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五家の守護者 -1-

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 寝坊をした分、通常より食堂は賑わっていた。


 今の時間帯は寮棟で生活をしている職員たちが仕事の前に朝食を取るために利用をしているが、通いであれ職員であれば誰でも利用できるこの食堂はなんと無料である。太っ腹!


 自身の給金だけで生活をしているステラにはありがたく、食事面はほとんどこの食堂のお世話になっている。


 バイキング形式のため、トレーの上にパンとスープ、サラダを乗せて空いているテーブルを探す。


 ステラと同じく赤と青のタイやローブを身につけた職員たちが談笑をしたり新聞を読んだりしている中、ステラと同じ赤いローブを身につけた男性がステラに気付いて手を振ってきた。


「――ステラ先輩! こっちこっち!!」

「……ルイス様!」


 ステラに声をかけてきた中世的な顔立ちの美少年はルイス・マキエスタ。


 五家の1つであり水星の加護を受けている守護者の1人だ。空色の髪とエメラルドのような瞳を持つこの美少年は、王立天文学園時代のステラの後輩である。


 学年は1つ下の17歳で本来であれば学園の最終学年の5年生であるはずだが、飛び級で卒業した秀才のルイスは今年からステラと共に王立天文台で働いていて、今はもう後輩ではなく同僚だ。


「お久しぶりです、ルイス様。前にも言いましたけど、私はもう先輩ではありませんので敬称は必要ありませんよ」

「そうでしたね。すみません。癖ってなかなか抜けないですよね~」


 口では謝罪しながらも、両手を合わせてウインクをしてくるその姿に悪びれた様子は微塵もない。だが、ステラにとっては学園時代から今も変わらず、ルイスは可愛い後輩だ。



 ――ルイスとの出会いは去年のこと。



 王立天文学園では、上級生である4・5年生の成績上位者の中から生徒会役員が選出される決まりがあった。4年生で書記を務めたステラは翌年も書記として生徒会に参加していたのだが、そこに4年生で会計に選ばれたルイスが加わったのだ。


 五家の一つであるマキエスタ家は代々王家より王立天文学園の運営管理を任されており、ルイスの父親が学園の理事長を務めている。


 それに加えて守護者でもあるルイスは入学当時から学園では有名人の “1人” であり、ステラもルイスの存在は知っていたのだが会話をしたのはその時が初めてだった。


 ステラにはルイスとの忘れられないエピソードがある。


 それは、生徒会の用事で2人で街まで買い出しに行った日のこと。



 ★★★



 催しの準備のため、生徒会役員の5人で3つの役割を分担することになり、2名枠だった買い出し担当にステラが立候補すると、『僕も行きます』とルイスがそれに続いて立候補してくれたため、2人で街まで買い出しに行くことになった。


 買い物リストの上から順番に店舗を回っていたらすっかり日が暮れてしまい、学園に戻ると既にゲートは閉門しており、門限を過ぎていたために寮の中にも入れなくなってしまった。


『どうしよう……』とステラが途方に暮れていると、周囲に人気がないのを確認したルイスが『先輩、目を閉じて手を出してください』と言ってきた。


『?? 荷物を持ってくださるのですか?』

『……違います。いいから言う通りにしてください』


 ぷくっと頬を膨らませて拗ねた表情を見せるルイスを可愛いと思いながらも、言う通りにしないと本気で拗ねてしまいそうなので黙って従うことにする。


 両目を閉じた後、荷物を持っていない方の手をルイスに差し出した。


『……これでいいですか?』

『はい。絶対に目を開けたら駄目ですよ』

『分かりました』

『……よし、じゃあ5秒数えますね。5…………4…………3…………』


 この間にステラの手はルイスの手によって繋がれたが、ステラは驚きで目を開けそうになるのを必死で耐えた。


 視界が遮断されていることと何が起こるのか予測ができない不安から、思わず繋いだ手にぐっと力を込める。


『2…………1…………0! …………先輩、もう目を開けていいですよ』

『……えっ!? ええぇぇっ!?』


 ステラが驚いたのも無理はない。


 ルイスの合図で目を開けたステラは何と――自室にいたのだ。


 何が起こったのか分からず動揺するステラを他所に、部屋の電気を付けたルイスは『へぇ~、先輩の部屋ってこんな感じなんだ』と楽しそうにキョロキョロしている。


『ル、ルイス様……? 私は夢を見ているのでしょうか……?』

『残念ながら現実ですよ先輩。僕は加護の力で瞬間移動ができるんです。あ、内緒ですからね!』


  “しーっ” と声に出して、唇に人差し指を当てる仕草は普段のルイスと変わらないが、ステラが気になったのはそんな重大な秘密を打ち明けてしまって問題はないのかということだ。


『……は、話しても誰も信じないと思いますが……。それより、私なんかに知られてしまって良かったのですか?』

『先輩なら構いませんよ――先輩は僕にとって “特別” ですから』

『えっ……?』


 最後の方が小声で聞き取れなかったが、ルイスはステラが手に持ったままだった荷物をさっと引き取り『お休みなさい』と言った後、次の瞬間その姿を消したのだった――――



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