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スクールジャック部!  作者: 笹団子
3/4

二度目の冷や汗

「これからぁ!この学校を乗っ取りまぁーす‼︎」

まぁーす、まぁーす、まぁーす、と、若干掠れ気味の声が、頭の中に三度ほどエコーした。

きぃんとハウリング音が鳴り響き、グラウンドの木にとまっていたスズメたちが、一気に飛び立った。

放送が地面に轟いて、体が揺れた気がした。笠原たちも動けずにいる。

え。 え? え!? 待って。乗っ取るってどういうこと?

すると、学校の中から、きゃあと悲鳴が聞こえてきた。

まだ学校に残って部活をしていた生徒か、はたまた女の先生か。とにかく笠原たちは今の放送で頭が冷やされたようだ。よかった。

怒りがおさまった彼らが次に浮かんだのは焦り。只事ではない雰囲気に、顔色を変えて走って行く。

僕も何が起きたのか気になったので、笠原たちの後を追った。約三メートルほど距離をとって。

声のした方に走っていくと、驚きの光景が目に入ってきた。たった数分で、ほとんどの先生と生徒が紐で拘束されていた。ガタイのいい体育の先生も、しっかり縛り上げてある。

とりあえず、涙目になりながら助けを求めてくる女子生徒の拘束を解いてやると、震えながら、

「お、同い年ぐらいの人だった…」と言った。

つまり、子供?子供がこの一瞬でこんなに大勢の人を捕まえたのか?

そもそも、なんで放送室に入れたんだ?放送委員か担当の先生以外、鍵を持っていないはずなのに。

とにかく、ここにいちゃダメだ。

助けを呼ぼうにも、あいにくうちの学校はスマホ禁止だ。内緒で持ってきてるやつもいるが、大半はきちんとルールを守っている。持ち物検査での没収が怖いからだろう。

そうだ。監視カメラ。僕の学校は、校内にいくつか監視カメラが設置してある。そのせいで、毎回いじめられるのはグラウンドか、トイレなのだけれど。

それは置いといて、学校にある監視カメラを犯人に見つけられたら、犯人を特定することは難しくなる。

見つけられる前に、それを持って避難しよう。僕は、知っている限りの監視カメラの設置場所に急いだ。

でも、なかった。どこにもなかった。

よく見ると、監視カメラを外された跡がある。嘘だろ。そんなことまで対策してあるのか。

どうしよう。このままだと、誰か殺されるかも。

とにかく逃げようと思った僕は、校門まで全速力で走った。後ろが不安で仕方なかった。

肩で息をしながら校門の取手に手をかける。取手を下に押し込んだ。瞬間、ガチン、と止まる。

嫌な予感はしたが、パニック状態の僕は、きっと何か悪い夢でも見ているんだ、と自分に言い聞かせ、もう一度開けようと試みる。

でも、何度やっても結果は同じだった。

開かない。逃げられない。行動が読まれている。これは、完全犯罪!

それでも僕は諦めずに、警察に電話をしようと、職員室に向かった。でも、電話が置いてあるはずの机の上は、まっさらだった。電話が、ない。連絡手段が、ない。

防犯ブザーはどうか。そう祈りながら、教室に取り付けられた防犯ブザーを鳴らそうと、職員室とは逆方向に走った。

防犯ブザーも、ない。どの教室にも。

この短時間で全ての教室の防犯ブザーを外した⁉︎そんなことができるのか。じゃあ犯人は単独じゃないのか。

そして、他にも逃げ道がないか散々校内を走り回ったが、結局無駄に体力を消耗しただけだった。

どうしよう。もう助かる手段がない。

さっき笠原たちに襲われかけたのも相当怖かったけど、それ以上の冷や汗が出た。

僕はその場に立ちすくんだ。

日が落ちてきて、オレンジ色の光と紺色の光が混ざり合った廊下で、一人ぽつんと立っていた。

もう、家に帰れないかもしれない。そう考えた瞬間、どくりと心臓が鳴った。

ああ、せっかくコンビニの十個限定、プレミアムメロンパン、ゲットしたのに。こんなことになるなら、昨日食べとけばよかった。

ゲームも、ほったらかしにしてきちゃった。あともうちょっとで、ラスボスクリアできそうだったのになぁ。

頭の中に、やり残したことがふわふわと浮かんできた。

僕はどこかに隠れるでもなく、壁に寄りかかって考え事をした。もう半分諦めていた。

連絡もできない。門も開かない。ブザーもならない。証拠もない。終わった。完全に終わった。ゲームオーバーだ。

犯人特定は不可能に近い。僕らは全員殺されるのだ。一緒に死ぬのがいじめっ子とだなんて、神様はとことん僕が嫌いなんだ。こうなったら、最後まで神様に暴言を吐いて死んでやる。僕が神様への怒りに燃えていると、誰かの声が聞こえてきた。

「やー、今日はなかなか手強かったなぁ」

「もー!海くんが体育の先生を捕まえ損ねたからですよ!」

「ごめんって、たまにはミスっちゃうこともあるっしょ」

「危なかったですからね!」

僕は息をのんだ。叫び出しそうになる口を必死に押さえて、声の主を見た。

僕と同い年くらいの男女二人が、なんとも平和そうに歩いている。おかしい。生徒はみんな捕まっているはず。

私服だから、ここの生徒じゃない。つまりは、この人たちが犯人。

捕まる。やばい。隠れなきゃ。焦りを感じながら、僕は二人の会話に耳をすます。

「それにしても、いじめられてた男子って誰なんだろ?」

「そうですね、部長がくれた特徴リストに当てはまる子はいなかったですね」

「だろー、だから縛り上げた人の中にはいなかったと思うんだよー。多分」

「てか、大半は吹奏楽部の女子ばっかだったし」

「うーん、どっかに隠れてるんじゃないですか?私も最初は怖かったですよ」

「まぁなー、ちょっと荒っぽい手を使うからなぁ、調月は」

「いいじゃないですか。いじめっ子も、いじめを隠蔽する先生も、私たちがまとめて成敗します!」

「お前、時々そういうとこあるよな‥‥」

げんなりした様子で、男の子が隣の女の子を見る。何の話をしているのか、僕には理解できなかった。

でも、不思議と恐怖が和らいできていた。

すると、角からもう二人が曲がってきた。意外と歩くのが速かった。廊下の曲がり角から二人を見ていた僕は、二人とばっちり目があった。




こんにちは。笹団子です。

まず、前回の投稿から、だいぶ間が空いてしまったこと、誠に申し訳ありません。

いや別に、新しく始めたゲームが面白くてやめられなかったとか、そんな理由じゃないですよ?

ええ。はい。ちょっと呼吸するのに忙しかっただけです。

さぁて、だんだんと新キャラも出てきます。そのうち何かしらで裏設定とか、人物設定とかも公表していこうと思うので、これからもどうぞよろしくお願い致します。

次の話も読んでいただけると嬉しいです。

ではでは皆さん、体調にお気をつけて。


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