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喫茶かげやま
私は、深夜2時まで開いている喫茶店にバイトとして採用された。
家の近所だったし、深夜帯は少し時給も良くて、ダブルワークにはもってこいだった。
どうせ毎日、日付が変わってもダラダラSNSをしているのだから、仮眠をとって働きに出る方がよほど生産性がある。
それに、深夜の喫茶店でどのような人たちがどのような世界をつくっているか興味があった。お金をもらえる、大人の社会見学である。
喫茶かげやまは、スナックやバーに近かった。
接待する女の子はいないものの、初老の夫婦が切り盛りし、常連の世話をみるようなところがあった。
その店主夫婦も、歳をとって深夜帯がきつくなってきたらしい。
私は、結構なところまで任されるんだな…と内心不安になりながら、仕事を教えてもらっていた。
制服は、白シャツに黒のチョッキ、下はスカートでもズボンでもいい。
いつ辞めることになるかも分からないので、タンスから掘り起こしてきたリクルートスーツのズボンを履き倒すことにした。