第4死 ~仲間にしたそうな目でスライムを見てみる~
モンスターを仲間にしたいって誰でも思いますよね。
さて、成功するのか!?
今度は死なずに済むのかな!?
とぼとぼと歩き教会の前についたヒデオ。
何んとなく気まずい雰囲気でドアを開ける。
「あのぅ・・・。」
「あ!!!すみませんでしたあああああああ!!!!」
神父はスライディングフライング土下座(?)をしてきた!
「本当に申し訳ない!!神に仕える身でありながら・・・・
そんなに力を入れたわけじゃなかったのですが・・・・。あ!
いえいえ・・。あの・・・そんなに簡単に死んでしまうとは思わず・・・あ!
とにかくすみませんでした。。。」
神父は何を言ってもヒデオを貶める言葉しか言えないような気がした・・・。
ヒデオは神父のそんな様子に恐縮した。
「こちらこそすみません。。簡単に死んでしまって。。。」
何とも言えない表情をしている二人。
しかし、そのままでいるわけにもいかず、ヒデオは言った。
「本当にすみません。私の方は気にしていないので、もうこの話はやめにしましょう・・・。」
「はい・・・。」
「これからも私は神父さんのところにお世話になるしかないわけですし、
王様も生き返らせてくれたので本当に気にしないでいいですからね~!」
神父もうなずき、気を取り直したようだ。
ヒデオは考えていた作戦を伝えてみた。
「あの・・・モンスターを仲間にするっていうことを考えてみたのですが・・・。」
神父は驚いて言った。
「モンスターを仲間に!?それは考えたこともなかったです・・・。
今まで誰もモンスターを仲間にしたのを見たことはありません。。
やめておいた方がいいと思います。」
「仲間にしようとチャレンジした人はいるのですか?」
「いないと思います・・・。そんな発想はありませんでしたから・・・。
その辺の草とか石ころを仲間にしようと思わないのと同じですね・・・。
考えたこともないです。」
「もしかしたら、それが異世界からここに来た私の使命みたいなものなのかも!?
・・・・・つまり、この世界では全く考えもつかないような発想をして、
この世界を救うということです。」
神父は考えた末にうなずいた。
「確かに、異世界から来たあなたにしか思いつかないことでしょうね・・・・。」
「そうですよね!じゃあその方向で作戦を立てたいと思います!」
魔物使いみたいな職業はこちらにはない模様。
もしかしたら、その才能が俺にはあって、伝説となる・・・のかも!?
よっし!気合入れて考えよう!
まず・・・知能とかはあるのかな?
文字とか読めるのか?
スライムは見た目は原子生物?単細胞生物?アメーバみたいなかんじだけど・・・。
アメーバを仲間にするにはどうすればいいかを考えればいいのかな・・・。
うーん・・。正直思いつかん!
でも、基本は「餌付け」かな。
餌を与えて味方に。
桃太郎のきび団子も似たようなもんだろうし。
「あの、スライムって何を食べてます?」
「うーん・・。わからないですね・・・。見かけ次第倒しているので・・・。」
もしかしたら、人を襲うのも食べるからかな?
そうすると餌は人間?
うーん。。。
草とかはその辺に生えているから与えてもしょうがないし・・・。
人間の食事を少し持っていって与えてみるか・・・・。
よし。まずは、餌付け作戦。
これだけじゃ、この作戦が失敗するとやばいから、他にも考えないとなぁ‥。
ゲームとかでは、倒した後に、力を認めて仲間になるってパターンがあるなぁ。
殺さない程度に倒して仲間にする・・・・・ってこっちが死ぬ!!
これは無理だなぁ。
知能はあまり高くなくても、絵とかで伝えることはできるかな?
スケッチブックみたいなものに、スライムと俺が仲良くしている風の絵を描いて、
それを見せて敵意がないことを伝える・・・・。
これもいいかも!
スライムもこちらのいる場所がわかるってことは目はあるんだろうから、いいかも!
紙のようなものと描くものあるかなぁ・・・。
「あの、こちらが敵意がないということを示す絵を描いて見せてみようと思うのですが・・・。」
「本当に面白い発想をしますね!紙とペンはお貸ししますね。」
よし。このスケッチブック作戦が2つめの作戦だな。
何かの本で宇宙船は宇宙人に会った時用にそういう絵を用意してるって見たような気がするし。
案外いいかもしれないな!
2つだけじゃ物足りないなぁ・・。
何でも3がいいからなぁ。
三本の矢の話とかね。一本や二本じゃ折れるけど三本なら折れない!みたいな。
あんま関係ないか。
あと一つは考えたいなぁ‥。
ペットとかとはどうやって仲良くなるかな・・・・。
犬でも猫でも・・・・なでる!!
そうか!なでてみよう!!!
戦う意思がないことがきっと伝わるだろうし。
第三の作戦なでる作戦だ!
よし!決めた!
まず、遠くから人間の食糧を色々と投げてみて、様子をうかがう。
何か興味を持つ物があったらそれを餌にしよう。
何にも興味を持たなかったら作戦2へ移行!
作戦2は少し近寄って絵を見せる。
スライムと仲良くしている様子の絵を。
何枚かあった方がいいかな。3枚ぐらいか。
1枚は、スライムと人間が仲良く昼寝してるっぽい絵。
2枚目は、スライムが鬼みたいなものに襲われているのを助けている絵。
3枚目は、スライムと人間が一緒に鬼みたいなものを攻撃している絵。
我ながらいいアイディア!
それでも反応がなかったら作戦3!
近寄ってなでる!
とにかくなでる!
相手の攻撃をくらわないようにしなきゃなぁ・・・。
よし!いけそうな気がする!!!
「神父さん!決めました!
餌付け・絵見せ・なでまくる作戦です!」
神父は微妙な笑顔を見せた。
「が…頑張ってみてください。
道具はここにおいておくので、使ってくださいね。
と言って紙などを置いてくれた。
「ありがとうございます!!!!」
そこから絵の作成にとりかかった。
うーん・・。絵はあまり得意ではないけど。
まぁ、それなりに意味が分かるように描ければいいしね。
あーでもないこーでもないと一人で悪戦苦闘しながらも何んとか3枚の絵を描き上げた。
よし。
あとは食料をもって…。
神父さんはたくさんの食糧を用意してくれていた。
野菜、果物、パン、牛乳。
あまり裕福ではないと言っていたのにこんなに用意してくれたのは
きっと俺を殺した罪悪感からかな・・。
準備万端!いざ出発!
町の外に出てあたりを見回す。遠くの方にちょうどスライム発見!
まだこちらには気づいていないようだ。
もうちょっと近づいて・・・。食材をスライムの近くに、そうっと投げてみた。
思いっきり投げたら投石のように敵対してると思われるかもしれないしね。
野菜・・・何種類もあるけど、どんどん投げる。
果物も同じように。
パンも。
牛乳は袋に入れてあるものを投げた。封はしてないから、まき散らしながら飛んでいくだろう。
そのあとをスライムが通った時に何らかの反応があるかな。
全部投げ終えて様子を見る。
結構近くに飛んで行ったものもある。(トマトみたいな野菜とか)
スライムは見向きもしていない。
嗅覚みたいなものはないのかなぁ?
まぁ、人間界の物が食料だったらなかなか手に入らないからスライム飢え死にしちゃうもんなぁ‥。
水ぐらいしか必要ないのかもなぁ‥。
しょうがない!
作戦2へ移行だっっっ!!!!!
紙を持ちながら近づいていく。
3枚ともうまく持って全部が見えるようにしている。
1枚だけじゃ意味わからないかもしれないし。
スライムはこちらに気づいたようで、ぬめぬめ近寄ってくる。
そこでこちらからは近づくのをやめて待つことにした。
牛乳がこぼれてるゾーンも通るから、何か反応あるかな?
こぼれてる牛乳がなくなるとかね。
という淡い期待を描いていたが、牛乳ゾーン来ても何の変化もなかった。
牛乳を少し弾いたりしながら進んでいる。
身体は防水加工(?)みたいに弾くようだ。
もしかしたら、必要な時だけ取り入れるのかもしれないな。
相手がこちらに気づいているということは、この紙も見えているはず。
待ちながらスライムの様子をうかがう。
今のところそのまま進んでくるなぁ・・・。
まだ待とう・・・・・。
あと5mほど。
敵意はないぞ!と一応口でも言ってみる。
「スライム~!仲間になろう!」
「倒すことはないから!」
あと3mほど。。
特に反応はない。
作戦3への移行も考えねばな・・・。
2m。
スライムが止まった。
「お!?わかってくれたのか?仲間になってくれ!」
そう話しかけるもやはり何も反応はない。
しかし、止まっている。
何か効果があるのか!?
止まっているなら、ここでなでる作戦でたたみかければ!?
よっし!!!!
紙を置いて近づく。
スライムは攻撃してこない。
もしかして!?
そうっと近づき、スライムに触れてみる。
やわらかい。
もしかしたら、警戒心を解いている!?
そのままなでていると、いきなり硬くなった。
やばい!?これは攻撃が来る!
相手の体当たり攻撃が来るが、なでていて硬くなったのを早めに察知できたのでよけることができた!
「あぶねぇ~!」
ここでこちらが攻撃しても勝てることはない。
今まで勝てなかったから。
じゃあひたすらなでるしかない!!!
すきを見てなでる!もう一度すきを見てなでる!
はたから見れば何やってるんだろう?って思うだろうな。
10回ぐらいなでて相手の攻撃をかわしまくっていたのだが、
疲れもあり、こちらの動きが遅くなっているのがわかった。
そして、避けようと後ろに下がったその時、
「あ!!!」
少しさっきの牛乳でもあったのだろうか、足が滑って転んでしまった。
やばいなこれは。うん。やばい。
そう思ったその時、スライムが固くなった音が聞こえて、
強烈な体当たりをくらってしまい意識を失ったのであった・・・・・。
「ヒデオ!なかなかおもしろいことを考えたな!」
王様の声でまた目が覚めた。
「モンスターを仲間にしようなどと考えたヤツは今まで誰もいなかったわ!
モンスターの生態などわかっていないこともまだ多い。
これから少し研究してみることにしよう。
そなたと違い他の人はスライムを捕獲することなどたやすいからな!
研究して仲間にする方法なども調べてみよう。
その方法が見つかるかはわからぬが、
新しい考えを我が王国にもたらした。
そなたの初めての成果と言えるだろう!!!」
王様が拍手をした。周りの人も拍手をしている。
少し照れくさい。
しかし、初めて役に立ったようで嬉しかった。
「ありがとうございます・・!役に立てたのなら嬉しいです。」
「うむ。引き続き期待しておるぞ。」
褒美とかはないのか・・・。なんて少し思ってしまったが、
まぁ、役に立ったならよしとしよう・・・・。
とにかく、死にながらも何かしら新しいことをしていけばいいんだな。
方向性が見えてきたぞ・・・。
「では、教会で休むがよい。」
城を出るときに、兵士の一人が話しかけてきた。
「王様は滅多に人のことをほめないが、そなたのことをよく話している。
ほめてるというわけでもないが、これは珍しいことだ。
引き続き頑張ってくれよ。」
「そうなんですね・・・。ありがとうございます。頑張ってみます。」
王様が認めてくれたのか?まだそんなレベルじゃないか。
でも、珍しいことならよかったかな。
いや・・・笑われているだけかな。。
おもしろいから!とか言ってたしな。。
以前王様に言われた、
「おもしろいから生き返らせている」
という言葉を思い出し、
何とも言えない少し暗い気持ちになりながら城を後にしたのであった。
その後の研究で、
スライムは少量の水のみを栄養源としているもよう。
ちなみに、目はないです。
見えてるのではなく、全身で感じ取っているということかな。
暖かさというか、ソナーのように空気の振動というか・・・。
人間でいえば触確と聴覚はあるようなものかな。
それをプルプルの肌に感じて相手との距離などをはかっています。
知能は低く、仲間にするのは不可能・・・・だと思います。
ということが分かったらしい・・・。