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短くてすみません!

 アルベルトは走り去るエリーの姿を見つめていた。


 足が地面に張り付いたかのように動かない。

 アルベルトが怖くて怯えたかのようなその逃げ方に、追いかける選択肢が無くなってしまった。

 気が付いた時には彼女の姿が廊下の角を曲がって見えなくなる。


 呆然と立っていると後ろから女が声をかけて来た。


「ほら、怯えられてしまっているでしょう」

「……うるさい」

「あなたがいけないのよ、そんな上からの態度を改めないから」

「そもそも。お前は一体誰なんだ、部外者はほっといてくれ」

「ふふふ、かわいそうに」


 女が近寄ってきてアルベルトの顔に指を添わせてきた。それを片手で払いのける。

 外見だけで言えば美しいその姿は、アルベルトにとっては至極どうでもよいことだった。

 先ほどから彼女がエリーについて語りかけて来ることをどうにか止めさせることの方が重要であり、その瞳に浮かぶ同情の色さえも苛立ちに代わっていく。


 本当はエリーを追いかけて問うてみたいことがあったのだ。

 だがあんな表情を浮かべて逃げられたのだから何かをして嫌われてしまったのかもしれない。

 今日は研究室に行って彼女に研究結果の報告を置いて帰ろう。そう頭を切り替える。


 その場を去ろうと歩き始めるアルベルトに、女が言ってきた。


「私が言ったこと、忘れないでちょうだいね」

「……ああ」


 アルベルトが去ったその場所に、女が残っていた。

 その表情は恍惚としており、自らの体に這わせた指に力を込めて、アルベルトが見えなくなるまで、その背中を見つめていた。




 アルベルトは研究室に戻ると、エリーが落としていった本を机の上に置いた。

 そういえばエリーが廊下に出ているなんて珍しい。

 そう思ったアルベルトはその本を開く。

 そこにはエリー自らが書き込んだ部分と、彼女の書いたノートの切れ端が様々な箇所に挟まっており、研究についての大切な本という事が分かった。


 なぜ彼女はこの本を落としたことに気が付かずに走り去ってしまったのか。


 もしかして、それほどまでに怯えさせているのかもしれないと考え、アルベルトは頭を抱えた。


 彼女の事でこれほどまでに気持ちが左右されてしまうとは、もう疲れてしまった。

 このままではだめかもしれない。あの庭で話しかけてきた女が言っていた、気持ちを取り除いてくれる薬のことも考えて研究を行わないと。そんな考えまで巡るほどだ。



 とりあえず研究結果をまとめよう。

 そう思ってエリーの本を閉じようとした。


「………魔族の、力のもと?」


 エリーの書いた紙の切れ端にそんな言葉が書かれてた。改めて広げてその部分を読み進める。


「魔族の力と元となっている要素の一つに、人間の感情があげられる、魔族の国には人間が保管されている可能性がある」


 その文章に衝撃が走った。

 なるほど、そうだったのか。

 今まで不可解だった、魔素と無機物の塊である魔族に感情が生まれている事実。

 人間のように繁殖を行わない魔族が新たな魔族を生み出す過程として人間が組み込まれているのであれば、感情を備えてしまうのも道理に適っている。

 そして、今魔王が動き始めた一つにその人間の確保があるのだとしたら、理由としても成立する。


 エリーのその結果に自分の研究結果も併せて考えてみる。




 これは_____。





お読みいただきありがとうございます。

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