第17死 ~鳥への罠とは・・・?~
ソウと神父との争いに巻き込まれ死んでしまったヒデオ。
ソウに殴られそうになった神父をかばい殺されてしまうという結果に・・。
ソウはヒデオを殺そうと思ったわけではないのですが・・・。
前回も殺されてるから結果的には二連続!
「ヒデオよ!わしも夜は休みたいのだが!」
やや(どころじゃないかも)機嫌が悪い王様の声で目が覚める。
「しかもそなたがここを出てからあまり時間がたっていないぞ。
早すぎる!!」
「すみません・・・。」
「しかし、リストもソウもまだまだじゃのぅ。」
「はぁ・・・。」
「心をコントロールすることができないのは未熟者じゃ!!
そなたの方がその点は優れておる!」
なぜか相対的に俺の株が上がったようで少し嬉しく思っていると、
ソウと神父が慌てて城に入ってきた。
「夜分にすみません王様・・・。」
神父の普段は優しそうにたれている眼がもっと垂れていて、
申し訳ないという気持ちを全力で顔で表していた。
「王様・・・そしてヒデオ・・・!すまなかった!!」
「あぁ・・・俺は生き返ることができたからいいんだが・・・。」
「リスト!それにソウ!よく聞きたまへ。」
「はっ!」
「今後争うことは許さぬ!」
ソウよ!お主は両親が死んだあと
魂がどこかで幸せになってくれればいいと考えていたであろう!」
「それは死後も苦しむよりは・・・。幸せになってほしいと・・・。」
「その考えこそが神を信じる心とつながっておるのだ!!」
「はっ!」
「リストよ!お主だって生き物の命を頂いて感謝して食べるであろう!
それは猟士達が苦労して取ってきたものではないか!
感謝の気持ちを持ってもいいだろう!!」
「仰せの通りにございます・・・・。」
「そなたたちは同じ我が王国にとって大切な人間だ。
争わず、お互いを尊重し、ともにこの王国のためにつくしてくれ。」
「はい。王様・・申し訳ありませんでした。」
「っは!王様すみませんでした!」
「その言葉はわしに言う言葉ではないな。
お互いに向き合って言うがよいぞ。」
神父とソウは向き合った。
「・・・申し訳ありません。ひどい言葉を言ってしまいました。。」
「こちらこそすまんかったな・・・・。」
「うむ。まぁわだかまりのようなものはあるにせよ、
これは大きな一歩になるであろう。
下がって休むがよい。」
「「「はい!」」」
3人は城を出て教会へ歩き出す。
「ヒデオ・・すまなかったな。。」
「ヒデオさん。私のために・・・すみません。。。」
「いいんですよ!二人の仲が少しでも良くなったのなら俺としては嬉しいです。」
教会につき、すぐに寝ることになった。
幸いなことに部屋は空いているのでよかった。
「じゃあなヒデオ!明日は頼むぜ!」
「わかった!」
ヒデオも自分の部屋に戻った。
明日にはブラックバードと対決になるか・・・。
飛んでいる敵をどうやって罠に・・・・。。
まず落とし穴系は無理だろう。
飛ぶしな。。
上からドッスン系も動きが早いと難しいか・・・?
いや待てよ。
かごみたいなものを片方だけ棒か何かで浮かせておいて、
かごの中に米とか撒いといて、かごの中に鳥が来たら棒を倒すと、
かごの中に鳥を捕まえることができるって罠があったな!!
スズメとか小さめの鳥を捕まえてたな。
それを応用すれば・・・・・。
でも、餌は何がいいんだろう・・・?
うーん・・。あのブラックバード何を食べるのか?
そもそもある程度知能がありそうだから、ただ米を置いといただけでそこに来るとは思えないな・・・。
とすると・・・・ああするしかないのか・・・!?
うーん・・・・。
そうするしかないか・・・・。
餌は俺!!!
俺は多分死ぬことになるが、それでもブラックバードを捕まえることはできるんじゃないか。
俺が死んでもソウがブラックバードをしとめることができる!!
これでいくしかないかな・・・・・。
よし。
明日ソウに提案しよう。
こっちの世界にはこの罠はないかもしれないから、
わかりやすいように模型でも作っておくか・・・。
簡単な箱とそれを支える棒とその棒に紐をつけて模型は完成!
完成したとたんに安心して眠気に襲われた。。。
翌朝。
「おはようございます。ヒデオさん。」
「おはようございます。神父さん。」
相変わらずの穏やかな顔で神父さんは挨拶してくれた。
「おっす!ヒデオ!」
「おはよう!ソウ!」
ソウも昨日の様子からは考えられないくらいにいい表情をしている。
「おはようございます。」
神父がソウにぎこちなく言った。
「ああ・・。おはよう。」
ソウもぎこちないが、王様にあそこまで言われた手前もう争うことはないだろう。
ヒデオは朝ご飯を食べながら模型を見せて今日の計画について話した。
「このような箱を作り、餌を置いておいて、
箱の中に獲物が入ったら紐を引けば・・・・」
パタン。
箱を支えている棒が取れて、箱が完全に置かれた状態になった。
「おお!面白い仕掛けだな!!!」
ソウは気に入ったようだ。
「なるほど・・・。しかしブラックバードを狙うのですよね・・・?」
「はい。」
「この中に入るとは思えませんが・・・・・。」
「確かにな!あいつは頭も悪くない。ゴブリンなんかよりはよっぽど頭いいぞ!」
「そこで・・・・餌というか囮を用意するのです。」
「「囮?」」
ソウと神父はあまりよくわかっていないようだ。
「ああ!ブラックバードは人を襲うんだよな。俺も襲われたし。
だから、俺がこの罠の中に入って待つ!」
「なにぃ!?」
「ソウ。お前はブラックバードがこの中に入ったら紐を引っ張り、
ブラックバードを生け捕りにするんだ!」
「お前・・・・死ぬぞ?」
「それは覚悟している・・・。生き返れるだろうから良いかなって。」
「生き返れるけどみすみす死なせるのはなぁ・・・・。」
ソウは二回連続でヒデオを殺してしまったからか、さすがにためらっている。
「私も反対です。。自分の命を犠牲にする方法では、王様も満足されないと思います。
「珍しく気が合ったな!」
二人が仲良くなるのは嬉しいが、結構いい方法だと思っていたので、がっかりする。
「うーん・・・。」
神父は優しくヒデオに言った。
「王様は弱くても勝つ方法を考えてほしいと思っておいでです。
死んでも勝つ!という方法じゃないはずですよ。」
「確かに・・・・。」
じゃあ計画を変えなきゃいけないか・・・・。
「そうですね・・・。私が囮になるのはやめます。。
なぁ、ソウ。ブラックバードって何を食べてんの?
その食べ物を使えばいけるかな?」
「難しいんじゃねぇかな・・・。ブラックバードは普通に強い鳥だから、
食料が足りなくて困ってるってことはないと思う。
その気になればゴブリンも食っちまうんじゃねぇかな。」
「そうか・・・。
やはりこの作戦じゃ難しいか…
ブラックバードは一筋縄ではいかないな。」
「ああ。簡単に倒せる奴じゃねぇ。
それにこの箱もブラックバードだったらよほどの強度がねぇと普通に切られて脱出しちまうぜ。」
「そんなに強いのか・・・。強度がある箱なんて作れねぇからな・・・。」
がっかりだが、この作戦は無理か・・・。
「とりあえず、現地に行って考えるか?」
「そうだな・・・。今良い考えは浮かばない・・・。」
「何もいいアドバイスなどできずにすみません・・・。
気を付けて行ってきてくださいね!」
「いってきます!」
そうして、町を出て森へ向かう。
あたりはまだまだ昼にもなっていないぐらいなので、
時間はまだたっぷりとありそうだ。
「ソウ。こんなことを聞くのは・・・あれなんだが、
お前の両親はどんな感じでやられたんだ?」
「ああ・・・・それはな・・・・。
飛んでいるヤツはほとんど見えないだろ。
だから、自分に攻撃してくるその一瞬に勝負をかけたんだよ。」
「結構難しいことしたんだな・・・。」
(無謀じゃないか!?と思ったが、言うと気を悪くするかもしれないと思いやんわりとした表現にしておいた)
「凡人ならむずいだろうな!!
うちの親父は結構な達人だったんだぜ!
同じようなブーメラン使いなんだが、命中・威力どっちもすごかった!
岩でも破壊してたぜ!」
「でもブラックバードには当たらなかったのか。」
「ああ。。そうなんだよ。奴はかなり速い。
まずはおふくろの方が狙われてな・・・・。
おふくろの方に投げるわけにはいかないだろ。
やられちまったおふくろの方に駆け寄ったときに親父もやられちまったんだ。。」
「そうなのか・・・。すまなかったな・・。つらい記憶を・・・。」
「ああ・・・。まぁ、敵を知らねえとしょうがねえからな。
俺が知ってる情報はどんどん出すぜ!」
「あれ・・・?ソウ。お前は襲われた時どうしていたんだ?
お前は襲われなかったのか?」
「ああ。俺は襲われてない。
その時の俺の実力じゃかなわねえと思ってずっと茫然としてたんだ・・。
あまりにも茫然としていて、戦意みたいなものが感じられなかったからかもしんねぇな?」
「そうか、木登りしている俺は狙ってきたけどな・・・。戦意はなかったんだが・・・。
動いてないと認識しないのかもな。。」
仮説はいろいろ出てくるが確証がない。
しかも、特に罠にいかせそうな情報がない。
もっとシンプルに考えるか・・・・!
「基本に戻って考えてみたいんだが・・・・、網はどうだろう?」
「虫取り網みたいなものか?」
「そりゃさすがに弱すぎる。この紐を格子状に組んで網を作るんだよ。」
そう言って太さ1cmほどの紐を見せる。
「ほう・・・考えたことなかったな・・・。」
「今まではどんな方法で他のモンスターだのけものだのを捕まえてたんだ?」
「ブーメランで一撃よ!!!」
そうか・・・逆にそれに絶対の自信があったらそれ以外考えないもんな・・・。
「じゃあ網をとりあえず作ろう。
それをどう使うかはまた作りながら考えよう・・・。」
「わかった!」
もう森の前まで来ていたので、そこで網作りを始めた。
しかし・・・・楽しい!!!
今まで一人で何もかもやっていたが、二人で考えられるのはこんなにも楽しいのか!!
ああでもないこうでもないと意見を言いながら目的に向かう。
うーん・・・。一人じゃないって素晴らしい!
そんなことを考えてソウを見ると、
ソウもなにやら表情が柔和な感じというか、
時折笑みを浮かべている。
きっと同じ気持ちなのかもしれない。
一人でするってのは自由だけど、やっぱ二人の方が楽しい!!
よし・・・・!網は完成!!!
2m×2mぐらいしかできなかったが、網が完成した。
太さ1cmの紐は想像以上に太く感じる。
スズメよけに田んぼにかけてた網なんて太さ1mmもなかったんじゃないか?
それに比べればこれは相当太い!
「なぁ、この紐はブラックバードは切れると思うか?」
ソウに聞いてみる。
「かなり太いな・・・。だが、勢いよくこれに飛んで来たら切れると思う。
逆にいうなら勢いがなければ切れないと思う。
何とかして勢いをなくせば・・・!」
よし!問題はどうやって勢いをなくすか・・・だな。
「うーん。やっぱり一つしか方法はないんじゃないか?」
ヒデオが意を決して言った。
「なんだ?」
ソウはわからないようだ。
「奴が攻撃し終わったところを狙うしかないと思うんだよ。
俺が囮になるしかないんじゃないか?」
「お前を死なせるわけにはいかねえって言ってるだろ!」
「でも、他に思いつかないからな・・・・。
いや、まてよ・・・?
人形っていうのはどうだろう?」
「人形?なんだそりゃ?」
「人の形をした物だよ!
それを人だと思わせてそいつを襲わせて、
そのすきに!!!」
「人形か・・・・!いけるかもしれねぇ!
俺も知らなかったし、ブラックバードも見たことねぇだろうし!」
「よし!人形&網作戦で行こう!」
「よしきた!」
森に落ちている木や葉や蔓などをうまく使い人型を作っていく。
ソウのブーメランはのこぎりのように切れるので作業もはかどった。
「だいぶ人間っぽくなってきたんじゃねえか?」
「確かに!でももう少しふっくらさせよう・・・!」
ホントに二人での作業は結構おもしろい。
ソウとは相性がいいのか話題も尽きることなく、
良い感じで進んでいった。
「「完成だ!」」
そこには、人間ならさすがに作りものだとわかるものの、
ゴブリンなどはきっと間違えるんじゃないか?と思えるような人形が出来あがった。
尻尾があってそれを支えにすることで直立できるのがポイント!
しかも、紐が付いていて手を動かすことができる。
生きているように見えてくれるといいのだが。
これを普通に置いて、やられた瞬間に網を投げる!
・・・・これではどこからくるかわからないブラックバードを捕まえるのは困難を極めるだろう。
そうだ!!
この人形に網から伸ばした紐をつけて、この人形が襲われたら、自動的に網が落ちてくるようにしよう!!
網を木の上にセットして、立ってるこの人形が襲われて横になったら上から網!
いいかも!
ソウに考えを伝えて一緒に仕掛けを作る。
あたりは少し暗くなってきていた。
「できたな!!」
「おう!」
「ちょっと実験してみるか!おりゃ!」
ソウはそう言って人形を倒した。
バシッッッズバシャ!!!
するとすぐに網が上から落ちてきてソウを捕えた!
「おお!良い感じだな!網が俺には小さく感じるが、ブラックバードにはちょうどいいぜ!」
「網に絡まってもたもたしてるところを俺がぶち殺す!」
「そこは頼むぜ!」
意気揚々とブラックバードを待つ。
そもそも人形をねらってくれないと困るんだけど・・・。
自分たちは極力動かないようにして、人形の手だけ動かし続ける。
そうすれば人形を狙うと思うんだけど・・・。
うまくいってほしい!
あたりはもうすっかり暗くなっている。
ソウは黒いマントのようなものを着ている。
「ソウ・・・そのマントは昔から着ているのか?」
小声で聞いてみた。
「ああ・・そうだ。これが俺の身を守ってくれたのかもしれんな!」
小声でソウが答える。
暗い中で黒いマントは本当にいないように見える。
鳥は鳥目って言葉もあるし、あんまり目がよくない・・・んじゃないかな。
いやそんなら夜に活動するわけない。
ブラックバードは別だな・・・。
気をつけねば。どちらにせよ、黒い方が見えないというのは間違いなさそうだ。
その時、ソウが何かの気配に気づいたようだ!
「っし!!!来たぞ・・・・!」
人形の手を動かす。
次に動かした瞬間、人形へ何かが突っ込んだ!
それと同時に網が上から落ちる!!!
「やったか!!!」
喜び勇んで近づくヒデオ。
「まて!!!」
ソウは叫んだ。
「え!?」
しかし、気づいたときにはすでに遅し。
網を切り裂いたブラックバードはヒデオに突撃!
ヒデオは瞬時に絶命してしまうのであった。
ブラックバード侮りがたし!
普通に強いです。
ってか今回ずいぶん文字数が行きました。
二人いると会話が多くなりますね。