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明日が20日なので出来る限り投稿していきますー

 アルベルトはあの時に出会った金髪の彼女に会えずにいた。エリーという名前の女も何人かいたが、彼女ではない。

 また何気なく彼女のことを考えてしまった事が恥ずかしく、彼はため息をついた。




 今アルベルトが受けている授業というのが、専門的な分野を学ぶために設立されたものであり、シリスが管理をしている分野になる。

 より難しい魔法式を学んだり、実際に使用する為の知識を習得する為の授業だ。


 ここで学ぶ事を許された人物は魔力が一定以上の数値を出している者に限られる。


 アルベルトは何もしなくてもここで学ぶ事を許されたが、稀に、『愛の力』によって範囲を超えた者が途中で入ってくる時がある。


 元の数値を見ると、想像以上に伸びている者が多く、自分がやったらどうなるのかが気になるアルベルトだが、そんな事を声を大にして言えるわけがない。




 しかし、この授業はとても難しいと評判で、実演の授業などは式を正確に書けない者、書いても発動しない者がかなり出る。



 アルベルトは今存在する禁忌とされる式以外は全て覚えており、禁忌とされる通常の式を短縮した式も数個は記憶しているため、この授業で学ぶ事はほとんど無い。


 それでも出席しているのは、シリスが稀にここで授業をする際に新しい式を発表する場合があるからだ。


 シリスはそれを分かっているため、アルベルト個人宛に新しい式を教えることはない。

 アルベルトが出席するだけで出席率が格段に伸びるのが一因だろう。


 アルベルトの式は誰もが認めるほど美しい。

 彼の文字で描かれる式はまるで芸術のようで、見惚れている間に完成すると言われるほどだ。


 いつものように送られる視線の張り付けに、アルベルトの心はどんどん落ち込んでいった。


 エリーから送られる視線は、誰から見られても変わらないと思っていたアルベルトの気持ちを変えた。


 期待を込めた視線だった。

 アルベルトの式を見るのではなく、そこから発生する魔法に期待する目。

 久々に緊張していた。

 また、見てほしい。そして彼女にアルベルト自身を見てもらえた時……。



 そこまで考えて目の前で完成させた式を放った。


 だめだ、これ以上式を書いても全て乱れそうだ。

 平常心を保てなくなる自分が情けない。



 あれほど嫌いだった女のことを考えてこんな風になるなんて馬鹿らしい。



 アルベルトは授業を適当に抜け出すと研究室に向かった。



 ※   ※   ※



 研究室には既に魔女がいた。だが床に突っ伏して寝ている様子だ。


「おい、そんな所で寝るな。一応女だろう」


 アルベルトは制服の上着を脱いでハンガーにかけ、代わりに白衣を羽織った。

 声をかけても起きない魔女に近づいて上から眺める。


 庭に誘ってサンドイッチを共に食べた日から、少しだけ打ち解けることに成功していた。

 本当に研究にひと段落ついた時に、研究の途中で起きた出来事を話したり、また共同で行う研究も提案してくるようになってきたのだ。


 これは親愛なる協力者として大きな一歩では無いかとアルベルトは考えていた。


「おい、魔女。起きろ」


 なかなか起きない彼女にしびれを切らし、アルベルトは魔女を揺する。


「おい!」


 全く起きる気配がない彼女にため息をついて起こす事を諦める。

 仕方がない。近くのソファにでも寝かせようとアルベルトは彼女を抱き上げた。その時。


 彼女のいつも被っていたフードが顔から外れ、輝くような金色の髪が現れた。






「!!!!?!」


 エリーをぎりぎりで落とさなかったことを称賛したいほど、アルベルトは驚き、慌てていた。

 ずっと探していた〈彼女〉が目の前にいる。

 彼女のかける眼鏡はあの時にアルベルトが直した物で間違いない。

 いつの間にか息を止めていたことに気が付いて荒い呼吸と整える。

 心臓の音が自分の耳まで聞こえる位鳴っており、その音で彼女が起きてしまうかもしれないと思うほどだった。

 急いで研究室の窓際にあるソファまで運んで下ろす。

 フードは顔にかけ直して彼女と距離を取った。


 ああ、いつもの魔女がそこに居る。


 しかし、目をつぶると待ちわびていた彼女の姿が映って仕方がない。


「…………」


 落ち着けと自分に言い聞かせるがなかなか収まらない心臓の音と浅い呼吸に、この場所にいてはいけないと考えて空気を吸う為に外に出たのだった。


お読みいただきありがとうございます。

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