インヴェンション第8番
空っぽの世界にいたのだと、今、思う。
いっぱい、持ちきれないほどの、
たくさんのものを抱えていたのに。
何もかも、気付いたら、去っていって。
なあんにも無くなっていた。
大事に、大事にしていたはずのものたちは、
手の中で砕けてしまって、
さらさら光って、砂みたいに風にのって溶けていった。
私は諦めて、
そこで初めて空をみた。
ものすごく、高い空を。
気付かなかった。
手放して、初めて。
光はずっと、降り注いでいたのに。
どこまでも、登っていける。
高く、高く
ずうっと遠くまで。
どこまでも飛べる。
手を放したからこそ、
地平線の向こうまで。
きっと、この先も、
怖がりな自分かもしれない。
不安なことも、あるかもしれない。
だけど、
光を、もう見失わない。
子供みたいに、
自由になって、
やっと君と走り出せる。