プロローグ
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「どうか私に君を守らせて欲しい」
眼前に立つ美しい男性は、真剣な表情で左胸に手を当てながらこう言った。
希うような声色が、ステラの心を激しく揺さぶる。
(私は……どうしたらいいんだろう……)
突然背負わされた運命に抗うべきか、それとも受け入れるべきなのか。
口籠り俯くステラの両手が、彼によってふわりと優しく包み込まれる。
大きくて温かいこの両手は国の未来を背負っている――――この国の王太子として。
命令をすれば相手を従わせることができる立場であるにも関わらず、彼はいつもステラの意思を尊重してくれる。
「ステラ、君の星紋に口付ける栄誉を私に与えてくれないだろうか?」
その場に跪いてステラの手の甲にそっと口付けた彼が、俯いていたステラの顔を下から覗き込んで懇願してくる。
まるで騎士が主君に忠誠を誓うような、愛する女性への求婚のような、そんな物語の中でしか見たことのない光景が先程から眼前で繰り広げられており、胸の高鳴りと戸惑いの気持ちでステラの思考は正常に働かない。
(……こんなの……ずるい)
赤くなっているであろう自身の顔を覆って隠してしまいたいが、ステラの両手は彼の手の中だ。
もしかすると、彼の計算の内だったのかもしれないと思うと少し悔しいし、ステラの気持ちに反して彼を求めるように疼く星紋も憎らしい。
できることならこのまま気絶してこの状況から逃げ出してしまいたい。
国中の女性が憧れるシチュエーションだ。嬉しくないと言ったら嘘になる。
それでも、首を縦に振ることは躊躇われた。
「――殿下、どうかおやめください。私は王族のあなたにこんなことをしていただく身分ではありません」
「身分で言えば、この国では君は私より上だと思っているよ」
「……ご冗談を」
王太子であるアルバートが本気でステラにこんなことを言う理由はただ1つ――ステラが “月の乙女” だからだ。
《太陽の王》であるアルバートにとって、月の乙女のステラと結ばれることは国のしきたりであり義務のようなもの。
(私は星の研究ができれば、それだけでよかったのに――――)
これまでそれなりに幸せに生きてきたステラの人生は、18歳で一変してしまった。
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