第1話 割とみんな知ってるループものの法則
また会ったな、ブラザー。
ブラーダ・ウォッチだ。
アレから、ロゼッタ様は元気でやってるらしい。
今、俺は新しい仕官先を目指して旅をしてるんだが、行く先々で、弱きを救うロゼッタ様の噂を聞くからな。
寧ろ、あんな国から解き放たれて、心のまま、伸び伸びやっているのかもしれない。
まぁ、願望さ。そうであってくれれば、俺の罪悪感も少しは薄れる。
ただ……変な癖がついちまったらしくてな。
大仕事の後には必ずと言っていいほどやらかしてるみたいで、噂で流れてくる名前が『黄金の聖水騎士ロゼッタ様』なんだよ……。
ほんと、申し訳ない。
さて、ロゼッタ様の話はこのくらいにして……突然だが、ブラザーは『世界は収束する』ってワード、聞いたことあるかい?
俺の『黄金牢獄』みたいなループ能力は、しばしば未来を変えたりするが、実は強固な運命で縛られた結末は、状況やタイミングが違えど、重要な所は一切変わらない、って話だ。
え、知ってる? マジで? オ○リンが言ってた?
誰だよオ○リンて……。
じゃあブラザーは知ってるとして、知らない奴も来るかもしれないし、一応説明入れおくぞ。
あるところに、幼馴染の少女をボウガンで撃ち殺された、1人の男がいました。
男は少女を助けようと過去に戻り、未来の知識を活かして歴史を変えました。
が、少女はほぼ同じ時間に、今度は馬車に撥ねられ、やはり死んでしまいました。
男はまた過去に戻りましたが、何度やっても同じ。
斬り殺される、怪しい儀式の生贄にされる、全ての危険から遠ざければ心臓麻痺――
男の辿る道筋はいつも違うのに、『少女が死ぬ』という結末だけは変わりませんでした。
これが『世界の収束』って奴だ。
ん? なんだブラザー? オ○リンもそれやってた?
だから、誰だよオ○リンて。
まぁ、とにかく……俺も時を遡る能力がある以上、無視できない話だ。
もし、ターゲットの女が『漏らさない』という結末に収束する運命を持っていたら……俺は死ぬことも出来ず、時の牢獄に囚われることになる。
ロゼッタ様は……全くそんなことなかったな。
合計5回ループしたけど、正直5回で済むなら楽勝の部類だ。
そもそもロゼッタ様の時は、最初4回は様子見と、我慢強さとの戦い。
運命が抵抗したっぽいのは、4回目のパレード中放尿くらいさ。
ヤバいのは、前に話した、最低でも10万回ループの女だ。
何をやっても無理だった。追い込むはずが、俺が何かやるたびに大きく行動が変わり、対策が立てられない。
ようやくギリギリまで追い込んだと思ったら、なんと俺の目の前で下着を脱いで放尿しやがった。
まぁ、もう一回同じルートやって、そのタイミングで羽交い締めにして、足で膀胱叩いて、何とかトドメを刺したがな。
あん時はもう、性欲とか、同情とか、罪悪感とか一切なかった。
只々、安堵して泣いたよ。
で、なんでこんな話をしたかって言うとだ、何となく、この収束が発生してるっぽい女がいるんだ。
俺の部下の、サリファ・ピンクゴールド。
ロゼッタ様のパレードの時に猛烈に我慢してて、能力発動の、所謂ループ0回目でやらかしてもらったアイツだ。
実際のところ、サリファが漏らして、そのショックで仕事辞められたりすると俺が困る。
なので、ループが始まってからは、いつ成功してもいいように、追い込みはやめたんだが……。
まぁ、こっからは、ちょっと見てってくれよ。
俺がロゼッタ様を追い込む裏でやっていた、もう一つの戦いの軌跡を――