刎頸の慚愧
蒼白き疵を晒す混濁の天穹
鳴神は鎮まらぬ罰を翳し
垂れ籠めた霧が穢れたる血潮に染む
「はかなくなりてなほ口惜しう思ひたれば、其の骸、黄泉塚の如く為りて、安達の婆ぞ嗤ひける。」
渡る船無き此岸の河原
垂れ籠めた霧は罪避りし魂を食み
篠突く雨で身削ぐも手遅れ
「をとこ喜べ、をとめ喜べ、然れば鬼娘も慶び給ふ。稚子も産女も迎えて給る。」
奥津城に積む曝れ頭
抉じ開けた眼窩は隠世へ続く夜道
爛熟の果てに柘榴は弾け
背を穿つ掌へ降り落つる
斃れゆく彼は誰の残月
述懐は児戯の石積みに似て
廓外に立つ匿れたる人の面差し
燻る煙管を焼香として
崖下へ棄てし形見の恨み
嘆き祷れど赦されぬ
生き憂し辻を逃げ失せた
野辺の煙は容易に昇る
灰燼に帰せど遺されし怨讐
流れて閻魔の御膝下