限界の人
私は、OL業に限界を感じていた。
若い子はもうオフィス・レディという言葉すら知らないかもしれない。
男女平等だ!とか、女性も生き生きと社会で活躍!とか言われ育ったが、当の本人たちは、先人からの受け売りの思想と、用意された環境を何の感慨もなく受け取るだけだった。
新卒で入った時はまだ希望があった。
男の子と同じように仕事をこなし、生理が重い日でも足並みを乱すまいと、残業したり早出をしたりして頑張った。無給の努力だったけれど。
ただ、出産を考えうる年齢になれば、急に制限がかかる。
おそるおそる彼氏の有無を聞く上司は、セクハラがしたいんじゃなく、私をいついなくなるかも分からない短期被雇用者になりうるかどうか見極めたいんだろう。
ちなみに、彼氏はいると答えておいた。いけすかない同僚たちの前で聞く上司が悪い。いま自分の立場を守ったとて、いずれは通る道だ。それに私は推しと付き合ってるんだから。脳内で。
途端に、自分も周りも、私のことをオフィス・レディとして扱うようになった。中長期の重要な担当は任されない。名だけは総合職の、昇給のない一般職を勧められる。男性社員同士の会話に入れてもらえない。
もはや問題の本質を解決する気力はなかった。
どうしたって、女の生き方は男性とは違う。
個人で解決するには問題が巨大すぎる。
私は逃避行動に出た。
会社に内緒で、深夜の喫茶店の面接を受けた。