4月20日 晴れ 許されぬ《約》の話
『いけない、いけない。ついお気に入りのトマトの話を思い出してしまった』
吹田は英語から古文へ里帰りしてきた。
あれから大学生は、おおよそ3日に1度ほど図書館にやってきた。
どうやら調べてみると、近くに大学があるらしい。
大学から駅までの中間に図書館が位置していて、一部の学生にはきっと憩いの場として機能しているのだろう。
恐らくだが、弥生、西園寺の2人もその大学生に違いない。机に広げた《入学おめでとう!》のパンフレットに大学のエンブレムが入っていたからだ。
はてさて、今日はどんな議論をしてくれるのか…
ー暫くして、茶髪の西園寺がいつものように話始める。そういえば最近少し茶髪のツヤがなくなってきた気がする。
「弥生、私は許せないことがあるのだ。」
どうやら大学から出されたであろう課題をカバンから出しながら西園寺は話し続ける。
「私が生協の芋けんぴが好きなのは知っているよな?」
『私は初耳だぞ』吹田は心の中で応答した。
バリバリと芋けんぴを食べている西園寺、うーん、想像にし難くない、彼はなんでも美味そうに食べそうだ。
「あの量の割に値段の安い芋けんぴだろう?」
弥生はカバンをまさぐりながら応える。
「あれがどうかしたのか?異物でも混入していたか?」
「異物混入よりも邪悪な問題だよ」
図書館ということを忘れずに静かに怒りを露わにする西園寺。
「パッケージには《内容量 約100g》と書いてあるのだか、これが雑でね。大抵100gじゃないんだが、先日の物がなんと94gだったんだ!」
『おいおい、お前わざわざ食べる前に測ったのか?』
吹田は思わずツッこむ。
『芋けんぴの何がそこまで駆り立てるんだ?いや、確かに美味しいけれども!』
驚きを隠せない吹田に対し、弥生は冷静に「それは確かに問題だな」と返しただけだった。あれ?私がおかしいのか?
「そこで弥生に聞きたい」
ずいずいと西園寺は身を乗り出しながら尋ねる。
「《約》はどこまで許されると思う??」