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第二十三話 お前なんて、利用されたら捨てられる

人気のない所に連れて行かれたリエルはアルバートと向き直った状態で詰問された。


「…どういうつもりだ?」


「何がでしょう?」


「恍けるな。セイアスに近づくなどどういう了見だと聞いているのだ。」


「薔薇園に連れて行って下さるとお誘いを受けましたので…、何か不都合でもありましたでしょうか?アルバート様。」


首をかしげてリエルは不思議そうに訊ねた。


「貴様…、ふざけているのか?」


「ふざけている…?私が?何故でしょう?」


「フォルネーゼ家の人間なら知っているだろう?セイアスは今、オレリーヌ様のお気に入りなのだという事実を。セリーナだってセイアスに好意を寄せている。それをお前は…、母親と姉が懇意にしている男を横取りするつもりか?」


「まさか。お母様とお姉様に楯突く様な真似はしませんわ。だって、私は今後の為に、セイアス様と親交を深めようとしているだけですもの。」


「何?」


「セイアス様は、よくお屋敷にいらっしゃるのです。それで、話す機会も増えましたの。お母様やお姉様がいつも世話になっていますし、私としてもセイアス様と親しくしていた方が今後の為にも良き関係を築けるだろうと思っただけですわ。」


微笑むリエルにアルバートは厳しい表情を変えない。


「ご安心を。セリーナお姉様に迷惑は掛けませんわ。アルバート様にとって、姉はとても大切な女性ですもの。」


リエルの言葉にアルバートは言った。


「お前が何を企んでいるのかは知らないが…、妙な真似をするな。セイアスがお前ごときに本気になるとでも思っているのか?…思い上がるな。」


「…。」


「あの二人からセイアスを奪い取れるとでも思っているのか?…美しくもない何の役に立ちそうにもないお前が?…いい加減自分の器量を自覚しろ。」


リエルは黙ったままアルバートから目を離さない。


「お前に近づくのはお前が五大貴族の娘だからだ。フォルネーゼ家の血筋を引いているからに過ぎない。お前自身に価値がある訳じゃない。オレリーヌ様やセリーナはともかく…、何の取り柄もないお前なんて…、利用されるだけされたら、捨てられるぞ。」


「…仰りたいことはそれだけですか?」


リエルは無表情で静かにそう言った。

何の反応もしないリエルにアルバートは言葉を失くした。


「お話は以上ですわね?では…、私はこれにて失礼します。」


そのままリエルはアルバートの横を通り過ぎた。

背中に彼の強い視線を感じたが一度も振り返ることなく、迷いのない足取りで歩いた。


リエルは不意に立ち止まる。

振り返ればもう彼の姿は見えなくなっている。

リエルはそっと眼帯に手をやった。


「そんな事…、当の昔に知っておりますよ。アルバート様。」


ぽつりと呟かれた言葉は風の音に掻き消され、誰にも届くことはなかった。



「リエル嬢…。」


「セイアス様。お待たせ致しました。…あら?ミミール様は?」


「ミミールは先に帰らせた。」


「そうでしたか。」


リエルは別段何も変わった様子はなく、微笑んでいる。

セイアスはそんなリエルに言った。


「リエル嬢。…この後、時間はあるか?」


「え?ええ。特に予定はありませんわ。」


「なら…、少しだけ私に付き合ってくれないか?」


「構いませんわ。…どちらに?」


「静かに話せる所へ。」


無感動に呟く青薔薇騎士の言葉にリエルは一瞬虚を突かれた表情を浮かべたがすぐに微笑んで承諾した。


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