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フレイミングフレイベル  作者: 風上 環
第3話 マジカルガール・ウィズ・フレイミング
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06 聞き込み

 トトゥーナはフレイベル、リュードと三人で聞き込みを開始したが、テオという男について得られる情報は何もなかった。


「な~んも分からんかった! ベルはどうよ」

「こちらも全くでしたわ」


 集合場所に決めていた天気塔(てんきとう)の下に戻ったトトゥーナは一足先に待っていたフレイベルと顔を見合わせて肩をすくめる。ややあってリュードも戻ってきたが、フレイベルの期待を込めた視線に対して静かに首を横に振るのみであった。成果ゼロ。


「知り合い一人出てこないな、せめて職場でも分かればいいんだけど」

「同じ建物の住人が軒並み消えてしまったのが痛いですわね。みなさんテオの名前を出しても心当たりがないと」

「だろうな、僕もギルドに属してない連中のことはまともに知らない」


 正直同感だ。レグナンテスで生まれ育ったトトゥーナだって、同じ街で暮らす地元民の顔と名前を全部覚えているわけじゃない。『センパスチル』に来た客の顔も寝て起きれば大抵忘れている。そのくせ向こうは覚えてて街中で親しげに声をかけられることもしばしば(正直やめてほしい)。


「そうだ。さっきの魔法を使えばいいんじゃないか?」

「あれは爪とか髪の毛を触媒にしないと精度が出せないんだよ。部屋を漁れば靴下くらい出るかもしれないけど、作った人の方に飛んでいくかもね」

「意外と融通利かないんだな」

 というリュードの言葉にトトゥーナが口を尖らせる。反論はできない。


「行き詰まりましたわね……」

 フレイベルがぽつりと呟き、トトゥーナとリュードの二人も否応なしにその事実に直面させられてしまう。昼下がりの喧騒の中で三人そろって黙り込んでいると、どこからともなく笛の音色が聞こえてきた。


 広場(パラズマとの戦闘を想定してか、この街は開けた場所がやたら多い)は自由に使える場所として市民に重宝されており、特に楽器を使う人間が多く音楽の絶えない日はあんまりない。レグナンテスにはあらゆる国から人々が移り住んでくるため、奏でられる楽器と曲も多様だ。

 とはいえ、こうも毎日誰かしらの演奏が聞こえているとかえって日常に組み込まれて物珍しさがなくなってしまう。よほど琴線に触れるものでもない限りわざわざ足を止めて音楽を聴きふけるのはよほどの暇人くらいだが……、


「リュード?」

 気が付けばリュードの姿が見えない。深緑色の髪の少年はトトゥーナたちの傍からいなくなり、ふらりと笛の音がする方へと吸い込まれて人だかりの中に消えていった。


 普段の彼がどんなものか知らないくせに、トトゥーナはその様子に首を傾げながらついていく。棒立ちの聴衆の隙間から向こうを覗き込むと、一人の青年が縦笛を吹いているのが分かった。派手だが無国籍な衣装を纏った青年だ。


 どこかの国の民族音楽らしい彼の演奏を聴きながらトトゥーナは遠い目をする。

「あたしはこの手の音楽人間にいい思い出がないんだよね…………忘れもしない五歳の誕生日、パパが呼んだマリアッチのおじさんに囲まれてギャン泣きした……」


 同じ帽子を被り同じ髭を生やした集団が満面の笑みを浮かべながら父の開けたドアから流れ込んでくる絵面を思い出し、トトゥーナが渋い顔になった。「今も夢に出てくる」


 曲は今ので最後だったようで、演奏を終えた青年は一礼をすると笛の縁をハンカチで拭いケースに収納した。よほど聴き入っていたのか、聴衆らは音楽が止んだことに遅れて気付いたようにハッと顔を上げてまばらに拍手を起こした。

 青年の前に置かれた小さな器に硬貨が投げ込まれていく。演奏への対価である。人々が()けていくと最前列についさっき消えた少年の姿があった。


「何してんの?」

 少年の背中にトトゥーナが声をかけ、フレイベルがその肩に触れる。ほぼ反射的に機敏に振り返ったリュードは二人の顔を見てなぜか視線を逸らしつつ、

「これは……そうだ、彼に話を聞こうとしただけだ」

「でしょうね」

 そっけなく返すトトゥーナ。リュードは「だよな」とだけ言って口を閉じてしまった。


「あれ、トトゥーナじゃん」

 と、そこで笛吹きの青年が突然こちらの名前を呼んできた。トトゥーナは彼の顔をよく見て誰だったか思い出す。

「レミー?」

「よっ、久しぶり」


 レミーは軽く手を上げてにこりと笑った。


「お知り合いでしたか」

「まあね、お互いこの街の出身だし」

「彼女がマジョルジョさんのところで働き始めた頃から知ってるよ……しかし本当にギルドに入るなんてなあ」レミーは感慨深そうにトトゥーナのベルトの魔針盤(コンパス)を見る。「それで、誰をお探しかな?」

「どうしてそれを?」

 トトゥーナが訊くと、レミーは膝に置いた楽器のケースに頬杖を突いて、


「君たちが声をかけて回っているのが見えたからね。ギルドで人を捜すとなると大方パラズマになった人間だろう」

「まあそんなところ……テオっていう男に心当たりはない?」

「その男がどうかしたのか?」

「昨日の夜にとあるアパートの住人が一斉に消えるって事件が起きたんだよ。部屋のドアは開きっぱなしになっていて、屋上には住んでる人間とほとんど同じ数の靴が並べられてた。唯一ドアが閉じたままの部屋があって、そこに住んでるのがテオっていう男」

「なるほど、一人だけ無事だったということか」


 レミーは頬杖を突いていた方の手で顎を触りながら頷いた。


「テオ、テオか。確か前に地元の奴が演奏を聴きに来た時、一緒にいた男をそう呼んでいた記憶があるな」


 よくそんなことを覚えているものだ。


「そう、ノックスだ。彼は衛兵だから、隣のエリアで巡回でもしているんじゃないか?」

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