第8死 ~そうだ!バイトをしよう~
武器を作ることで二度も死んだヒデオ。
さすがに武器を作るのはあきらめたようだが・・・
武器を作ろうとして二度も自爆。
我ながらあほだよなぁ。
こんなことではだめだ・・・。
でも、武器はやっぱりあった方がいいよなぁ・・・。
斧というチョイスがいけなかった。
しかも石をくっつけただけだし。
あれは斧ってかハンマーだな。
撲殺狙いみたいなもんだし。。
やっぱり剣だよ剣。
切ればいいんだから。
今後いろんな役にも立つだろうし。
うーん・・・。
元のいた世界での常識で考えてみよう。
武器屋はある。
しかしお金がない。
お金がないなら・・・・
そうだ!!バイトをしよう!!
働けばいいだけだ!
某映画のように「ここで働かせてください!!」
ってしつこく言えば何とかなるんじゃないかな!?
よしよし。
まっとうに働いてお金を稼ぎ、それで武器を買おう。
そこまで歩きながら考えて教会にちょうどたどり着いた。
「神父さん!ただいま戻りました。」
「あ・・・おかえりなさい。残念でしたね。」
「そうですね・・・もう武器を作るのはやめます!」
「それがいいかもしれませんね・・。二回も失敗しましたからね・・。」
「それで、働こうと思うんです。」
「え?」
「働いてお金を稼いで武器を買おうということです。」
「あぁ・・・そういうことですか。」
「この教会で働くことはできますか・・?」
「うーん・・・。すみません・・・・。
この教会は残念ながらお金を渡せるような仕事がないんです・・。」
「そうですか・・・。わかりました。
町で探してみますね。」
「すみません。頑張ってくださいね。」
さて、どんなところで働こうかな。
アルバイト情報誌・・・なんてあるわけないか。
そもそもあんまりこの町について知らなかったなぁ。
食べ物も神父さんにいただいているものだけだし、
城と武器屋があるぐらいしか知らないなぁ。
城の兵士になるには弱すぎるから、武器屋に声をかけてみようかな。
武器屋で働けば武器を買う時に従業員価格で安くなるかも!?
これが一番よさそう!
確か武器屋は一人でやってたし、働き口あるかもね。
結構いい考えだな!
そう決めて武器屋に向かう。
ノックをして武器屋に入る。
「すみません~・・・」
「いらっしゃい!!何を買うかい?」
ひげ面のいかにも武器屋って人が威勢よく話しかけてくる。
ちょっと怖い・・・かも。
怒らせてしまって武器屋に殺される!?なんてならないようにせねば・・・。
「あの~今日は買うために来たのではなく、働かせてもらえないか聞きに来ました。」
「え?働くだって?」
「はい!ここで働かせてください!」
決め台詞をはなってみた!
「いや・・・俺だけで十分手は足りてるよ。」
「そこをなんとか!掃除でも武器を磨くのでも何でもやりますから!!」
「うーん・・・。必要はないんだが・・・。」
「呼び込みもします!少しでもこの武器屋のためになることをしますので!!」
「とはいってもなぁ・・・。」
さすがに簡単にはいかないか。
引くタイミングなど間違えないと殺される展開があるかもしれない・。。。
「給料など安くてもいいので、少しずつでも貯めていきたいので・・・。」
「かなり安くてもいいのかい?」
お?意外にのってきたかも・・・。
「もちろんです!!」
「ちょっと考えてみるな・・・。明日にでもまた来てくれや!」
手ごたえありだなぁ。
良かった!
安いってどのぐらいなんだろ。
確かひのきの棒が100クルだったからなぁ。
ただの棒と考えるとただ同然だけど、ちょっと(いや、かなり)質がいいものだとして・・・
日本円で3000円ぐらいと仮定すると、
日給200クルあれば十分ぐらいなのかなぁ。
とにかく少しでも稼げればいいし。
鉄の剣とかいくらか調べてくればよかった。
まぁ、明日にわかるからいっか・・・。
神父さんにいろいろと話そうと思ったが、ちょうどその日は礼拝だとかで神父さんはいなかった。
・・・・・・そして次の日。
扉をノックして武器屋に入る。
「すみません~!」
「おう!早いな!」
「決めたぜ!雇ってやるよ!給料安くてもいいなら!」
「ありがとうございます!!・・・ちなみにいくらでしょうか?」
「少なくてすまねえが、10時から18時までで日給500クルだ!」
お!?想定より結構高いじゃん!!よかった!!
「ありがとうございます!それで大丈夫です!」
「よかったよかった!早速今日から働いてくれ!」
「よろしくお願いします!」
「びしびし働かせるからそのつもりで!」
「はい!」
無事に働けることになった!
もし、ひのきの棒100クルが3000円とすると、
5倍だから、1万5000円。
日給1万5000円なら全然悪くない!時給2000円弱。
前の会社なんて…残業代でないことを計算にいれたら時給やばかったもんな・・。
1000円切ってたかも・・・。
使えない社員だったからかもしれないけど・・。
おっと!!!暗い話を思い出してしまった!
この世界ではそんな惨めな思いはしないようにするぞ!!
「そういえば、鉄の剣っていくらですか?」
「ん?はがねの剣があるが、20000クルだよ。」
「え!?思ってたより高い・・・」
「おいおい!何価格に文句を言ってんだよ。武器の値段は世界で共通なんだ。
安く売っちゃいけないんだよ。」
「そうなんですか・・・。」
はがねの剣を買うには40日働かなきゃいけないのか・・・。
ちょっと計算が違ったか‥。
「ひのきの棒って安いんですね。。」
「ん?まぁそのへんにいくらでも落ちてるからな。買うやつを見たことはないな。
はっはっは!」
何が面白いのか今一つわからなかったが、店主は笑っていた。
つられてヒデオもひきつった乾いた笑いをするしかなかった。
「ははは・・・。ちなみに、銅のつるぎはいくらですか?」
「おお!いろんな店の品物の値段を覚えようってことか?勉強熱心だな!感心感心!
銅の剣は2700クルだよ。」
これなら一週間働けば手に入るということか。
まずはここが目標だな。
よし!頑張るぞ!
「言うの忘れてたな!俺はムーアだ。よろしく!」
「ヒデオです。よろしくお願いします!」
バイト初日はたいして大きな仕事はなかった。
ムーアさん一人ではなかなか手が回らないであろうすみっこの掃除などを丁寧にやった。
結構お客さんが来るのには驚いた。
武器の修理もやっているようで、兵士からの修理依頼が多い。
修理などはムーアさんがするしかないので、その間の店番などが主な役目だった。
「おーし!今日はもういいぞ~!」
「お疲れさまでした!」
「ほら!今日の給料な!」
「ありがとうございます!」
よし!無事に一歩を踏み出した!!
教会に着いたら神父さんに報告しよう。
「神父さん。いま帰りました。」
「おかえりなさい。どうでした?」
「無事に働くことができました!」
「よかったですね!ちなみに、お給料はどのぐらいでしたか?」
「一日500クルです。」
「え!?」
「え!?」
その反応は・・・・。もしや・・・・。
「500クルですか?」
「はい。。。もしかして、相当少ない・・・ですか?」
「うーん・・・・。さすがに相当少ないですね。。
普通は時給がそのぐらいかなと思います。」
「え!?そんなに!?」
「はい。。」
「うーん・・。だから相当安いってムーアさんも言っていたのか。。」
「ムーアの武器屋にしたのですね。」
「はい。ダメ…でしたかね・・・?
「いや、ムーアはあんな顔ですが、いいやつですよ。
多分見るに見かねて少ない給料でいいなら雇うと言ったのでしょう。」
「そうですか・・・・。まぁ、確かに何ももらえないよりはいいですし・・・。」
「それにしても低いですが。。ムーアに会ったら私からもう少し上げろといいましょうか?」
「いや!せっかく雇ってもらったわけですし、
神父さんとムーアさんが気まずくなってもいけないですし、
大丈夫です!この給料で頑張ります!」
「わかりました。」
「本当は教会にも少しお金を入れようと思っていたのですが・・・。」
「それは気にしないでください。教会は善意でできているようなものです。
貧しい人を助け、余裕のある方から寄付をいただいていますから。」
「ありがとうございます。(貧しい人・・・・か。)」
そんなことでかなり安いことは分かったが、働けなければ収入ゼロ。
神父さんがちょうど礼拝でいなかったときに相場観を聞いておけばよかったかな・・。
でもしょうがない!
働かせてもらえる、感謝こそすれ文句など言うことはないな。
よし!明日からもがんばるぞ!
考えてみれば今までで一番この世界で長生きをしている!!!
どんどん記録更新していくのは間違いないだろう!
もしかして、給料の低さに文句を言ったら、ムーアさんを怒らせてしまって殺されるとかそういう流れだったのかも!?
そんなことにはならないぞ!
俺はもう死なない!!
そう思いながら眠りについた。
そして次の日。
「いってきます。」
「いってらっしゃい。」
神父さんと爽やかな挨拶をして武器屋へと急ぐ。
別に急がなくてもいいんだろうけど、性分ってところかな。
武器屋についてノックする。
「ヒデオです~!」
「おう!入れ~!」
「おはようございます!今日もよろしくお願いします!」
「おし!今日も頑張ってくれい!」
「はい!」
今日も基本的には掃除をしていく。
部屋の隅っこのほうなどやはり埃があるんだよなぁ。
埃はどっからわくんだろう・・・。
そんなことが頭をよぎるが、手は止めない。
・・・・・床はきれいになったといえるだろう。
次は何をしようかな。
基本的には、店番やってくれなど頼まれない限りは自分で仕事を探してやっている。
無理におしかけたわけだし。
今日は修理の依頼もまだなく、俺が店番をすることはまだなさそうだ。
何をしようかな・・・・
武器や防具は壁にかかってディスプレイされている。
結構いろいろな種類がある。
斧・槍・剣・弓。
銃とかはないようだ。
盾や兜や鎧もある。
ただ、あんまり売れていないのかよく見ると埃をかぶっているものもあるな・・。
売り物だからこれらもきれいにしようかな。
「ムーアさん。壁にかかっているものもきれいに拭いたりしていいですか?」
「おう!いいぞ~!あんまりそこまで手が回らなくてな!助かるよ!」
よし。人に喜んでもらえるのは嬉しいことだね。
頑張るぜ~!
まずは下に置いてある鎧から・・・。
鎧の肩らへんにやはり埃があるな。
他の部分も拭くだけできれいになるな!!
さっきより買いたくなる!
他の物もやろう・・・!
盾をやって・・・。
よし。次は武器系に行くか。
槍とかきれいだなぁ。
次は斧を拭こう。
斧って本来は木を切ったりするもので、結構鋭利な感じがするな。
やっぱり俺が作ったのは鈍器だな。
次は剣か。
銅の剣これをあと少しで買おう・・・。
はがねの剣・・切れ味よさそうだな・・・
そう思いながら持ち手の部分を拭いていた。
すると・・・・。
「!!!」
壁にかかっていたのだが、持ち手の部分を拭いたことで、ちょっと上に押されるような形になり、
刃の部分を止めていた部分が外れた。
刃の部分は重い。・・・・・・つまり、落ちてくる。
やばい!!!と思ったのも束の間、
はがねの剣の刃が俺の右肩から左足までを切りつける形になった!
「ぐはっっっ!!!!!」
「ヒデオ!どうした!?おい!!!おい!!!!!!」
ムーアさんの声がだんだん遠くなる・・・。
まさか死んだことでムーアさんに怒られるって結末か・・・・。
ムーアさんに殺されるわけじゃないけどやっぱり死ぬのか!!
無念・・・・。パタリ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ヒデオ!お前はホントに見ててあきないやつじゃのう!
王様の声で目が覚める。
「私は・・・。やはり死んだのですね・・・。」
「うむ。体が結構切れてたぞ!はっはっは!」
何が面白いのか・・・・。。。。
ちょっといらつきながらも生き返らせてくれたことはありがたい。
「それでは失礼します・・・。」
「まて。お前には武器など似合わぬ。」
「え?」
「武器を得ようとするのをやめよ。と言っているのじゃ。」
「・・・そ・・・それはどういうこと・・・でしょうか?
「お前は異世界からの人間。
それがこの世界の武器を使い、普通に敵を倒すなど何が面白いのか。」
「お・・面白いというかなんというか・・。」
「この世界の住人が思いもつかないようなことをやることがお主の役目である。
普通に武器を持ち戦うなら、そなたより強い兵士がごまんといるのでな。」
「たしかに・・・・・。」
「わかったなら下がるがよい。」
確かに、普通に武器を使って倒したところで、意味はない・・か。
この世界にないもの。
それを生み出すのが俺の使命。。。
よし!わかったぞ!
かなり頭を使って考えなきゃな・・・。
そう思いながら城を後にするのだった。
・・・・武器屋のムーアさんに謝っとかないとな・・。
新しい発想が何よりも必要。
自分の存在意義に気づいたようです。