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あの日、2人が初めてシリスによっての紹介で出会った日。
シリスは2人にとある重要な研究を頼んでいた。
最近おとなしく国をまとめていた魔王の動きが怪しくなってきた。
できれば早い段階で魔王に対抗できる魔術式を作成していたい。というものだ。
今現状魔族に対しては、不意をつくような音が鳴るようなものや、相手を追い込んで焼きつくすような手法を取っているが、知能が低い相手にしか通用しないものがほとんどだ。
魔王は恐らく人間と同等か、それ以上の知能をもつという。
大昔、勇者と言われる者が魔王に対してかなり大きな魔術式をかけたことにより大人しくなったとも言われる魔王の存在が動き出したのは、今後の人間の世界を揺るがす大きな問題であるのは間違いない。
ただその文献は見つかっておらず、魔族の国に保管されているのではないかと言われている。
特段友好関係を築いているわけではないため、国に入ることはもちろん、滅ぼそうと考えている相手が有利になる情報なんて渡してくれるはずがない。
これから新しく、その術式もしくはそれに近い何かを作らなければ簡単に滅ぼされるだろう。
他の研究者たちもその研究に励んでいるが、シリスはこの2人なら素晴らしい術式を作ってくれるのではないかと考え、一緒に作るよう提案した。
「別に2人きりじゃなくてもいいんだ、誰か誘いたければ誘っていいし。でも誰かと一緒に研究をしないと見落としてしまう部分が多くなってしまうだろう?だから2人を一緒にした。なに、ちゃんと研究室も用意したよ、だから安心してくれ」
何が安心してくれだ、とアルベルトは思っていた。
結局のところ、この魔女と部屋で2人きりになってしまうではないか。
恐らく相手もそう思いながら作業をしている。
今2人が行っている実験は魔族の成分にどういったものが多く含まれているのかという部分だ。
相手に効く式を作るためには相手の事を良く知るところから始めなければならない。
そこの意見は一致したため討伐された魔族の体を使って実験を行っている。
正直魔族の体は気持ち悪いものがほとんどで、女性が実験する場合は男性に解体を頼む場合が多いが、この魔女様は自ら行うことができるらしい。もくもくと解体を進め、自分の考えたであろう実験を行っている。
2人きりになった時に名前を聞いたのだが「魔女ですが」と言って黙った。名前を教えるつもりはないようなので、それからは魔女と呼んでいる。
相手が女という部分を抜かせば、正直実験がやりやすい。
私語が全くないため効率がいいし、研究者としての考え方や行動が的確に行われるのでスムーズに話が進んでいく。今後も彼女と実験をしていきたいとまで思っていた。
だが、彼女はアルベルトの行動に関して全く関心がないようだ。ただひたすらに自分の目的の動作をし、たまにアルベルトからの指示があった行動を行う。
彼女から話しかけられたことも本当に僅かで、これが足りていないであったり、ここが間違えているなどの指摘がほとんどだった。
シリスの部屋に来たときはこんなに話さないようには見えなかったのに、人見知りなのだろうか。
それならばこの人見知りに注意をする場合は行動で行なった方がいいだろう。
「魔女、話したいことがあるが、まずお前飯を食べていないだろう、死なれても困るから昼食べに行くぞ」
「お構いなく、1日位ご飯を食べなくても死にはしませんので大丈夫です」
「そのセリフを昨日も聞いたんだよ、ほら、行くぞ。来ないなら強制的に……」
「い、行きます、行きますから」
強引に彼女を連れ出して昼飯を買いに行く、食べる場所は2人になれる場所がいいだろう。
そこで『愛の力』についてを聞いてみたい。
そこである交渉を進めようと思っている。
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