場もなく二人はくっつきますので、「俺はドロドロの恋愛が読みたいのじゃー!」という方はご遠慮ください
「好きだ!付き合ってほしい」
突然なんだと思われた方のために言っておきますが、これは僕の台詞ではありません。では誰のものなのか?それは僕の下僕、ゲフンゲフン、親友である榊 奏のものなのです。
しかし、問題はそこではありません。彼が普通に女の子に告白しているとしたら、まあ、振られるにしろ、振られるにしろ、振られるにしろ、特に問題はありません。しかし―――
「いくらなんでも、教室の壁に向かって言わなくても」
「何を言っている!壁ではない!ここにおられる放物線さまに告白しているんだ!」
どうでもいいです。本当に。読者が混乱しているのが目に見えます。そこで心優しい(ここ重要)この僕が、皆様に分かりやすく伝えてあげましょう。なんて偉いのでしょう、僕は。
奏は僕の幼馴染であり、腐れ縁とも言える関係です。そして彼は非常に堀の深い顔をしており、体の肉つきも程よく、スポーツも万能なのです。勿論女子にモテまくりです。………
「いてぇ!何で殴るんだよ」
「全国の男子生徒の代わりに怒りの鉄槌をくだしたまでです」
しかし、彼には困った性癖があるのです。それは幼い時より、一次元にしか恋愛感情を抱けないという、他人に言っても信じてもらえないような性癖です!少なくとも僕には理解できませんね。僕は健全な男子なのですから、普通に女の子が好きなのですよ。ランドセルを背負ってる姿なんてサイコ………そんな目で僕を見ないでください!あ、ちなみに僕たちは中学三年生です。ついでに言うと僕は河合晃と申します。
「あ、放物線!何処へ行くの!俺を見捨てないでくれ~!」
「何言ってるのですか?放物線ならまだここにあるじゃないですか」
壁が動いたら怪奇現象ですよ。僕ならちびりますね。
「心が……離れてしまった」
「接着剤要りますか?」
瞬間接着剤アルキメデス。これであなたと放物線をくっつければ、あなたは満足しますし、世界のゴミを一か所にとどめておけて、地球にも優しいですね。エコはまず、自分ができる事から。
「そんなことしても、心が離れ離れになっては意味がない!―――って止めれ!なに接着剤つけてんだよ!しかも、それ壁じゃなくて天井!ま、待て!話せばわかる!アーッ!」
奏を始末した後、僕は教室から廊下に出ました。今は放課後。人もまばらになってきてます。僕は自分の教室を今一度見ました。何処にでもある普通の教室。それが、これから約一年間僕がお世話になる三年八組。でも、始業式初日にあんな事があったからこの先も何かと不安です。詳しくは「バカップル探偵 僕と彼女の出会い」をご覧あれ。宣伝している訳ではありません、本当に。付け加えるなら今は四月半ばです。
「ふう………」
いささか疲れました。流石に授業中ずっと寝てると肩が凝ります。僕は肩をコキコキ鳴らしたのち、教室を出てすぐの正面にある窓を覗きました。そこからは、あるガラス張りの建物が見えます。それは園芸部の活動場所であり、皆さんが”植物園”と呼んでいる場所です。ガラス張りの二階ほどの大きさの建物で、中には園芸部が懇切丁寧に育てた数多の植物が植えてあります。
僕は、時々ここから植物園を眺め、日々の疲れを癒しているのです。ところで誤解をまぬかれると困りますから、先に言っておきますが、僕は植物を見て癒されているのです。決して、園芸部の女子の、時々めくれるスカートに目を奪われ、ニヤけている訳ではないのです!
「あ、白」
………少しは見ているのは認めましょう。しかし、それは男性の性というやつで脊髄反射であり、自然な行動であり、別に悪いことではないのです!誰に言い訳してるのですか、僕は?
暫く、植物が女子のスカートに引っかからないかと期待しながら、植物園を眺めていると、一人の女子と目が合いました。僕の知り合いの秋月 葵さんです。一言でいえば和風美人。腰まで届く長い黒髪に、少し切れ長ながらも他人を優しく包み込む目、小さいピンクの唇、非難しようがないプロモーション、クールで大人びた性格をしており、彼女に告白した男の人達は星の数ほどいるとか。砕けた数はそれと同数とのこと。僕は、始業式の日に彼女と知り合いました。それからちょくちょく会話を楽しんでおります。周りの男子の羨望の視線が痛かったですがね~。色んな事を囁きまくってましたよ。「秋月さんと会話してるあいつ、誰?」「僕たちの葵さんを!」「俺の晃に触るなー!」とか。最後の台詞を言った人は今は行方知れずですがね。苦労しましたよ、証拠隠滅は。
目があったのに、何も言わないのは失礼というもの。僕は窓を開けて、少し大きめの声で彼女に話しかけた。ここが二階だからこそできる所業。
「こんにちは、と言ってももう夕方ですが」
「こんにちは」
彼女は丁寧にも僕に一礼をした。相変わらず全ての仕草が魅力的ですね。僕も惚れてしまいそうですよ~。
「何でまだいるの?」
彼女の問いはごく自然なものです。僕は部活に入っておりません。なのに放課後のこんな時間まで学校に残っているのは、どうしてだろうと考えたんでしょう。ちゃんとして理由がなく、こんな時間まで残っている奴はただの変人か、それとも不下校少女かの二択だけです。
「奏が”教室の放物線に告白するから付き合え!”とか言いまして。人がいなくなるまで強制的に待たされたのです」
「どうだったの?」
「砕けました」
奏と葵も知り合いです。流石に最初に奏の性癖を知った時の彼女は、いつものクールフェイスを崩してどう反応すればいいか困ったように、目を泳がせていましたよ。その姿がこれまた可愛く、カメラがなかったのが無念でありません。一枚相場二百円は堅いでしょうし。大儲けのチャンスが!まあ、生写真は手元に置いておきますが。
「こらー!いちゃついてんじゃねー!」
不意に僕の左手から声が聞こえました。ここで言う左手とは、左の方向という意味です。決して、僕の左手が喋ったわけではありません。何処のホラーですか?コワイコワイ。
その方向を向くと、まさに僕に向かって一人の男が握りこぶしをぶつけようとしているではありませんか。少し後ろに下がってみますか。
「うわ、ウワー!」
その男は、見事に右ストレートを空振りし、勢いを止め切れずにこけました。馬鹿です。流石は犬です。
「犬言うな!」
「心を読まないでください、ニッシー!」
「ニッシーじゃねえ!俺の名前は西田智明だ!」
何を言っているのですか?犬がそんな名前のわけがないじゃないですか?
この雄、名をニッシーといい、一言でいえば噛ませ犬です。以上紹介終了。
「犬言うな!」
「それしか言えないのですか!それから、心を読むにしてもたいがいにしてください」
「犬言うな!」
「言ってません!」
もう一つありましたよ、ニッシーは語彙力が非常に乏しいのです。要は馬鹿です。
「それより、お前、何秋月さんといちゃついてんだよ!」
「悪いんですか?」
「否定しろよ!」
「あなたが言ってきたんじゃないですか」
「普通はそこ”いちゃついてない”って否定して、俺が”嘘つけ”ってなる展開だろ!」
確かにそうですが、正直面倒くさいし、そう言ってもどうせ納得されませんし、話が進まなくて作者も困るのです。それでもギャーギャーうるさいニッシーに、流石に僕も堪忍袋の緒が切れます。全く、巷では僕ほど堪忍袋の緒が切れにくい人はいないと噂されているのに。嘘です。
「ちょ―――その接着剤はなんだ!や、やめれ、やめれ、やめれ!天井とくっつけるな!うわ、榊!どけ!」
「てめえこそ何だよ!俺は今そこの双曲線と戯れているっていうのに、そこに重なるな!」
ふん!彼女との会話を邪魔したバツです!たっぷり悔いなさい!
「晃」
「何ですか?秋月さん」
「あともう少しで終わるから、途中まで一緒に帰ってもいい?」
学園物に欠かせない帰宅イベントですね、分かります。
とにかくネタと時間ができたら、どんどん書いていきます。なので更新不定期