12話 ヒナの家
「絶対に目を開けないでよ!」
タナカの姿をしたヒナが、ヒナの姿をしたタナカに強く命令した。
「もう、今更いいだろ。さっきも見たんだし」
「ダーメッ!プライベートの下着は見られたくないの!」
「めんどくさ……」
そんなやり取りをしながら、タナカの姿をしたヒナが、ヒナの姿をしたタナカにヒナの下着や服を着せていった。
「はい!目を開けていいよ」
ヒナの私服はタナカが思っていたよりもシンプルで、おしゃれというよりかはラフな格好だった。
「普段着は地味なのよ……」
そう言いながら、タナカの姿をしたヒナはタナカの服に着替えようとした。
「うわっ、パンツ臭くない?
まじ最悪!
裏返して履くね……」
「おい、そんな事したらズボンが汚れるだろ」
「え、やっぱりパンツ汚いって自覚あるのね!」
「い、いや、汚くないけど……くそっ」
それ以上タナカは反論してこなかった……
そう、言い合いをしながらヒナはタナカの服を着た。
部屋の片付けが終わりヒナはスマホをチェックした。
するとオーナーからの着信やラインが入っていた。
ヒナを心配する内容だった。
◆オーナーへの返信◆
心配ありがとうございます。
部屋の片付けが終わったので帰宅します。
身体は大丈夫です。
疲れたので帰って休みます。
しばらくそっとしておいてください。
ヒナ
本当はすごく会いたくて話したかったが、今はオーナーとは会えないし、話しても嘘しか言えないと思い、我慢していつもより冷たく返信した。
「ヨシっ、さっさと帰るわよ」
2人は施術ルームから外に出た。
「ちょっと待って……
2人が一緒にいる事を誰かに見られたらヤバいわ」
「確かに……別々に行った方がいいな」
「じゃあ、あんたは私の後ろからついてきて。ストーカーに間違えられるから100メートル以内には近づかないでね」
「ちょっと待った、今は身体が入れ替わってるから、第三者が見たら若い女がおじさんをストーキングしてるだけだぞ」
「あ、そっか、じゃあもっと近くてもいいのかな……その代わり変な動きはしないでよ」
「了解!スマホだけ本人のにして、その他の荷物は見た目に合うようにしておこう!」
「そうね」
こうしてタナカの姿をしたヒナが先にヒナの家に向かい、ヒナの姿をしたタナカが後をついていく形となった。
荷物はそれぞれの見た目に合うようにして、スマホだけ入れ替えて連絡を取りながら向かった。
2人ともマスクを着用していたおかげか、誰にも声をかけられずに済んだ。
そうして30分後にはヒナの家に到着した。
部屋の中に別々に入る事で、他の住民から怪しまれずに済んだ。
「はぁー、いつもの何倍も疲れたわ」
「そうか?俺は全く疲れてない。むしろいつもより元気かも。やっぱり若い身体はいいな!」
「そっか、私が疲れたのは、気を使ってたのもあるけど、単純に身体が老化してるから疲れたのね……」
タナカの姿をしたヒナは理解した。
「俺はこのままの姿でもいいかも」
「はぁ?何ふざけた事言ってんの!私は絶対嫌だからね、こんなおっさんの姿……」
「ははは、俺もこんなおっさんの姿は嫌だな!」
「て、こんなおっさんって、元々の自分の姿だろ!」
ヒナはそう突っ込んだ。
「まあ、でもこの姿だとメンエスに行けないし、可愛い女の子とエッチなことできないから、男の方がいいかも……
できたら若いイケメンに戻りたいな……」
「はぁ?お前がイケメンに戻れるわけないだろ!とりあえず、とっとと今後の事考えるわよ!」
「そうだな、家庭や仕事の事もあるし、めんどくさいけど考えるか……」
こうしてヒナの家に到着した2人は、今後の作戦を考え始めるのであった。
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