第12死 ~今明かされる王国の秘密~
石投げられたら投げ返す・・・。
ずっとスライムを相手にしていたので、そんなこと全く思わずやられてしまったヒデオ。
どうやってゴブリンを倒すのか!?
「ヒデオ。起きるのだ。」
「・・・はい。起きました・・・!」
まだぼーっとするが、また無事に生き返ることができたようだ。
「またあっさりやられたのぅ。罠士の称号ははく奪しようか…。」
「王様・・それは・・・。」
罠士の称号。
別にあってもなくてもいいような気がしたが、
気持ち的には、もらったものが取り上げられるというのは最悪だ・・。
「冗談だ。一度命じた称号を取り上げることなどない。
はっはっは!目が死んでたぞ!」
「たちの悪い冗談を言わないでください・・・。
ところで王様・・・スライムを倒してレベルを上げたらだめでしょうか・・・?」
「ふむ・・・弱いまま倒せと命じたわけだが・・・。」
「もう少し強くなってからでも良いのではないかとも思うのですが・・・。」
「ヒデオよ。お主はこの世界の役に立ちたいと申したな。」
「はい。」
「それならば弱いまま倒すということを極めてくれんか?」
「ですが・・・。」
王様は伏し目がちになり、ためらう様子を見せたが、話し始めた。
「話しておくか・・・。
ヒデオよ。この城の中などを見ておかしいと感じたことはあるか?」
「え・・・?特にありませんでしたが・・・。」
「兵士の数が少ないであろう。」
「そういえば・・・!」
確かに考えてみると、この規模の大きさのお城にしては兵士の数は少ない。
基準がどのぐらいなのかわからないが、50人ぐらいいてもいいのに、
20人ぐらいしか見当たらない。
「実は昔は結構兵士の数も多かったのだが、
遠征した時などに強いモンスターが出ると全滅してしまうということがあったのだ。」
「そうなんですか・・・・でも、王様が生き返らせることができるのでは・・・?」
「もちろん生き返らせることはできるのだが、実は生き返らせるのには、
その人間の力が大きく関係してくる。」
「どういうことですか?」
「強い人間を生き返らせるにはそれなりの強い力が必要になるということなのだ。」
「そうなのですか・・・。」
「しかも、生き返らせることができるのは、
死んでしまってから2日ぐらいがぎりぎりのタイミングだ。
何人も死んでしまうと、我が力を使うことができずに生き返すことができないのだ。」
「そうなのですか・・・・!」
これは初めて聞いたし、そんなこと考えもしなかった。。
王様は悲しい目をしている。。
誰を生き返らせるかということを決断しなければならなかったことが何度もあったのだろう・・。
それはつまり、だれを死なすかということなのだ・・・。
「そなたに弱いまま倒せといった理由は二つある。」
「はい。」
「一つは、強そうなモンスターに偶然出会ったときに、
こちらの安全を確保しながら相手を倒す術を見出したかったからだ。
弱いそなたが、強い相手に勝つことを研究していくことが、
それにつながると考えておるのだ。」
「なるほど・・・。」
「誰も死なずにすむようにな・・・・。。」
「そうですね・・・。」
「もう一つは、さっきも言ったように、強くなると生き返らせるのに大きな力をつかうからだ。
今のそなたのような弱さなら、
一日に100回でも10000回でも生き返らせることはできるがな。
消費する力より、回復する力の量のほうが多いということだ。」
「なるほど・・・。わかりました。。」
「そなたには苦労をかけるが、よろしく頼む。」
「っはい!」
そうしてヒデオは城をあとにした。
教会に向かう途中で考える。
そんな理由があったのか・・・。
王様の過去の思いを考えると胸が締め付けられる。。
そこに俺がやってきて、これなら!と王様は喜んだということなのだろう。
弱いのに何度も何度も死んでも生き返らせてくれるのにはそんな理由があったのか。。
むしろ弱いからこそよかったのか・・・。
俺の存在意義がわかってきた・・・・!
やってやるぞ!!!
弱いままやってやる!!!
弱くても勝てます!
を実証していくぞ!!!!
決意を新たにしたところで教会についた。
「神父さん~いますか~?」
「はい。おりますよ。」
神父はいつもと変わらぬ穏やかな表情で出迎えた。
「王様からこの国のことを聞きました。」
「何のことです?」
「兵士が少ないという話です・・・。」
「そうですか・・・・・。」
「だから王様に言われた通り弱いまま倒すということを極めていこうと思います。」
「生き返れるとはいえ無理はなさらぬように・・・。」
少し暗い顔をした神父だったが、また穏やかな顔になり、ヒデオへ優しく語りかけた。
「しかし、王様もご自分のことをお話になるなんて、もうあなたは立派なこの国の一員ですね。」
「そうですね・・・!ってご自分のこと?というのは?」
「王様のお話を聞いたのでは・・・?」
「聞きましたが、王様自身のことはとくにありませんでしたが・・・・。。」
「そうなのですか。。実は、王様には息子がおられたのです。。」
「え!?では・・・もしかして・・・・・・・。」
「はい。。そうなのです。。息子さんを遠征時に亡くしてしまったのです。。」
空気が張り詰めるのを感じる。
まさか自分の息子を・・・・・。
想像しただけでヒデオは青ざめていた。
「息子を生き返らせなかったのですか・・・・?」
「はい。。。全員が王子を生き返らせて下さいと進言したのですが・・・・。」
「王様はほかの人を生き返らせたと・・・・。。」
「そうなんです。それはそれはつらい決断だったと思います。。
ただ、国のことを考えたときにそうするしかなかったのでしょう・・・・・。。」
そんなことがあったのか・・・・・。
誰かを生き返らせて誰かは死んでしまったまま・・・。
それは当然あったとは思ったけど、まさか自分の子供が・・・・。
王様はそんな悲しみを抱えていたのか・・・。
だからあまり感情を表に出さないのかもしれないな・・・。
心が疲れてしまっているのかも・・・。
時が癒すしかないとはいえ、何かできることはないだろうか・・・。
・・・・ないか・・・。。
王様は誰もが死んでしまわないような世界を作ろうとしているんだろうな。。
その少しでも役に立つことを考えていこう・・・。
とりあえず、今やるべきこと・・・!
ゴブリンを倒す!!!
そのことに全力を尽くそう!
「しんみりしてしまいましたね。今日はゆっくり休んでください。」
「わかりました。明日はゴブリンを倒したいと思います!」
そうして、食事をして部屋へ戻った。
食事が少し豪華だったような。
寄付したお金が生きてるのかな。
さて、ゴブリンをどうやって倒すか・・・。
落とし穴は、落ちた時点で致命傷になればいいけど、
多分それは難しく、
落ちてから生き埋めにしようと上から土を入れるときに、
下から石を投げられて当たったらこっちが死ぬ・・・。
石じゃなくてもただの土でも死ぬんじゃないか?
なんたって弱いから・・・。
とすると、落とし穴は難しい。。。
うーん。ほかにどんな罠があるかな・・・・
よくあるのは、上から大きな岩が落ちてくるみたいなやつだな。
幸い、森には木がある。
森の上に石だと木だの砂だの運んでおいて、、
ゴブリンが通った時にそれを落とすようにすれば・・・・。
自分の力ではゴブリンを倒せないけど、重力の力とかを使えば倒せそうだ・・・。
よし!上からドッスン作戦で行こう!
作戦は決まった!寝よう!
そして次の日・・・・。
「それでは神父さん行ってきます。」
「行ってらっしゃい。結構大荷物ですね。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。ほんの少しは体力もついてきたみたいです。
ロープなどありがとうございました。」
ロープを神父さんにもらい森へと歩く。
ロープ結構重いな。
まぁしょうがない・・・。
木の上に罠を作るにはロープは必須な気がするからな。
歩きながらどんな罠にするかを考える。
木の上に板のようなものをつけて、それにロープをつけておく・・・
板の上に石だの木だの砂だのを載せて、
ロープを引っ張れば木の板がずれてそれごと落下して下ののゴブリンに当たる・・・。
うん。なかなかいいかもしれない。
でも、引っ張って簡単にずれるぐらいじゃ上に物を載せたら落ちそうだな・・。
ロープでしっかり固定しといて、そのロープを切って落とすという形にするか‥。
それなら頑丈にできそうだし。
よし!決まった!
まずは、木の上に板をうまく置くところから始めないとな・・・。
手ごろな大きさの木がないとな・・・・。
できれば道の左右に木があってうまく上の部分が繋がっているような感じがいいな。
その繋がっている部分に設置したいところ。
森について歩くこと10分。
ちょうどいい場所を見つけることができた。
よし!
じゃあ次は、木の板だな・・・。
良さそうな木の板を見つけないとな・・・。
うーん・・・。ないな。。
あるわけがないか。。
しょうがない!!
この銅のつるぎで木を切って作ってみるか!!!
なかったらつくりゃいい!
やってやれないことはない!
やらずにできるわけがない!!
アーティストが言っていたそんな言葉を思い出しながら
近くの良さそうな木を切りつけてみる。
ザッシュ!
少し傷がついた。これは繰り返せばいけるだろう・・・。
斧とかほしいけど、しかたがない・・・。
ザッシュザッシュザシュ・・・。
とりあえずこの木を倒すまでやるぞ!
ザシュザシュザシュ!
どんどん削れてきている。
適度な硬さがあるようだから、板を作ったときにもちょうどいいだろう。
ザシュザシュザシュ!
結構疲れるな・・・。
倒れる方向とかちゃんと計算して切らないとな。
確かある程度まっすぐ切ったらその上から斜めに切って三角形っぽい木片を取り出したら、
逆側からまっすぐ切るんだったよな。
子供のころ自然教室ってやつで体験したことがこんなところで活きるなんてね・・・!
教育って素晴らしい!
これをうまくやらないで木の下敷きになって死ぬ・・・
そんな予想は残念でした・・と!
よし!逆側からまっすぐ切っていくぞ。。
ザシュザシュザシュザシュザシュ!!
そろそろ木がぐらぐらしてきたぞ。
もう一息!
おりゃおりゃおりゃおりゃ!
ミシミシ‥ミシミシ・・・・・ベキベキベキ!!
木が折れる音がする。
「これでしまいだ!」
逆側から蹴りを入れてみる。
すると、ベキベキベキ!!!!大きな音を立てて木が横に倒れていく。
そして、ドシャーーーーーン!!!
かなり大きな音を立てて地面に倒れた!
あたりにも振動がかなりくる。
地震か!?ってぐらい。
ふぅ~‥‥と思っていると・・・・・。
当たり前といえば当たり前だが、ゴブリンがその音に気付いて近づいてきた。
しかも、3体。
これはやばい!!!
まずは逃げることを選択!!!
「さよなら~~~!!」
逃げるが、ゴブリンは追いかけてきた。
その差はどんどん縮まっている。
このままではやばい!!!
次の策は・・・・。
うーん・・・!!!??うーん・・・・・!?
某ネコ型ロボットのように持ち物をまき散らして考えてみるが、
何も使えそうなものがない!
こうなったらやぶれかぶれだ!!!!
銅のつるぎをかまえてゴブリンを迎える。
とりゃあああああぁぁぁあぁああぁぁぁぁ!!!
気合だけは負けちゃいけない!!
気合があればなんでもできる?!
バシッッッ!!!
振り下ろした渾身の一撃はゴブリンの手のひらによって弾かれた。
気合だけじゃ無理か!!
いや、あきらめるわけには・・・!!
目を狙ってやる!!!
今度は突いて目を狙う!!!
バシッッッ!!!
今度は裏拳のように弾かれた!
そしてゴブリンはヒデオを掴んだ他のゴブリンがヒデオの顔面にパンチを繰り出してくる。
避けることも何もできずまともにパンチを食らってヒデオは絶命するのであった・・・。
誰にも暗い過去などあるものかもしれません。
その思いを背負って生きている。
ヒデオもそのような思いを感じ取り、気持ちを新たにするのでした。