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王城での暮らし 1

皇城の東棟にある皇太子の執務室で、ヨハネスはぼんやりと物思いにふけるように窓からの景色を眺めていた。帝都ゼーシュタットは、キームヒス湖の島に開かれた街で湖畔からは地続きの細い道がある。城は島の高台に聳えていた。白い石を積み上げた荘厳な城の姿は、湖の景観と合わせ人々からアイスベルク城と呼ばれている。

窓からは、白い綿帽子を被った家並が見える。その先には深いブルーグレーの湖があるはずだが、霧が覆い隠しまるで雲海の上に築かれた街を眺めているようだ。キームヒス湖は不凍湖として有名である。ヴァルベ河の流れがあることもそうだが、湖底から暖かい地下水が湧きだしていて、水温が下がらないため一年を通じて凍ることが無く街を包む天然の掘りになっている。新年の早朝は、普段賑わう街も霧に包まれ静謐な雰囲気を纏っている。

「おや、殿下。新年早々からご気分がすぐれませぬか」

皇太子の懐刀と言われるリーヌスは、何時のように礼儀作法を無視した態度と物言いで、挨拶もせずにヨハネスに話しかける。

「あの間抜けな辺境伯を使った揺さぶりも、ラ・サンテーヌの拠点づくりも、お前の仕掛けた手立ては潰えている。機嫌が良いわけが無かろう」

「いや、これは参りました」

さして責任を感じていないようにリーヌスは答える。

「しかし、あのマンティコアを倒す者がいるとは。しかも、その者は成人前の小娘と聞いたぞ」

「信じがたいことですが、潜り込ませた者たちの報告は確かです」

「詠唱破棄か・・・しかも、それを人に技術として授けられるとは」

「たぶん誠なのでしょう。そうでもしなければ、あのマンティコアを倒すことは叶いますまい」

「まだ一般化はしていないようだが、こと戦闘に限って言えば我が国は大きく後れを取ることになった。しかし、王国は我々が詠唱破棄の情報を掴んだとは思っていないようだな。案外抜けておるな」

「そこは如何でしょう。王国の皇太子と側近はそれなり出来る者のようです。私は、態と目を向けていないように思われます」

「それは、何故だ」

「普通に考えれば、辺境伯の所業は反逆罪です。一族郎党を皆処刑が当たり前です。今回の処置は軽過ぎます。意図的に政治的決着にするため不問にしたものと。恐らく、派閥争いを有利に運ぶためか、我が国の関与から開戦論が上がるのを抑えるためかと」

「やはり奴らから戦を始めさせるのは難しいと言うことか」

「それと、王国の皇太子は穀物を集めていると報告がございます」

「兵糧では無く穀物を集める・・・そうか、我らを食料で縛る気か。食えぬ奴らよ。すると今回の会談は、そちらが本命か」

「会談で食料提供の話が上がり、ヨハネスさまが断ったとなると、それを不服とする貴族が出て来るものと思われます」

「厄介なことだ」

「王国からは手を引かれますか?」

「いや、その議題が上がる前に事を起こせば会談どころではないだろう。それに、戦端はこちらから仕掛ける計画に切替えたのだ。抑え込むことが出来よう。王国の戦力が勝ったとしても、もともと戦闘で勝つつもりはないのだ。最終的に王国が戦争から手を引き、領土が守られそれを戦の勝ちと宣言すればよいのだ。開拓地への入植の方はどうだ」

「滞りなく。既に送り込んだ者は五万人を超えました。まあ、開拓そのものは捗ってはおりませんが」

「構わぬ。国境近くに多数の民を置くことが目的だ。それで、指示していた件はどうなった」

「はは、これにて」

リーヌスは、慇懃な態度で持っていた書類を手渡す。

「ふむ、なるほど・・・。姉上とは初めの宴席以後は、目的も分けて全て別行動にすると申し入れるのだな。しかも、姉上の日程からは政治的な交渉を外すのか」

「はい、こうすれば王国も人手を二手の分けなくてはならず、政治的にはマチルダ様の重要性は薄れるでしょう」

「姉上の相手は、皇太子妃か王女になるだろう・・・。おい、マンティコアを倒した小娘は、皇太子妃と王女に近しいものでは無かったか?」

「恐らく、顔を出すでしょう。それを含めての別行動です。人手を別けなければいけない状況でも、その少女が加われば、皇太子妃の警護は十分と考えるでしょう。それでも力押しは無理でしょうが、それ以外の警護も手薄になりますので、からめ手はやりやすくなるものかと」

「王国の者たちは、小娘の情報は我々の手に渡ってい無いことが前定なのだな。それを逆手に取るわけか」

「いくら戦闘力が高いと言っても、所詮少女。剣や魔法を使わぬ戦いでは年の功でございます。それを更にやりやすくするため、欺瞞となる噂を流します」

「うむ・・・ちょっと待て、あの間抜けな辺境伯はくたばったのであろう。このルートはまだ続いていたのか?」

「新しく来る代官の手の者と言う振れ込みで接触してきた者がおります。どうやら王家の番犬のようです」

「王家の守りとかいう連中か」

「さようです」

「奴らも、こちらの事は察しておるのだろう。そんなルートで噂を流しても信じぬぞ」

「まあ、坊主どものルートと合わせて、有ること無いこと流してやります。あの手の連中は、分析と称して情報の山から小さなものを拾い上げるのが好きですから、勝手に想像させますよ。幾つかのソースから、自分で拾い上げた結論は信じ込みやすいものです」

「また、坊主どもに金をばら撒かねばならぬか」

「必要経費と思い、諦めてくだされ」

「まったく、扶養家族が多くて困る」

「手足にも栄養を与えねば、動きませんので」

「一番の、ごく潰しに言われてもな」

「いやいや、私めは清貧をモットーとしております」

「どの口がいうのだか。しかし、父上もボケたものだ。姉上を付けておけば俺が大人しくしていると思っているとは。幾つになったと思っておるのだ。やはり早々に引退してもらわねばならぬな。今度の、王国との交渉。必ず成功させるぞ」

「御意」


社交シーズンが終わろうとする、光の節季の第四週の地の日の朝。恵に来るべきものが来た。初めての巡りものである。この腰が重くなったような腹痛が定期的に来ると思うとちょっと憂鬱になった。

(前世はこんなに痛かったかな。初めての時はどうだったっけ)

ブロンシュにそっと打ち明けると、彼女はエマともども、その日のお茶会の予定をキャンセルすると、恵に生理の意味を教え、イネスに生理用品を持ってこさせ使い方を説明してくれた。更にブロンシュは、当然のように自ら魔力薬を作って飲ませた。しかも、ちゃんと子供向けの弱めのカップを使っている。おりものが始まったときアリスには話していたが、アリスがブロンシュに伝えていて準備していたのだ。エマも世話をしたがったが、これは母親の役目だと言って譲らなかった。実は、エマのときもアカデミー時代に初潮を迎えたが、社交シーズンでなくブロンシュは領地にいて世話をすることが出来なかった。それを気に病んでいたようだ。貴族は普通メイドに任せるので、とてもブロンシュらしいと言えた。恵が、異世界だなと思ったのは、クリーンを上手に使う話があったことだ。生活魔法はほとんどの人が使えるが、この年頃だと使える者は半分くらいらしい。

「こいさんは、クリーンがお上手なので安心やね」

イネスが優しく話しかけてくれた。

(確かに。クリーンは便利。前世でも欲しかった。ただ、脱脂綿を使った生理用品では漏れたよ。クリーンで処理できると言ってもねぇ、気持ち的には・・・。やっぱ前世の生理用品は進んでいたよ)

その日の夕食には、普段見ない焼き菓子のデザートが出された。サイモンとライアンは、おっと言う表情を見せたが、黙ってそのまま焼き菓子を食べた。エマは始終にこにこしていた。

「これでいつでも、アクセル殿下の下に嫁げるな」

サイモンがそっと呟いた。どうやらこの焼き菓子にはそのよう意味があるらしい。

(こっちのお赤飯か?・・・でも最近はやらないって聞いたな)

そういえば、先週、アクセル殿下の婚約者候補の発表があった。予想通り恵以外の候補者はいなかった。このまま何もなければ、来年は正式に婚約をして、アクセルの成人後にタイミングを見て結婚となる。

ミュールエスト領は、直轄地のままとなった。ただし、オクシーヌ領主代行として派遣されていたマリウスが、カルを再建した功により男爵に昇爵、ミュールエスト領の代官として派遣されることとなった。これは後々、ミュールエスト領は強硬派が抑えると示したようなものであった。

(きっと、シャーリー心配しているなぁ)


ガスパールの工房には、ほぼ入り浸っているルシィの他に、今日はリラも来ていた。テーブルの上には、リラが試作として作った二つの通信板が置かれている。

「まぁ、これは魔道具とちゃうからな。こんなもんやろ」

「いや、リラ殿の仕事は丁寧で良いですね」

「有難うございます。ガスパール先生」

「あのやんちゃだったノアに、こんな立派な娘さんがいるのだ、私も歳を取るはずです」

「ガスパール様はまだまだ、お若いです」

(なんだ、この雰囲気・・・)

「リラ。ちょっと説明して」

「ええよ。考えたんやけど、書込みスペースは広くと取りたいんやけど、大きくすると持ち運びが不便なんで、折り畳み式にしたんや・・・こうな」

リラは、試作品のひとつを手に取り、恵に示す。B5版くらいの薄くしっかりした黒い板を開くと中に書込みが出来る面が現れた。

「今、開くとき・・・」

「せや、このリングの四桁の番号を合わせんと開かんようにした。これなら、置いといても中身見られんやろ。鍵とかにするとメンバー皆に配らんとあかんし、こうしてみた」

「うん、いいじゃない」

「でな、もうひとつ、ここが外れるんやが、ここにメグが言うとった、通信番号やら名称やらを書いた札をはめ込むんや。最終的には封印して、特定の人にしか分からんようにする」

この通信番号は電話番号に相当するもので、リラに伝えておいたものだ。

「ガスパール先生とルシィはんと話し合ったんやが、確認せなアカン点が二つ。一つは、折りたたんだ状態でも中身が鑑定できるか。もう一つは、この通信番号が、ちゃんと通信板の識別になるか、別もんで通信板に入ってる番号札としか見られんか、ちゅうとこや」

「結局、結論が出ませんで、お嬢様に試して頂くしかないとなりました」

「試すにしても、また人を集めないといけなけど、今回は秘密にしないといけないので、うちの使用人で試すわけにいかいですよね・・・。ちょっと姫様に相談してみる」

「それで、これがもう一つの裏のグループ用や。構造は基本的に同じや」

もう一つは、同じ大きさで色が白く、角が丸く削られて女性らしいかんじだ。だがこちらには番号のロックが無い。

「?」

「開けてみ」

リラがにやりと笑う。

「わっ、鏡」

「そいで、その右手の・・・それ、ずらしてみ」

「あ、鏡が」

右側の鏡が、本の頁のように開いて、書込み部が現れた。

「まぁ、偽装やな。表には花の絵かなんか入れて、女の子の持ち物っぽくしといたる」

「リラ。いい考えだよ。・・・そうだ、私んとこで、同じ形の鏡を売り出せば、カモフラージュもバッチリだね」

「あの、メグの名前の装飾品か?そっちは、任せたわ。後で、意匠渡してや」

「了解。じゃあ、実験するから、もう一つずつ通信板を作っておいて」

「まかせとき」


光の節季の最終週になった。来週からはアカデミーが始まるが、恵たちは王城から通うことになる。王城に用意された部屋には私物も運び込まれ準備は整っていた。今日は本人による最終確認が行われたが、その後、クロエが自分の部屋に皆を招いていた。

「どうだ、準備は全て終わったか」

「はい滞りなく」

「さあ、座れ座れ。今日は女子会だ、そう畏まるな」

「「失礼します」」

最近のクロエの女子会は、部屋の中でピクニックを開くような感じだ。彼女の部屋に敷かれた、毛並みの長い敷物に靴底をきれいに拭いて上がり直に座る。そして、手元のトレイに乗ったお茶や菓子を頂きながら話をする。席次やマナーなどの慣習を切り離したものだ。上級貴族の中には顔を顰める者もいるが、身分や立場を取り払い、自由に意見を述べあう場として、目に見える形にしたものだ。

(うわ。このでっかい敷物をいれるのに、家具の配置換えまでやったんだ)

恵が、きょろきょろと部屋を見回していると、それを見たクロエが恵に伝える。

「メグ。今日はアクセルはおらんぞ」

「いえ、別に・・・」

「メグ、残念ね。恋焦がれる王子様がいらっしゃらなくて」

「私も噂を聞いたわ、メグってそんなに殿下のことを思っていたなんて知らなかったわ。伯爵様に泣きついたって」

「あぁ、その噂な・・・裏があるのだ。後でそれも話してやる。さあ、女子会を始めるぞ」

招かれたメンバーは、恵、セリア、シャーリー、ステラで、部屋にはエステェと護衛のアノックがいた。招かれた者たちがクロエの周りに座る中、アノックは後ろに控えるように立つ。いまだに堅苦しいところがあるが、誠実な性格をクロエは気に入っていた。

「来週から、私付きメイドとして働いてもらう。よろしく頼むぞ」

「「宜しくお願い申し上げます」」

「それでな、これを機に”フルール・ド・リス女子会”を立ち上げることにした」

(なんか、姫様暴走してないか)

恵が要領を得ない顔をしているのを見たクロエは、言い募ってきた。

「例の、”通信”というやつには、メンバーを特定しなければいけないのだろう」

サイモンが、鑑定による連絡方法について国王ジャンから何かよい名をつけろと言われたと、相談され、前世で使っていた”通信”を提案したところ、すんなり決まってしまった。

「兄上たちと別に行うためにも、仲間とも意識させるためにも、集まりに名称を付けるのがよいと言っていたではないか」

「えぇ。ですが、メンバーにはアクセル様や私の護衛達も含めると思うと、女子会と言うのは如何でしょうか・・・」

「そんなものは、準会員とかなんとか付けておけば良いのだ。私はそれより、男たちにガツンと見せつけてやると言った、お前の話が気に入った。とてもそれっぽい名前だろう」

「そうですか?」

「ノリが悪いなメグは」

「殿下。私は、気に入りました。女子会って何か新しい風を感じます」

「そうだろう。ステラは良い感性をしている。それと、皆も殿下呼びはよせ」

「商売でも筋の良い常連客を掴む方法に会員制がありますが、優越感や帰属意識を高めるためにもネーミングや会員の証は重要です」

「ステラは詳しいな。そうか、お前はミュレー家だったな。さすが、この国で五本の指に入るミュレー商会の娘だ。その会員の証と言うのがいいな」

「ミュレーが大店などとはおこがましいです。しがない子爵が持つ商会です。会員の証ですが、指輪のように身に着ける物にして、見知らぬ者同士でも見れば同じ会に属していると分かり合えるようにさせるのが良いと思います」

「どうだ、メグ」

「名称はともかく、指輪のような証となるものを持つと言うのはいいですね」

「名称は決定だ。そこは言うな。そもそも女子会はお前が始めたのだろう。・・・そうか、自分の発案なので照れているのか・・・ふふふ」

(え~決定だったんだ。それと姫様、私がやったのは女子会ではありません。大きな勘違いです)

「ではリラに作らせましょう」

「準会員などを設けるなら、意匠は同じで色や材質を変えるのが良いでしょう」

「そうだな、男性陣は準会員、お母様とお姉様はさしずめ名誉会員と言ったところか」

「それでは、単純に、主催のクロエ様は白金、名誉会員は金、一般会員は銀、準会員は銅で良いのでは?」

「分かりやすいな。ただ、お母様より私が上のようで憚られるな・・・」

「では、名誉会員の王妃様とエマ様にはミスリルを、金は今後特別な会員が入会するときの予備枠としておきましょう」

「それでいい。指輪の意匠はメグに任せる」

「マルグリット・ブランド、人気がありますよね。いまや、王都の若い子は何か身に着けています」

「クロエ様の、そのペンダントもそうですよね」

「あぁ当の妹の手作りだ。これには助けられた」

クロエのサクランボのペンダントは、既に新しい魔石に入れ替えられて以前の艶のある紅色に戻っている。クロエのしなやかな指がペンダントに愛おしそうに触れる。

「結構偽物も出回っていますよ。光らないやつとか」

「偽物が出ると言うことは、ブランドが確立したことでもあります。洗礼みたいなものですね」

「さすが、商会の娘らしい意見だ」

「ではちょっと今のデザインとは趣を変えて見ましょう」

(もう少し現代風なものにしてみようかな)

娘たちは、横道にそれながらもワイワイとフルール・ド・リス女子会について話し合った。

「ではそろそろ、フルール・ド・リス女子会の目的と当面の目標について話そう」

そうしてクロエは、恵が関わった一連の事件とその政治的背景、帝国の状況と王国方針を、恵の体験談を交えながら話した。その内容は、一般には伏せられている情報で、大儀とは程遠い派閥の駆け引きや利害が浮き彫りにされたものだった。そして、その淀んだ状況を押し流すためのカドー開拓の計画を語った。

セリアは、予想通り驚愕の表情を浮かべるシャーリーとステラを、目を輝かせて見詰めていた。

「当面の目標は、ニゲルの英雄王の回廊を安全に行き来できる状態にすることだ。まだまだ絵空事ではあるが、これまでは絵にもなっていなかったからな」

「あまりにスケールが大きくどう反応していいか分かりません。それに私たちに伏せられてそんなやり取りが有ったのですね。本当に私が役に立つのでしょうか」

「シャーリー、皆一緒です。ドンと当たって砕けましょう」

(なんかセリアちゃんの最近の発言が変)

「盛大に砕けてこい。骨は私が拾ってやる」

「クロエお姉様、それはシャレになっていないですが・・・」

「そうかぁ、はははは」

「それで、試作した通信板の実験ですが、如何しましょう」

「うむ。父上に場所を整えてもらおう。その後、フルール・ド・リス女子会のメンバーでも改めて確認しよう」

「よろしくお願いします」

「うむ。セリアもレベル上げをしたので、検索とやらもいけるのだな」

「はい、お任せください」

「セリアは本当にレベル29で鑑定持ちなのね・・・でも、そうするとメグのレベルって幾つなの」

「それは乙女の秘密です」

「・・・」

「妹よ。お前が言いたくないことを無理に聞き出すつもりは無いが、その言い訳はどうかと思うぞ」

「メグちゃん。私もそれダメだと思う」

「あのう、レベル29って言われても想像が出来ないんですが」

「中級から上級の冒険者が、魔獣討伐に毎日励んで引退するまで続けると、その位になると聞いたぞ」

「ではレベル30の方って、意外といるのですか」

「そもそも五十を過ぎて引退するまで前線で魔獣討伐をし続けることが困難だからな。さほど多くはおるまい。それに、たとえレベル30になっても肉体的には衰えているからな。それを考えるとまだ全盛期を迎えていない十代でレベル29と言うのは脅威だな」

「実感はわきませんが、凄いと言うのはなんとなく分かりました」

「ゴメンね、メグ。私、酷いこと言ってたね。メグの婚約であなたの家が突出するという話が、強硬派が態とリークして仕掛けたとか、殿下にのぼせてる噂が、スキル保護法の改正を成立させる駆け引きだったとか・・・メグを責めるような言い方をして、ホントごめん。でも身内からもそんな噂流されるなんてちょっと酷いね」

「あれには、お父様とライアン兄に怒ってるんだ。シャーリーは別に悪くないって」

「ありがとう」

「私のほうは所詮噂だけど、シャーリーの方が大変じゃない。ミュールエスト領が強硬派のものになると、ご実家に直接影響するでしょう」

「今日の話を聞いて、私も腹を括ったわ。この企てがうまく行ったら、私にも出来ることが増えるんじゃないかと思っているの。私は、マヤ様の志を継ぎたいのよ。マヤ様がミュールエストでやられたことを、国の制度として組み込むことがしたいの。ここにいればそれに近づけそうな気がする。カドーの開拓がうまく進み、私たちの居場所が出来たとしても、生まれ育ったソロンの人たちが苦しい思いをするのは嫌なのよ。でも、さすがメグは豪胆ね。私の事ばかり気にかけてくれて。来週から始まるアカデミー大変だと思うけど。特にアクセル殿下と同じ最上級生のお姉さま方。きっと当たりは凄いと思うけど・・・なに顔を青くしてるの・・・メグ、あなた全然考えてなかったの?」

「あ~。メグちゃんこういうの疎いから」

「言っておくが、私は卒業したから、もうアカデミー内のサポートは難しいからな」

「しょうがない。私らでガードしてやるか」

「お願いします・・・」


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