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お嬢様の修行 3

設定の説明が多い回です。なかなかシンプルにできず、読み難くなってしまいました。

学んでゆくとこの世界のことが分かってきた。

このアウローラ大陸には四つの国家が存在するが、国家体制はそれぞれ異なる。恵がいるエスポワール王国は封建体制を敷いて、アードランド帝国は中央集権の絶対君主制であり、トリグランドは共和制、南東諸国連合は独立した五つの都市の連合体制である。百年前までは、南東諸国連合以外は皆、王国と同じ封建体制だった、しかし、帝国と共和国は流通の発達により、経済の中心が農業より商業に移行すると、農業を経済基盤としていた貴族の力が衰え、流通を担う市民階級が台頭した。これに対し王は商業権益を与える代わりに税を納めさせ、貴族には封土を返上させ官僚として召し抱えた。そして常備軍を置いた中央集権の絶対王制に移行した。これにより王は絶大な権力を握ることとなった。しかし、常備軍の負荷は大きくそれを支えるため重商主義を進めると、市民階級は益々力をつけ集中した王権に対して対抗するようになる。トリグランドでは六十八年前に市民革命が起こり、その二十三年後には王制は倒れた。しかし、その後革命軍は分裂して争い、それに息を吹き返した旧貴族階級が加わった三つ巴の内戦が続き国は大きく乱れた。内戦は二十二年に渡り二十三年前に漸く共和国となり戦乱は収まった。国は疲弊し現在でもその影響は残っていると言う。帝国は、このトリグランドの王を倒した市民革命を見て、危機感を覚え財政の改革、冒険者ギルドとの提携による常備軍の縮小を進めるとともに、王への権力集中を強化し体制を維持した。

現在も封建体制を続ける王国は事情が異なった。帝国と共和国は、国を囲う北極圏と山脈にドラゴンと言う人類の敵わない最強の魔獣が生息しているものの、国土の中央部は弱い魔獣しか存在しなかった。このため流通が発達し経済基盤が農業から商工業に変わっていったが、王国は国土に点在する魔の森から出てくる魔獣により、通行が制限される。そのため大手商会と言えど大規模な流通を行うことが出来ず、また街では税を対価に魔獣からの保護を領主に求めていたこともあり貴族に対抗する力を付けることが無い。また、流通の制限は軍の移動も同じで、中央に強力な常備軍を置いても、地方で発生した災害級の魔獣に対しても素早い対応が出来ない。結局、領主が自前の戦力を持ち、自らの裁量をもって領地を治めるしかなかった。

ただ、トリグランドの市民革命は、王国の裕福な市民階級に、王侯貴族だけが持つ権益は絶対ではなく自分たちにも手が届くことを見せつけた。市民の知識階級は、王国が他国と違った条件を持つことを十分理解しつつも、交渉材料としてトリグランドの出来事を用いた。ところが、その上辺だけを見た者たちは、王侯貴族に敵対するように動き出してしまった。

この事態に対して、後に改革王と呼ばれることになる、若き国王ルイ・リシャール・デ・ラ・エスポワールは、約六割の貴族の世襲権を奪い、また世襲権を持たせた貴族にも分家を許さず、世襲貴族の数に制限を加えた。更に、優秀な平民を一代貴族として、騎士や準男爵に取り立てる制度を作り、身分制度に風穴を開けた。そして優秀な平民を騎士、宮廷魔術師、官僚に送り込み人材強化を図った。更に、それら人材の養成を行うためアカデミーを設立した。改革は今から四十九年前、王国歴四百三十九年に始まったが、困難を極め、体制が固まるまでに八年を要した。

現在のところ、この四か国の体制に変化はない。ただ、権力集中により体制を維持する帝国には、圧政による市民の不満は燻り続けた。これに手を焼いた皇帝は、市民の不満を外へ向けさせた。南下政策である。国が乱れた隣国のトリグランドを併合するかに見えたのだが、国土の半分を凍土に覆われたトリグランドは、同じように寒さと戦う帝国にとって魅力は無かった。北の瘦せた大地は、慢性的な食糧の不足を招く。これが解決すれば、国民の不満かなり解消される。帝国国民が誰もが憧れる豊かで暖かい土地をもとめた。矛先は、南東諸国連合だった。南東諸国連合の五つの都市国家はどれも二十万人を超えるは人口を抱え、各々が独立自治を保っている。商業活動が盛んで市民階級の力が強く、中には領主を頂く所もあるが、飽くまで象徴であり実質は市民代表により運営されている。彼らにとって帝国の政治体制は受け入れることは出来なかった。しかし、国力は圧倒的な差がある。戦えば敗れることは明白だった。そこで、早くから、王国に助けを求めた。当初、王国は停戦交渉の仲介として動き出したのだが、王国歴四百五十四年、帝国は和平交渉を良しとせず、王国にまで宣戦布告をした。王国が加わり戦力が拮抗したため戦いは消耗戦となり、やがて膠着状態となった。そして王国歴四百六十三年に休戦協定が締結し今に至っている。

王国内の穏健派と強硬派は、帝国に対する政策方針の違いに端を発している。休戦協定前も帝国に対する政策方針の議論は行われていたが、派閥として確立するのは休戦協定が締結後のことだ。しかし、それも直ぐに目的を外れ、政権の主導権争いが中心になった。派閥の争いが激化したのは、改革王ルイが薨去してからである。ルイには、二人の息子がいた。前王ピエールと弟のアンドレだ。アンドレは子供のころから俊英を謳われ、青年になると覇気を身に付け、そのカリスマ性から慕う貴族が多かった。ルイは、アンドレの覇気と才能を愛したが、大改革の余韻が色濃く政情が安定とは言えない中で王位継承争いが起こることを恐れた。その結果、早い時期に長男のピエールを立太子とし、本来スペアとして温存すべき、アンドレをアルデュール公爵家に臣籍降下させた。ピエールへの王位継承後もルイが生きている間は表立った争いはなかったが、彼の薨去によりそれが噴出した。そのため当時は、国王派と公爵派と呼ばれていた。今でも年配者の中にはこの呼び方をする者がいる。アンドレは公爵となってもそのカリスマ性は衰えず、瞬く間に強硬派が多数派となった。このため、強硬派の中には政治的信念より“公爵の下に”と言う理由で派閥に加わるものも多かった。アンドレ自身は強硬論であったが、派閥ではなく信念からの行動をしており、政治的な駆け引きには向いていなかった。その態度がカリスマ性へと繋がっていたのだが、派閥間の運営はそれだけでは済まされない。派閥間の裏の争いや利権をまとめていたのが先代のヴォロンテヂュール侯爵だった。彼は、巧みに穏健派を追い込み、誠実であるが凡庸と言われたピエールは、強硬派の重圧に耐えきれず四十七歳の若さで退位しジャンに王位を譲った。ピエールを退位に追い込んだ勢いで攻勢をかける強硬派に、若く経験も浅いジャンが対応できたのは、宰相として傍らで支えたサイモンの力であった。彼は表のアルデュール公爵の攻勢を躱し、裏のヴォロンテヂュール侯爵の陰謀を退ける八面六臂の働きをした。

強硬派が攻めきれず瀬戸際で穏健派が持ちこたえる争いが続いたが、状況が動いたのはアンドレの健康に陰りが見えた時だった。このときもっとも危機感を抱いたのはヴォロンテヂュール侯爵を世襲したばかりの若き頭首のユリスだった。彼は父親に似て、冷静に状況を分析する目を持ち、権謀術策に長けていた。公爵家の嫡子エヴァンはアンドレとは違いカリスマ性がなかった。ユリスは、強硬派の中にはアンドレを慕って派閥に加わった者が数多くいる実態をよく知っており、アンドレ亡き後強硬派が一気に力を失うことを恐れた。そして彼のターゲットとなったのがサイモンだった。このときユリスの取った策は権謀術策とはかけ離れた力押しだった。議会の席で魔獣被害に対する対策の失政とは言い難い些細な王の落ち度を責め、それを庇ったサイモンを多数派であることを頼りに宰相から引きずり落とした。それに飽き足らず、貴族であればどこでも行っているような些細な違法を並べ立て弾劾裁判を起こし、彼を侯爵から伯爵に降爵された。世に言う“謂れなき二十四の弾劾”である。ただ、流石に無理があり降爵されたにもかかわらず、領地も安堵され罰金も形ばかりとなり、侯爵家の力を持った伯爵家が誕生した。今から七年前のことである。そして、その四年後に英邁を謳われたアンドレは薨去した。

王国と帝国は現在も正式な国交はなく、直接的な経済活動もない。物資に関してはトリグランドを介した三角貿易はあるが、トリグランドの港は一年の半分近くが氷に閉ざされていて活発な活動が出来る環境とは言えない。他は大陸の南端にあるサクラポルタである。サクラポルタは、サクラウィア教の聖都で独立自治を持つ宗教都市だ。聖都の港はどの国にも門を開いており四か国の者が顔を合わせられる唯一の場所となっている。


慣れというものは凄いもので、あれだけ詰め込まれたスケジュールでもこなしていくうちに余裕が出来てくる。

今では、剣術は教師と互角、魔術は教師も歯が立たなくなっている。たとえステータス任せでも、そういう科目があると自信につながる。始めは力を隠すことを考えたが、ゴブリン討伐の現場を見られているので隠蔽したステータスの通りとはいかないのである程度は力を使う。だがジュリアの目は厳しい、どこまで見せるかは判断の難しいところで、正直なところ剣術については結構見せてしまっている。

とにかく、余裕が出来たので、考えていたことを実行に移したかった。

「母様。少しお話宜しいでしょうか」

午後の授業が終わり、夕食までの時間を使いジュリアに交渉することにした。

「ちょうどよかったわ。私からもあなたに伝えることがあります。何かしら」

「実は錬金術を学びたいのです。当家にお抱えの錬金術師がいると耳にしました。闇の日の午後などにお話を伺うことは出来ませんでしょうか」

「何故、錬金術を学びたいと」

「私にとって魔術は重要なスキルになります。そのため、行動中に魔力切れを起こせば致命的な結果を招きます。しかし、魔力切れに備えると言っても、あのポーションでは・・・」

「なるほど。魔術師の方からよく聞く話ではありますね。もしかして、エマ様を考えてのこと?」

「それもあります。スタンピードのとき最前線でポーションを飲んで治療を続ける姿を目の当たりにしましたから」

「それで、何か良い思い付きがあるのかしら」

「いえ。そこまではございません」

ジュリアは腿に手を置き、トントンと一定のリズムで腿を軽く叩き考え込む仕草をした。

「・・・いいでしょう。ただし、闇の日はだめね。これは、私から伝えようとしていたことですが、これから、毎週地の日の午後、ここを発ってルアンに行き、領館に一泊して闇の日の午後ここに戻るようになります」

「それって・・・」

「エマ様のたってのご希望で、あなたと過ごす時間を作ることにしました。サイモン様もご承知です」

(母様。その頭痛に耐えるようなお顔は、私に見せてはいけないように思います)

「ただ、今節季の中以降は社交シーズンになるので、社交シーズン中は今まで通りです。旦那様と私も王都へ行かねばなりません。成人したアリスも同行させますが、未成年のあなたには留守番をお願いします。あなたのことですから心配はしていませんが、その間しっかりと勉学と修行に励みなさい」

結局、光と風の日の晩餐後にお抱え錬金術師から学ぶことになった。

あと、地の日の午後の授業が受けられなくなったのだが、結局ダンスと刺繍が一週間毎に交代することになった。

(まあ、自分はそれで良いんだけと。やっぱりお嬢様教育はオマケじゃん)


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