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あの廊下で出会った少女の事が気になっていると気が付いたのは、自分が金色の髪を持つ女性の姿を目で追っていると認識してからだった。
アルベルトは最近全ての調子が悪い。勉強もあまり頭に入ってこないし、研究も成果が出せていない、訓練も身に入らずどんどん気分が落ち込んでいるのが分かった。
原因はそう、あの例の廊下で出会ったエリーという名の少女のせいだろう。
アルベルトは基本的に女性の事は嫌いだが、実験を共にする女性などに対して嫌がるという事はしない。
自分にすり寄ってきたり、媚を売ってくるような女性が嫌いなだけなのだ。
この施設で実験を共にしているのは約30人ほど人数がいるが、その中で女性も10人ほど存在する。
結局その中で対等な関係を崩し、すり寄ってきた女性は7人ほどいたが、彼女らは、実験をするためにこの研究施設に来ているという事をしっかりと認識しているのか分からないと訴えると、恐らく辞めさせられると思ったのだろう、以降そういったことはしなくなった。
そもそもアルベルトは、研究や実験の内容以外でなぜ女性と話さなければいけないのかが分からなかった。
だが今はどうだ、あのエリーから話しかけられたいと思っている自分は何だ。
あれは女なのに。
女と話してロクなことがあった試がないではないか。
いや、今後その女とやらと話していって好きにならなければいけないのだから、このまま話しかけても……。
そういったことを一日中考えている。
だいたい、シリスから変なことを言われたのが原因ではないのか。
いや、あれは変な事ではあるが事実であり、早めに教えてくれたことには感謝しなければいけないことだろう。
アルベルトはやはり、上手く思考をまとめられないまま日常を過ごしていた。
そんな時、シリスから学園にいる魔女に会ってみないかという提案をされた。
魔女と呼ばれる女がいることは知っている。
研究員の中でアルベルトに話しかけてこなかった3人の内の1人という認識ではあるが。
彼女は常に黒いフードの様なものを羽織っていて頭をすっぽり覆っており、髪の色はもちろん目の色を知る人物はいない。一度、研究員の誰かが見ようとしてぼこぼこにされたるという噂が出るほど、見に行った人物は全員何かしらの行動で見ることができなかったと言っていたらしい。
それに彼女と話したことがある人物もあまりいないらしい。
実験も、絶対に彼女がいないとできない共同作業時しか来ないらしい。他は全て自室にこもっているとか。
そういえば、そんな引きこもりとして名高い彼女は、自分と同じく『愛の力』を受けたことはないのではないだろうか。
母親からのキスでも良かったというのであれば、親愛というのも含まれるという事だと、そう結論付けていたアルベルトは、その魔女と友人となることによってその親愛者に対する『愛の力』を試す実験を行ってみたいと思うようになっていた。
ただそこに、エリーに対して抱く気持ちを誤魔化すために『親愛』としての気持ちを魔女に抱こうと考えているというのはアルベルトは気がつくことは出来なかった。
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