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サバイバル 1

ギャーギャーと何かが鳴く声で、意識が戻る。背中が痛い、ごつごつとした岩の上に寝ているようだ、目を開けると青空が見えた。太陽は真上にあり昼過ぎといったところか。左右に大きな岩があり、その間に挟まれるように寝ていた。ギャーギャーと煩い鳴き声は空の上からだ。そちらを見ると、空を飛ぶ大きな鳥のようなものが目に入った。

(翼竜?いや、ゲームに出てきたワイバーンのCGにそっくり。ゲーム?夢?いやいや、リアルすぎるでしょう)

「なにこれ!」

こぼれ出た声は、トーンの高い声だった。右脇の岩に手をかけて立ち上がろうとして、体の違和感にも気づいた。手が小さい。

(やっぱり夢?)

思わず、頬に手を持ってくると手についていた砂が頬に当たりざらざらとした感触。さらに体を調べる。

「子供ね。身長からすると七~八歳かな」

着ているものは、麻の服に革の胸当て、足にしっかりと結びつけるようなサンダル、腰のベルトには短剣とポーチ。冒険者の初期装備といった感じだ。触った素材の感触もしっかりある。

また、ギャーギャーと鳴き声がする。今度は近い。ぎょっとして視線を向けるとワイバーンは高度を落としてきた。幸い、は何か別のことに注意が向いていて、岩に挟まれている恵には気づいていないようでホッとする。

「子供にワイバーンなんてどうしろって言うの」

ここは、植物がほとんど生えていない岩山の裾野で、振り返って見上げれば高い山。山頂は標高千メートルを超えていそうだ。そして、目を下に向けると荒れ地が広がっていた。そこには、十頭ほどの大きな黒いトカゲ?が群れで走っている。長めの尾を含めるとどれも体長は十メートルを超えているであろう。ゲーム知識からすると地竜だ。群れは、地竜たちより一回り大きい赤黒いドラゴンに追われている。さらにその手前の岩場には、二十頭ほどのリザードマンらしいトカゲの戦士がそれぞれに槍や剣などの獲物をもって身を潜めている。どうやら、ドラゴンに襲われて弱った後の地竜を狩ろうとしているようだ。そのリザードマンをワイバーンが狙っている。状況はなかなかのカオス。

「この状況、いきなりゲームオーバーだわ」

リアル感が増すほど、危機感も増してくる。息を殺してこの状況を観察する。生き残る方法を考えつつガン見していると、突然視界の隅に“ワイバーン 亜竜族”とメッセージが見えた。

「えっ、やっぱりゲーム?」

視線を移して真剣に見つめると、“ドラゴン 竜族”、“地竜 亜竜族”、“リザードマン 魔人族”と次々に表示がでる。

だが、触れる岩肌の感触、土埃の匂い、頬を抜ける風の感触。どれもが現実だと訴えている。ゲームと疑いながらも圧倒的なリアル感に状況の判断ができない。

「よし、この件は一旦保留。こういうものとしましょう。今は目の前の状況に対処」

(ゲーム仕様のリアル?ならば・・・“ステータス”)

頭の中で唱えると案の定それは出てきた。


名前 メグ

種族 人族

性別 女

年齢 10

レベル 1

賞罰 なし

ステータスポイント 0

スキルポイント 0

HP 36/12(+24)

MP 24/24

SP 24/12(+12)

STR 1(+2)

AGI 1(+2)

MND 1

INT 3

DEX 1

VIT 1(+2)

LUK 3

鑑定 1

魔道具 堅牢なる胸当て(VIT+2)、俊足のサンダル(AGI+2)、剛力の短剣(STR+2)、大喰らいのポーチ


「これゲームやってたときの私のハンドルネームじゃない。十歳か。それにしては小柄かな。賞罰?履歴書か!しかし、本当に初心者ね。知性が高めなのは中身が大人だからかしら?あっ、この装備・・・」

『これ見た目は初心者の装備だけど、すっごい付与を付けたよ。それにチート級のアイテムも入れておいた。ママはへたっぴだから、これでガッツリレベル上げしてよ。それじゃないと魔の森にも一緒に行けないよ』

一緒にゲームをしていた時の孝一の言葉が蘇る。孝一がくれた装備。胸がじわりと温かくなる。

「孝ちゃんはやっぱり優しい子。それなら・・・」

ポーチを開けようと手を触れると、入っているものが頭に浮かぶ。

「これやっぱりマジックバッグだわ。なるほどね、触ると中身がわかるって便利ね」


― 大喰らいのポーチ 収納量12% 魔力残量100% ―

魔法スクロール SSS級エクスプロージョン×1、SS級エクスプロージョン×1、SS級アブソリュートゼロ×1、S級アブソリュートゼロ×1、ヒール×1

食料 携帯保存食×4

貨幣 銀貨×10、小銀貨×10


「やっぱりあった」

意識をスクロールの一つに向けると、目の前にいきなり現れた。とっさに手を伸ばしたが取り落とすと、ドスンと音がした。足元を見ると、四十センチくらいの赤黒い玉が落ちている。玉には紐が付いていて、それを辿ると、A4くらいのセピア色の丸められた紙があった。紐は丸められた紙を止める帯になっている。玉の表面は滑らかで大理石のような感触だ。紙は羊皮紙のようで、ざらりとした手触りで少しかび臭い。

「意識を向けると取り出せるのね。でも、このスクロールのアンバランスは何!」

玉はズシリと重く、恵は持ち上げるのを諦めた。

「さて、どうやって使う・・・」

ゲームのようにターゲットにカーソルを合わせてクリックとはいかない。

「そうだ、鑑定」

“魔法スクロール SS級エクスプロージョン”

使えない。マジックバッグの表示と変わらない。鑑定術もランク1ではこんなものか。そういえば、さっきのワイバーンとかも名前と種族しか出ていなかったっけ。

とにかくやってみるしかない。玉を置いたままスクロールを開く。スクロールには魔法陣と思われる精緻な図が書かれている。すると、体から何かが抜ける感覚あり、魔法陣が淡く光り始めた。MPが19/20に減った。

(魔法が発動するのかしら?)

(そうね、マジックバッグは対象に意識を向けると取り出せた。なら・・・)

岩陰から顔を出し、地竜の群れを見つめて意識を集中する。

「・・・」

何も起こらない。魔法、魔法、魔法・・・そうだ、詠唱。改めて地竜の群れに意識を向ける。そして・・・。

「エクスプロージョン」

手に持っていたスクロールの魔法陣が輝きだし、同時に、見詰めていた地竜の群れの中心が青白く輝き、次の瞬間、爆音とオレンジ色の炎が凄まじい勢いで広がる。

「うわっ」

慌てて、岩陰に身を潜めると爆風が頭上を通り過ぎる。しかし、遮蔽は完全ではなく二メートルほど吹き飛ばされて転がる。じっとしていると、轟くような風の音が次第に収まってくる。暑い。周囲の温度が一気に上昇した。酸素が持っていかれたのか、息も少し苦しい。右肩を打ち付けたようで鈍い痛みがあるが、我慢してそっと頭を上げてみると、景色は一変していた。

地竜がいたあたりに直径百メートルくらいのクレーターがありブスブスとくすぶっている。その周囲には黒く炭化した地竜のなれの果てが放射状に広がっている。リザードマンは跡形もない。焦げた肉のにおいが漂ってくる。

手元にあったスクロールはどこかに飛ばされ。玉は残っていたが、赤黒くツルツルしていた色が、濁った白になった、正に抜け殻だ。


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