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第二十話 わたしは、誰の子供なの?

自室に戻ったリエルは手にした鏡を手に取り、そこに映る自分の顔を眺めた。

ありふれた焦げ茶色の髪に薄紫色の瞳を持つ平凡な容姿…。


その顔は美男美女で知られた両親のどちらにも似ておらず、父と母どちらの特徴もない。

父は金髪碧眼の容姿を持つ高貴さと大人の色気を放つ美青年だった。

一方、母は黒髪紫眼の妖艶な美女だ。

ルイは父に生き写しの美少年でセリーナは母親譲りの美貌を持っている。


フォルネーゼ家に茶色の髪を持つ人間はいない。

それに、瞳の色だって母の瞳とリエルの瞳の色は同じ紫でも似ても似つかない。

母と姉の瞳はまるで紫水晶のように深く、澄んだ美しい色をしているがリエルの瞳の色は薄紫色で二人のような宝石の如き輝かしい色とは比べ物にならない。

リエルの瞳の色は二人の様に深みもないし、どことなくくすんでいて宝石よりも野花の色に近い。

リエルの瞳は二人と同じ系統の色をしている。

ただそれだけだ。

そして、この瞳の色を持つ人間はフォルネーゼ家ではリエルだけだ。


それに、リエルとセリーナは一つしか歳が違わない。あまりに歳が近すぎる。

それもリエルが出生に疑念を抱く一つの理由だ。

リエルは幼い頃から自分が異質であると感じ取っていた。

そして、周囲の大人から囁かれる悪意の言葉にも…。


もしかしたら、私は両親のどちらの血筋も引いていないからこんなに似ていないのか。

だから、母にあれ程、嫌われているのか。

幼い頃は分からなかった母の罵声と暴力…。

けれど、母はいつもリエルにお前など産まなければ良かったと言っていた。


母の言葉が正しければ母がリエルを産んだのは紛れもない事実だ。

やはり、自分は母の子なのか。

けれど、それなら何故自分を産んだのか。

もしかして、私は父様の子ではなく、別の男性の…?いや。母が相手にする男性は皆、美しい殿方ばかりだ。

母に似ていないリエルは父に似る筈だ。

しかし、それなら母がこんな平凡な容姿を持つ男性を相手にしない。


―分からない…。私は一体、誰の子なのか…。


『リエル。誰が何と言おうが…、お前は私の子だ。』


父の言葉を思い出す。

初めて自分が不義の子供だと噂を耳にした時、リエルは愕然とした。

そのまま、父に真実を問いかけた。

すると、父は一瞬、悲しそうに目を曇らせ、真剣な表情でそう言ったのだ。


もしかしたら、父は知っていたのかもしれない。

リエルの出生の秘密を…。

けれど、それは最後までリエルに教えてくれなかった。


「血は繋がらずとも…、私の父様は唯一人…。」


リエルは静かにそう呟いた。それを執事が部屋の扉の隙間から覗いていることに気がつかなかった。


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