第2話 俺の部下が何度やっても救えない
「きょ、局長……っ!」
「どうした、サリファ」
パレードも終わりに近づいた頃、沿道警備をしていたサリファが、俺のところに駆け寄ってきた。
顔面は蒼白で、黒のスラックスに締め付けられた脚を、気の毒なほどに擦り合わせている。
「あの、そのっ、職務中に、あっ、本当に、んっ、申しっ、訳ないのっ、ですがっ、ト……っ……トイレにっ! 行っても、よろしいでしょうか……!」
目に涙を溜めながらトイレを懇願するサリファ。
勿論、俺は言われるまでもなく、サリファの状態は把握している。
能力で見てるのもあるが、これ、2回目だし。
486/412ml(118%)(15ml)
膀胱はパンパンを超えて118%。ついでに15mlちびっている。
前回はここで『終わるまで我慢しろ』と言って、結局野ション……お漏らし? どっちかわからない状態に追い込んだ。
今回はロゼッタ様の方は様子見だから、また虐めてやってもいいんだが、何度もやるのは、ちょっと気が咎める。
「さっさと行ってこい。漏らすなよ」
「はっ、はいぃっ……! ありがっ、んんっ! あ、ありがとうございますっ! あああぁぁあぁぁ……!」
小さい歩幅で、忙しなくちょこちょと駆けていくサリファ。
『漏らすなよ』に対して強がりも言えていない。
思ったんだが、このタイミングでトイレに行かせて、そもそも間に合うのか?
入れるトイレは近くにないんだが、さっきと同じなら、あと2分くらいでアイツ漏らし始めるよな?
……ちょっと追いかけるか。
俺は心配になって、サリファの後を――あっ。
ちょうど、サリファが前回と同じ角を曲がる、その直前。
曲がり角から飛び出してきたガキが、サリファにぶつかってしまったんだ。
よりによって、アイツのもう、1ミリも膨らまないレベルにパンパンの膀胱に、頭突きをする形で。
「あ゛ぁあ゛あ゛ぁっっ!!?」
増大した内圧に、サリファが悲鳴を上げる。
しかも、サリファは脚に力が入らなくなっており、ぶつかられた勢いのまま、大股開きで尻餅をついてしまった。
「んはあぁっ!」
なにか、取り返しのつかないことをしてしまったような、切ない悲鳴。
そして――
ジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!
サリファのスラックスに、一瞬にして濡れが広がり、そのまま地面に溢れ出す。
頭突きの圧力と、尻餅の衝撃。
限界を超えていた膀胱にかかる2つの力に、サリファの忍耐はあっさりと敗北してしまった。
何とか立ち上がろうとしているのだろう。手足をプルプルと震わせるサリファだが、放尿の快感が力が奪っていくのか、体は1ミリも持ち上がる気配はない。
やがて、ロゼッタ様を待っていた沿道の観客達も、背後で起こっている非常事態に気が付いた。
「あぁぁっ……い、嫌っ……嫌ぁ……!」
サリファも、若く美しい娘だ。
そんな女性が道で小便を垂れ流す姿に、人々の視線が集まっていく。
足をM字に開いたまま、水溜まりを広げ続けるサリファ。
ロゼッタ様の竜鎧が到着するまでの、凡そ5分間。
サリファは、周囲の無遠慮な視線に晒され続けた。
「あぁぁっ、だめっ、見ないでっ! 見ないで下さいっ! こんな姿っ……見ないでえええええええぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」
◆◆
「先頭の騎兵隊がっ、そ、そろそろ、西通りを抜けます。このままっ、ん、くっ……失礼しました……このまま15分後には――」
「サリファ」
「な、何でしょう、局長」
「報告はいいから、トイレに行ってこい」
「なっ!?」
387/412ml(94%)
やっぱりギリギリは良くないよな?
てわけで、もっと早い段階で行かせてみることにしたよ。
覚えてるかい? 今は本編ロゼッタ様のプロローグの一行目だよ。
「とにかく行ってこい」
「い、いえっ、今は、職務中で……それにっ、私は、別に……が、我慢なんて……っ」
真っ赤になって否定するサリファだが、そんなことを言っている間にも、脚がモジモジと動いてる。
しょうがねぇな。
「ちょっとセクハラになるけど……勘弁しろよ」
「せ、『せくはら』……それは……?」
あぁ……こっちの世界、前の世界より男尊女卑で、『セクハラ』って概念がないんだっけ?
酷い世界だよな?
なんてことを考えつつ、俺はさっとサリファの膀胱に手を伸ばして――
――バチコンッ!
「んはあぁうあぁっっ!!?」
渾身のデコピンを1発。
すると、サリファの脚がくの字に折れ曲がり、目尻に涙が浮かび出した。
「きょっ、きょく、ちょぉ……!」
「行ってこい」
「んっ、くぅっ……あっ、ああぁぁぁぁ……!」
サリファは涙目のまま、俺に恨みがましい視線を向けてきたが、すぐに顔をくしゃりと歪ませ、内股で曲がり角の方に消えていった。
あれ、もしかして……。
387/412ml(94%)(4ml)
やべ、ちびってる。すまん、サリファ。
じゃあ追跡だ。
デコピンで一瞬ちびったとは言え、流石に前回までの限界状態よりは、サリファの脚の進みが早い。
と言っても、若干尻を突き出して、脚を擦り合わせながらの早歩きだが。
初回で野ション現場となった路地裏もスルーして、まだまだ先へ進む。
彼女が向かっているのは、トイレが借りられそうで、開いている店があるエリアだ。
パレード中は、ルートに面した店は休業。
で、王都でトイレを借りられるような店は、全てパレードルートになる大通りに面している。
一見するとサリファの状況は詰みだが、ここでミニルール。
ロゼッタ様の竜鎧が通り過ぎた後の店は、晴れて開店できる。
と言うわけで、サリファが目指しているのは、最初にロゼッタ様が通ることになった、東通りの商店だ。
「はぁっ……はぁっ……んっ、あぁぁぁっ……だ、だめっ、まだ……!」
中央から東通りは、ちょっと距離がある。
我慢の限界が近付きつつあるサリファには、辛い距離だろう。
現状は――
408/412ml(99%)(4ml)
盛り上がってきたな。や、盛り上がっちゃいけないんだけど。
だが、それでもサリファは、これ以上下着を濡らすことなく、東通りまで辿り着いた。
「はぁっ、はぁっ! ま、間に合った……ト、トイレ……!」
そのまま、通りに入ってすぐの、何故か人でごった返している雑貨屋へ。
何やら不機嫌そうな表情浮かべる主人に、声をかける。
「あ、あのっ、すみませんがっ……ト、トイレをお借りしても――えっ?」
そんなサリファの言葉が、チラリとトイレの方を見た瞬間に断ち切れた。
サリファの視線を追えば、何処の世界でも共通なのか、あの赤と三角のマーク。
そしてその下からは、店の外にまで続きかねないレベルの大行列が連なっていた。
よく見れば、店の中にいるのは、ほぼ全てがトイレ行列の客だ。主人が不機嫌そうなのも頷ける。
「あ、し、失礼、しました……っ」
程なく正気を取り戻したサリファは、店の主人にそう告げると、急ぎ店を飛び出した。
別に、主人の眼力に怖気付いたわけではないだろう。あの行列は耐えきれないと判断したのだ。
すぐさま別のトイレを探し始めはサリファ。
だが――
「あ、あのっ、トイレを――あ、いえ、なんでもありません……」
422/412ml(102%)(4ml)
「すみませんっ、トイレは、空いて……な、ない、ですね……くぅ……っ」
438/412ml(106%)(4ml)
「こ、ここなら、きっと……っ……ああぁぁぁ……嘘……!」
451/412ml(109%)(4ml)
「お願いっ……トイレ……空いて――ぁぁっ、だめぇぇ……!」
470/412ml(114%)(4ml)
空いていない。どこも空いていない。
実はもう、俺は状況がわかっていた。
ロゼッタ様のパレードには、王都外からの来客もかなり多いのだ。
で、商店は開いてなくても、ルート外で露店はやっている。
待ってる間に飲み食いをした大量の観光客達は、やがて出すものを出しに、1番に店の開くこのエリアに殺到したわけだ。
東通りは、人で溢れかえっている。もう西通りの店も開いただろうが、サリファにそっちまで行く余力はない。
そして、懸命にトイレを探していたサリファの足が、ついに止まってしまった。
490/412ml(119%)(68ml)
内股で尻を突き出し、両手で出口を押さえた、どう見ても『漏れそうです』といった様子のサリファに、憐れみや好奇の視線が突き刺さる。
スラックスの出口付近は、遠目からでもわかる程にびしょ濡れになっていた。
「あ゛ぁっ……どぅしてっ……とぃれっ……あい、て……あ゛ぁあぁっ!?」
ジョォォォォォォォォォッッ!!
スラックスの染みが広がり、太股の方まで濡らしていく。
悲鳴が、更に視線を集めた。
「あ、あ、だ、だめっ、だめっ! もうっ……だっ……あ゛あ゛ぁぁあ゛ぁぁぁああああぁぁぁぁぁあああぁあああぁぁあああぁぁあっっっっ!!!!」
バジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャッッ!!バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャッッ!!ジョオオオオオオオオオオオオッッッ!!!
押さえた両手の隙間から、滝のように流れ落ちるサリファの黄金水。
人でごった返す東通りに、盛大な水音が響き渡る。
人々はその音に振り向き、そして惨状を目の当たりにして、足を止める。
膀胱の中が空になるまで、サリファは数えきれない程の視線に晒され続けた。
◆◆
もっと早く、余裕のあるうちに行かせよう。
231/412ml(56%)
「サリファ、今すぐトイレに行ってこい。これは業務命令だ」
「え、あの、それは」
「業務命令だ!質問は許さん!」
「は、はいっ、承知致しましたっ!」
まだパレードが始まる前、あまり尿意を感じていないであろうサリファを、命令で無理やりトイレにいかせる。
もうね、強引だけどこれでいいよ。
開いてる店は一つもないから、大行列の公衆トイレに並ぶことにはなるだろうが、56%から漏らすってことはないだろう。
まったく……ここまで世話が焼けるとは思わなかった。
これでロゼッタ様に集中できる。
――そう思っていた時期が、俺にもあったんだ。
何故だ、サリファ。
何故お前がそこにいる。
1時間後、俺の目の前には、女性騎士の白いホットパンツ礼服を着て馬に跨り、パレードの一部と化したサリファの姿があった。
顔は、もうヤバいくらい険しい。
486/412ml(118%)(53ml)
尿意は解消されてないどころか、爆発寸前。
どうゆうこと!? マジで何がどうしたらそうなるの!?
わけがわからないよっっ!!
「あ゛っ!」
何!?
馬上のサリファがビクッと跳ねて、沿道にまで聞こえる悲鳴を上げた。
478/412ml(116%)(61ml)
あぁっ、ちびったのか!
そうだな、馬は揺れるもんな!
……馬? 馬っっっ!!!
ああぁぁぁっ! まさかアレか!? 女性騎士に一名欠員が出たって奴!
サリファは、何故か馬術が出来る。しかもかなり上手い。
見た目もいいし、代役にはピッタリだ。
それで、トイレを探している間に捕まった……いや、普通そうはなんねーだろっ!!
「あ゛ぁっ!」
「サリファっ!?」
469/412ml(114%)(70ml)
サリファの方を見ると、彼女は全身をブルブルと震わせ、閉じられない脚を必死でもじつかせていた。
目からボロボロと涙が零れていく。
よく見ると、純白のホットパンツの股の部分に、小さな黄色い染みができていた。
「ん゛あ゛ぁっ!?」
461/412ml(112%)(78ml)
ホットパンツの染みが、大きく、濃くなっていく。
先ほどからビクビクと震え、謎の悲鳴をあげる、他より2~3ランク美人な騎士に、観客の視線が集中する。
待てサリファ。それは本当に待てサリファ。
パレード中の失禁は、ロゼッタ様用に考えた結末なんだ!
お前がやってどうする!?
「あ゛ぁっっ!!」
449/412ml(109%)(90ml)
サリファッ!?
「い゛や゛ぁっっ!!」
441/412ml(107%)(98ml)
サリファッッ!!?
「あ゛ひぃっっ!!」
428/412ml(104%)(111ml)
本当に待てサリファッ! サリファッ!
「ん゛はあ゛っ!? ら゛め゛ぇっ!」
420/412ml(102%)(119ml)
412/412ml(100%)(127ml)
404/412ml(98%)(135ml)
サリファああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁっっっっ!!!!?
「ん゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛
391/412ml(95%)(148ml)
383/412ml(93%)(156ml)
375/412ml(91%)(164ml)
お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛
89%(173ml)
87%(181ml)
85%(189ml)
お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛
83%(197ml)
81%(206ml)
79%(214ml)
お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お
77%
75%
73%
お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛
71%
69%
67%
お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お――――
65%
63%
61%
59%
57%
55%
53%
51%
49%
47%
45%
43%
41%
39%
37%
35%
33%
31%
29%
27%
25%
23%
12/412ml(3%)(527ml)
――――…………あ゛ぁ……」