表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/234

第四話 黒い真珠の貴婦人

サブタイトル変更しました。

黒薔薇から黒い真珠に変えています。

「これは。これは…。オレリーヌ様。今宵も相変わらずお美しい…。」


「まあ。お上手ですこと。」


「オレリーヌ。どうぞ、わたしと次のダンスを…、」


「いえ。その誉れは是非このわたしに…、」


「オレリーヌ。喉は乾きませんか?何か飲み物でも…、」


華やかな集団の中心にいるのは艶やかな黒髪に紫の瞳を持つ美女の姿があった。

女性らしい豊満な体つきと婀娜っぽい眼差し、蠱惑的な笑み…。そのどれもが妖しい色香を放っていた。

男に傅かれている美女は男達に見惚れるような笑みを浮かべ、男達を魅了していた。

今夜はフォルネーゼ家主催の舞踏会が開かれ、煌びやかなシャンデリアの下で着飾った人々が思い思いに談笑していた。その舞踏会に主催者側の人間であるリエルも出席していた。

リエルは本来、舞踏会という類の集まりは苦手であった。

なので、リエルは王家主催か当家主催の必要最低限の舞踏会にのみ参加している有様だ。

それ故にリエルは社交界にも滅多に顔を出さない引きこもり令嬢であると噂されている。

舞踏会に出席する以上は夜会用のドレスを身につけなければならない。

乗り気でないリエルとは対照的に侍女のメリルや護衛のサラなどその他のメイド達は嬉々としてリエルのドレス選びや髪型ではしゃいでいた。メリル達が選んでくれたのは若草色のドレスだ。所々に小花の刺繍が施されているシンプルなデザインである。

それを身に付け、リエルは舞踏会に出席し、グラスを手にしていた。

そして、オレリーヌと呼ばれた女性に視線を向ける。

数多くの男性に囲まれた貴婦人…。

彼女は王宮内でも美しいと誉れ高く、その美しさから「黒い真珠」と呼ばれ、社交界の花として名が知れた女性である。


そして、もう一人…、その女性にそっくりの令嬢がこの場にはいた。

若い娘ならではの華やかさと初々しい雰囲気を醸し出す令嬢の名はセリーナ…。

この令嬢もまた美しいと評判の娘だ。二人は瓜二つと称されるがそれも当然である。二人は母娘なのだ。セリーナは母親そっくりの美貌を受け継ぎ、母と同じく多くの男に傅かれ、女王様然と振舞っていた。

そんな二人を交互に見やりながらリエルは飲み物を口にした。若い娘が着るような露出度の激しいドレスと大粒の宝石を身につけたオレリーヌはとても年頃の娘二人と息子がいるとは思えない。


「あら…、あそこにいるのは…、フォルネーゼ家の穀潰しと噂の…、」


「ああ。片眼の欠陥品の…、」


ひそひそと囁かれるリエルの視線…。リエルはそれに何の反応も示さなかった。ギュッと手を握り締める。


―平気…。こんなのは、慣れている。反応するのは見苦しいだけ…。冷静に…、受け流すのが得策…。


「オレリーヌ様とセリーナ様はあれだけ似ていらっしゃるのに…、」


「やはり、あの噂は…、」


「フォルネーゼ伯爵も何故…、」


止まらないリエルの悪口…。だが、不意にその声が途切れた。少年伯爵が現れたからだ。

フォルネーゼ伯爵の恐ろしさは皆が知っている。

リエルを陰で嘲笑った者や害した者、侮蔑した貴族をことごとく破滅へと追い込んでいるのだ。

五大貴族であり、皇帝の信頼を得ている伯爵にはそれが可能だ。

どんなに身分の高い貴族でもフォルネーゼ家の権力には太刀打ちできる術はない。

フォルネーゼ家はそれ程に強大な力を持っていた。

そして、社交界では伯爵のリエルに対する溺愛は周知の事実である。

疑問を抱きながらも貴族の間では制裁を恐れて伯爵の前で表立ってリエルを貶める話題をすることはなかった。


見目麗しい男達に囲まれている『黒い真珠』の貴婦人オレリーヌ…、彼女はルイとリエルの母親であり、今回の舞踏会の主役である。今宵はオレリーヌの生誕を祝う催しであった。

薔薇は薔薇騎士と被るので別名にしました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ