物語の始まりは君次第
俺、『矢野 匠』は普通の高校生だ。勉強は中の上、スポーツもそこそこ。家族関係だって良好だ。彼女はいない。悩みといったら最近買ったゲームが難しくてクリア出来ないことぐらい。でも何か物足りない気がしていた。
そんなある日の下校中俺の前に一人の女の子が現れた。その女の子を例えるなら天使、超絶美少女がそこにはいた俺が看取れていたらその天…女の子が突然話しかけてきた「君今の人生に満足している?」女子との会話に馴れていない俺は彼女の問いに片言で「モ、モチロンデキテルゥヨ」
その反応を見て彼女が笑った「君面白いね、私、美咲!君に決めたわ。」何かが決定したらしい…最近の若い子は皆こうなのだろうか?まぁ俺もその若い子何だけど
「で、何が決まったの?」
「異世界行きです」
「異世界ぃぃぃぃぃぃ」
俺の意識はここで途切れた。
「ギィヤァァァァァァ~」
「ヒィ」、「黙れェエエエエ!」俺の悲痛な叫びに周りが反応した。
「おい、うるさいぞ涼風!神野が怯えてるぞ…」
「あ、あの大丈夫ですぅ先輩も悪気があったわけじゃ」
「そうだそうだ!桜は俺の味方だよな?大体先輩の声が」
「調子に乗るな!お前が叫ぶと他の部から苦情がくる少しは静かにだな…」部長の説教タイム中だがここで本来のあらすじを語ろう。俺の名前は 「涼風 雅」さっきの『矢野』と違って賢い、スポーツ出来ない、家族関係、妹ととだけ最悪、彼女…必要ない。普通の高二だ。部活は文芸部所属で趣味は読書
そして目の前で鬼の形相をしているのが 「鮫島 誠」我ら文芸部の部長でコンクールで数々の受賞歴がある意外とすごい先輩。しかしそれは仮の姿、俺の前では悪魔みたいな人だ。趣味、読書(純文学、歴史小説)
端の席で小さくなっている気弱そうな子は、「神野 桜」この部の癒し担当だ。でも実はこう見えて累計100万部を突破した高校生ラノベ作家で作品内容が結構エグいことで有名な油断ならない後輩。ただ見た目が非常に可愛らしいので学校でかなりの人気者。趣味、読書(詩歌)
俺の説教が終わりそうな所で部室の扉が開いた。
「もう~本当にやめてください!先輩、廊下で噂されてましたよ」その男子は当然のように俺に文句を言ってきた。もう一人の部員「常磐 匠」彼は素晴らしいほどの普通の高校生なので俺はいつも作品のモデルにこいつを使っている。俺よりも重度のラノベlove人間だ。趣味(ラノベを極めし者)
「だってぇトッキーを主人公にしたラノベ、また行っちゃったんだもんあそこに…」
「そりゃ行きますよ、先輩が好きなラノベ大体異世界ものじゃないですか?」
「まぁそうだけど…」
その通りだった。俺の好きなラノベは通り魔に刺されて転生したり、変な可愛い女神と異世界生活始めちゃったりするやつ。
でも俺には目標がある、作家デビューすることだ。仮に異世界ものを書いたとして読者からはまた異世界か…と思われるのがオチである。
「俺の造る作品にテンプレは必要ない!皆が想像出来ないものを作ってみたいんだ」
「まぁそれは良いことだと思いますが先輩がさっきまで書いてた原稿11行で異世界行ってますけどね」
「うっ 言われなくても分かってる!」
トッキーはたまに毒を吐いてくるから恐ろしい…
「はぁ、影響されるんだよな~好きな流れに」
そんな俺を見てトッキーがある提案をしてきた。
「一度異世界ものを書ききればいいんじゃないですか?」
「どういうことだ?」
「さっきの作品を完成させて気持ちを一度リセットしたら良いのではないかと」
「なるほど…よし!決めた。この作品を最後に、異世界ものとはおさらばする」
俺だけの俺だけにしか書けないラノベを目指してやるだけだ。
文芸部の面々もだすかせっかくだし
「俺は登場させるなよ」
俺の心を読んでいるのではと思うぐらいのタイミングで部長が言ってきた。
「部長はもう魔王役なんで安心してください」
「なぜ悪役なんだ!」
やりとりを見ていた桜が珍しく会話に参戦した。
「私は出たいです」
「もちろんだ、桜お前は僧侶でいずれ魔王を倒すんだぞ?」
「因みに僕は何ですか?」
トッキーが少し気になった様子で話しかけてきた。とっておきの役が残っている。
「トッキーは始まりの町の村人だ」
「せめてメインのキャラがいいです!」
「ははっまぁ考えておく、じゃあ今日はこの辺で帰るよ」
俺は書きかけの原稿を鞄に入れて見送られながら部屋を出た。
梅雨入り前、最後の快晴とでも言わんばかりに今日は雲がひとつもなくグラウンドでは運動部が練習に励んでいた。
その姿を見ながら俺は裏門から下校する。これからの構想をどうするのか悩みつつ歩いているといつの間にか目の前に女の子が立っていた。
「あ、ごめん」
この辺りではあまり見かけない制服を着ていた。同い年か年下ぐらいだろうとても綺麗で可愛い子だ。でも何か違和感が…
「あなた名前は?」
「え? 涼風 雅です」
突然聞かれるからつい敬語になってしまった。
「雅ね、じゃあ雅あなたに一つ質問をするわ」
「あなた今付き合ってる人はいるの?」
「ブホォ」
何なんだこの子いきなり何言っちゃってるの?
あ、もしかして告白?遂に俺にも出来ちゃう?彼女
こんな可愛い子と付き合えるなんてラッキーだ。トッキーに報告しよう!と俺が心のなかでパレードを開催していると彼女が話しかけてきた。
「ね、パレード中に悪いけど心の声が全部聴こえてるよ?」
「ま、まじか~恥ずかしいえ?何?全部聴こえてたの?うわぁ~」そんな俺を見て彼女が笑って「君面白いね!私の名前はミアン!君に決めたわ!」
??この展開何処かで…まさか!って流石にそれはないない偶然だな
「そ、それで何が決まったの?」
「そんなの決まってるじゃない?異世界行きよ」
「…面白いこと言うね。あ、もしかして異世界ものが好きなのか?だったら俺たちいい友達になれるかもね」
「?そうね、話が速くて助かるわじゃあ行きましょ!」
「何処に?」
「異世界だけど?」
「異世界ぃぃぃぃぃぃ」
俺の意識はそこで途切れた。