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第四十六話 しっかりなさい!アルバート!

まとめて更新します。

「し、白薔薇騎士…?」


呆然と見上げる男に対して、アルバートは冷酷な眼差しのまま口を開いた。


「ヴィッツェーリ伯爵の息子、レイフ。

薔薇騎士として、お前を拘束する。」


「は、はあ!?」


「罪状は…、そうだな。

伯爵令嬢暴行未遂、五大貴族に対する不敬行為に…、」


「じょ、冗談じゃない!そんな事で逮捕するなんて…、」


「そんな事?貴様…、自分が何を言っているのか分かっているのか?」


アルバートがスッと目を細めた。

それだけで男はヒイッと震えあがった。


「貴様は五大貴族の娘を貶め、挙句の果てには狼藉を働いた。五大貴族は陛下の信頼厚い忠臣の一族だ。

それを害することは皇帝陛下に楯突くも同然の行為。国家反逆罪で引き立てられても文句はないんだぞ。」


「だ、だが…、その女は五大貴族の娘じゃないだろう!知っているだろ!?

その女はフォルネーゼ家の実子ではなく、不義の子…、」


ドスッと鈍い音がした。


「ヒイイイイ!」


剣が男の顔の真横に突き立てられ、男は涙目で叫んだ。

アルバートは剣を突き立てたまま、


「お前…、今何て言った?」


「あ…、あ…、だ、だから…、その女は、ふ、不義の子…、」


男はガタガタと青ざめた。

リエルは思わず俯いた。

男は青ざめながらもリエルを指さし、震える声で叫んだ。


「そ、その女が不義の子であるのは明白だ!

そもそも、貴族の血が入っているのかも怪しい卑しい女だぞ!

この女には下賤で平民の血が…、ヒイイ!」


声高に主張していた男だったが不意に彼はアルバートの表情を見て、怯えたように悲鳴を上げる。


リエルに背を向けた状態のアルバートがどんな表情を浮かべているのか分からない。

だが、男の恐怖に歪んだ表情と彼から発せられる独特な気迫に怒っているのだと肌で感じ取った。


―アルバート?


「…死にたいのか?」


「あ…、あ…、ヒイッ!」


ガチガチと歯を鳴らし、声にならない呻き声を発する男はアルバートを見上げた。

アルバートはガッと男の胸蔵を掴むと、


「そんなに死にたきゃ、殺してやる。」


ぞっとする程に低い声で囁いた。

そのまま男の胸蔵を掴んだまま片手で軽々と持ち上げるとブン、と思いっきり放り投げた。

それは、まるでボールを投げるかのような素振りだった。

自分と同じ位か少し低い位の長身の男を軽々と。


男の身体は宙に浮き、部屋に飾られていた壺に当たると、ガシャアン!と音と共に粉々に砕け、男の身体は床に沈んだ。

壺の破片が当たったのか頭や顔からは血が流れている。

が、それで終わりと思いきや、アルバートはまたしても男に近付くと、その髪を鷲掴みにし、ずるずると窓まで引きずると、躊躇なく、男の顔を窓ガラスに叩きつけた。

ガラスが割れる音と同時に鮮血が飛び散った。


アルバートの顔が返り血で染まった。

リエルは目を見開いた。


―赤…。鮮血の赤…。これは…、まるで…、あの時と同じ…。


鎖が擦れる音、赤い炎とそこから取り出される真っ赤な焼き鏝、赤い唇を吊り上げた女の残酷な表情…。

泣き叫び、悲鳴を上げても容赦なく、迫りくる女に恐怖で涙が流れたその時…、鮮血が舞った。

むせ返る様な血の匂い、返り血を浴びながらもその青い瞳は爛々と輝いていた。

その目は…、まるで手負いの獣の様に獰猛で相手を噛み殺さんばかりに殺意の光に満ちていた。


「この高さなら…、一瞬で死ねるだろう。バラバラになってどこまで残っているか分からないがな。」


ぞっとするような低い声…。

アルバートは無抵抗な男の首を掴むと窓から押し出し、そのまま男を突き落とそうとしていた。

リエルはハッと我に返った。

今の彼はあの時と同じ目をしていた。

獰猛な獣のような理性を失った目。

ただ目の前の敵を倒すことしか考えていない。

本気だ。

彼は本気で男を殺そうとしている。


「待って!アルバート!」


リエルはアルバートの腕を慌てて掴んだ。


「殺しては駄目!彼は大事な証人なのだから!

騎士なら…、軍人なら一時の感情に任せてはいけない!

薔薇騎士としての務めを果たして!」


ピクリ、と僅かにアルバートの肩が動いた。

が、それでも彼の表情は変わらない。

リエルは思わず手を振り上げた。


「しっかりなさい!アルバート!」


バシン!と乾いた音が部屋に響いた。

アルバートは頬を叩かれ、顔を横に背けた状態のまま固まった。

が、不意にぼんやりとその目に理性の色が宿った。


「アルバート!」


リエルが必死に彼の名を呼びかけると、アルバートはゆっくりとリエルを見つめた。


「リエル…。」


アルバートはぼんやりと呟き、男を見下ろすと、ゆっくりと男の身体から手を離した。

床に転がった男の顔は腫れ上がり、血だらけでもうとっくに気絶していた。



すみません。今回は短いですが区切りが丁度いいので一旦切ります。

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