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数十分前、シリスは訓練所に来ていた。
今日エリーと話をする時にアルベルトを呼んで合わせようと思っていたからだ。
ただ今日はいつもいる時間帯にアルベルトの姿が見えなかった。
「珍しいな……」
シリスは、アルベルトがシリスの為になるべく同じ時間帯に訓練をしていることを知っていた。アルベルトはそれをシリスには言っていなかったが、彼の考えは昔から熟知している。そういう所がアルベルトの良い所だ。
周りの者に知っている者は少ないが、少なくともシリスはその事を誇りに思っている。
「なぁ、君」
「あ、はいっ!シリス様!」
「ええと、キリ君だったかな、アルベルトを見なかった?」
「アルベルト様ですか、今日はまだ来ていないようですが……」
「そうか、ありがとう」
「いいえ!失礼いたします!」
シリスが本当に来ていない事に少し落胆したが、機会はいつでもあるだろうと思いエリーとの待ち合わせ場所に向かった。
彼らの相性はとても良いと予想していた。
アルベルトとエリーのことだ。
2人とも魔法が大好きだし、研究についての姿勢も似ている。話しも合うだろう。
ただ、お互いの弱点を克服すれば、だか。
まずアルベルトは本当に女嫌いだ。
女であれば3歳くらいから70歳くらいまで嫌だそうだ。どんだけ広いんだと。そう思ったが、アルベルトは5歳くらいから女性が苦手だったのでその時から『女性はこわい者』として認識していたんだろう。
そして、エリー。
彼女はシリスが初めて見たときにぞっとするほど暗い目をしていた。まるで全てを拒絶するかのようなその目。
その時にすぐに分かった。彼女は頭がいい。
周りの行動で何を示しているか全て分かってしまっているのだと。
すぐに彼女を引き取る手続きをしたシリスは、勉強という新しい情報を彼女に示し、興味を引かせ、生きる活力にさせた。そうしなければ死んでしまいそうな位にエリーは自身の『生』に興味がなかった。
エリーの研究はこの研究所にとってとても重要な物になっている事が多い。無くてはならない存在である。
魔力低下によってその存在を失うのはとても惜しいのだ。
シリスはため息をつきながらこの先の未来を想像した。
この数分後、気にかけているその2人が出会っている事を知る者はここにはいなかった。
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