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4月27日 晴れ 夢は見るのか叶えるのか

「個人的には西園寺の言う2つの説がどちらも起因しているように思えるな。」

弥生は淡々と答えた。

「まず、過去に身分が決められていた時代では、自分が異なる身分である想像はできなかっただろうし、仮にできたとしても、それは《夢》ではなく《憧れ》だっただろう。」

弥生は続ける。

「次に昔でいう見る夢の方は、「想い人に夢で逢えたらいいな」「こんな夢を見たいな」と自分でコントールできないものに思いを託すような存在ではなかったのだろうか?」

と、するならば…弥生は続けて語り続ける「夢は「自分でコントロールできないものに願望をかける」使い方で、それが時間と共に意味が変化していったのではないだろうか?」


「弥生よ待ってくれ。」西園寺は珍しく話を整理しようと少し時間を置きたい旨を示した。


静かな時間が流れた。

大きな窓から、少し強くなった春の日差しが燦燦降り注ぎ、図書館の蛍光灯をかき消すほどまぶしく照り付けた。


『夢を叶えるのは、今生きる人間の特権なのかもしれない』

吹田が握っていたペンが鉛のように重くなった気がした。

ジリジリと身を焼くような日差しが吹田をここに居させたくないように照っている。


「つまり」

静寂を破り西園寺は話し始めた。

「夢という言葉は昔から存在していたが、そのあとに続く言葉である《見る》や《叶える》が、意味を変えたのか…

もしも、昔の人に夢を叶えられる自由があったら、違う言葉が生まれていたのかもしれない。」

「未来について考えたり期待することは羨ましいことでもあり、不幸なことなのかもな。」

弥生はすらすらとペンを走らせている。


「西園寺は何か夢を持ってるのかい?」

相変わらず図書館にはまぶしく光が差し込む中で、弥生はペンを一瞬止めて西園寺に尋ねた。

「小さい頃はクラゲだったが、今私が持っている夢はヒミツだな。」

西園寺はニコッと笑った気がした。

「ただ、少なくとも短冊に書けるような夢だと思ってるぞ。」

「ふふ、7月が今から楽しみだ。」


きっと、弥生と西園寺はこれから4年間の内に、お互いの夢を語り合うこともあるのだろう。

吹田には、これからそんな友人ができるのだろうか? 友人と語れるような夢が生まれるのだろうか?

もちろん、吹田には今それを相談できる友人がいないのだが…

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