表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/171

サバイバル 7

その後は、比較的順調に進む。途中でまた大サソリに出会うが、一匹だったので振り切って逃げた。暫く走って、半分残った携帯保存食で昼食をすませ、再び走りだす。

陽が傾いてきた。野宿をするしかないようだが、見渡す限り木も岩もない草原だ。

とりあえず、食事をすることにした。携帯保存食は一つしかない。これは、三つに分けて時間の取れない昼用として、朝夕は現地調達することにする。

(勇気を出して、今日はサソリ肉だ。さてどうしよう)

芋のときに使った串を持ってくればよかったと、後悔した。仕方なく大き目の平たい石を探して、水ですすいだ後、クリーンを掛ける。その上に、サソリ肉を置いて“グリル”で加熱する。ジュウジュウと音がしはじめ、透き通っていた肉が白くなる。

(バカでかいけど見た目エビっぽい。臭いもそれっぽい)

えい、とばかりに目を瞑って口に入れる。

(・・・臭みがあって、大味だけどエビっぽい。美味しくないけど、食べられないことはない。量も結構あるし、三食ぐらいは何とかなりそう)

食べ終わると、クリーンを掛けるが、匂いが残っているので、少し移動する。寝床をどう確保するか?

(初日はそのまま寝ちゃったけど、夜はやっぱり魔獣が来るんだろうな。せめて身を隠したい)

そこで穴を掘り始めた。重労働のはずだか、この馬鹿みたいな体力と地面がスパスパ切れる短剣で、陽が沈むころには恵が潜り込める窪みが出来た。

窪みに草を敷き詰めて身体を入れ、匂い消しにクリーンを掛ける。とにかく休む。出鱈目な体力があると言っても無限では無いはず。切れたらアウトだ、休めるときに休む。

静かだ。時折風が草原の草を揺らしてさわさわと音を立てる。空には星が瞬く。

(ホントに、星が多い・・・)

いつの間にか眠っていた。危険察知で目が覚める。夜が白みかけている。気配を探ると四十メートル離れたところに魔獣がいる。大きい。

(なんか、動きが変・・・!その先にもなんかいる)

そっと顔を出す。

(コブラ?でか。“バジリスク、魔獣、雄、成体、レベル32”)

鎌首を上げて、別の方向を見つめている。それだけで、恵の身長を超えている。バジリスクの見詰める方向にも二つ魔力を感じる。どうやら、睨みあっているようだ。なんかこの魔力覚えがある。バジリスクの相手が二手に分かれた。バジリスクか右手の相手に襲い掛かる。首が伸びたところに、左手からもう一匹が襲い掛かる。

(見えた。大サソリ・・・そうだ大サソリのときの魔力。波?っていうか肌触り?っていうか、魔力って魔獣によって違うんだ)

バジリスクと大サソリは死闘を繰り返していた。

(見入っちゃいけない!今のうち逃げよう)

穴から出て、音を立てないように、するすると後退する。少し離れると全力で走り出す。迂回して道に戻り、さらに走り続ける。逃げ切れたようだ。朝日がさし始めた。朝露に濡れる草原がキラキラと光り出す。朝の草原の中を更に三十分ほど走ってから、辺りを索敵して安全を確認する。

「よし。今のうちにご飯食べちゃおう」

昨晩と同じように、石の上に大サソリの肉を置いて焼く。

「調味料ほしい・・・。でも、生のままポーチに入れておいたけど、傷んだ様子がないよ・・・マジックバッグのせいかな」

“バックの中の時間の流れは、通常の時間のおよそ十分の一になる”

(おうっ、鑑定さん!凄いねポーチ。冷蔵庫いらないよ。そうだ、焼いておいてポーチに入れれば、すぐ食べれるんだ。残りの分の焼いておこう。考えてみれば肉もその方が持つんだ。今回はポーチの性能に助けられたけど、肉を傷ませたら、貴重な食糧が減ってしまう。サバイバルしているのに、ちゃんと考えないとダメね)

手早く、残りの肉も焼いて、ポーチに収納してゆく。

「よし。出発」

僅かに残る道の跡を追って、再び走り出す。概ね順調。途中ガルム二頭に出会うが、落ち着いていれば怖いことはなかった。これは食用にならないので魔石だけを取り出した。ビー玉くらいの灰色の魔石だった。昼は、携帯保存食の果物とクッキーを食べて、すぐ出かける。それから二時間ほど走った先に川があった。川幅が三十メートル程で流れは緩やかだ。中央部の水深はそこそこありそうだ。道の続く先に橋は無い。

流れが緩やかなので泳ぐかと思い川を観察していると、自分より大きな魚影が見えたのでやめた。迂回すると言っても、見る限り川は同じように続いている。

「どうしよう・・・よし、使おう。進むしかない。」

百メートルほど戻って、ポーチから魔法スクロールを取り出す。SS級の“アブソリュートゼロ”だ。同じようにサッカーボールより一回り大きい玉が付いている。今度のは、青黒い。玉に意識を集中して鑑定してみると、玉は魔石だった。

“グリフォンの魔石、大、良品”

(おおっ、ファンタジー。じゃあSSS級の五十センチのものはドラゴン級の魔石かな?)

スクロールを開く、魔法陣が淡く光る。川の中央部、更に三メートル程潜った辺りを意識する。

「アブソリュートゼロ」

魔法陣が輝き、一瞬川は暗くなったように感じると。水面が盛り上がり同時に凍り付く。そこを中心に霧がかかったようになりそれが広がってゆく。辺りがどんどん寒くなる。霧はダイヤモンドダストで陽の光にキラキラと輝く。川から恵の距離の半分くらいまで叢が白くなる。霜が降りたようだ。

幅三十メートルあった川は完全に凍った。

(あっ、上流で水か溢れ出した)

慌てて、走り出す。堰き止められた水が草原に流れ出てどんどん広がってゆく。恵はスピードを上げて川を渡る。危険察知が働くが川を渡り切らなければならない、そのまま瞬歩で増速する。十メートルほど離れた場所の氷が突然割れ、五メートルは優に超えるナマズが飛び出し、先ほど恵がいた場所を襲った。幸いナマズは氷の上で藻掻くばかりで追ってはこない。恵は無事渡り切り、一息つく。

(あの中で生きていたの?凄い生命力)

本当にここは何がいるか分からない世界だ。とにかく人里を見つけなければ。恵は再び走り出す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ