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柊君へ  作者: Taさん
第二章
89/254

入河ちゃん ~25~

入河ちゃんの話です!

長めになってしまいました・・・。

その日は本当に突然やってきた!


しかも理不尽なことでやってきたのだ!!



順調にインターハイ予選を勝ち上がっていた柊先輩。

県大会でも勝って、次の地方大会へと進んでいた。


その日も俄然やる気を出して車を出してくれた母。

前日には、


「柊君って好きなスポーツ飲料メーカーある?」


とか、


「はちみつレモン作ったら食べるかな?」


等々、妙にテンションが高いのだ。


そして試合会場ではビデオを回しながら、

一眼レフでバッチリと構えていた。



私は柊先輩の付き人を買って出て一緒にサブグランドへと行く。

そこには柊先輩と同じように朝のアップをしている選手がいっぱいいた。


「柊先輩!水入りますか?」


「今は大丈夫だよ。」


そして走って戻ってきたところで、


「タオルです!」


「うん、ありがとう・・・。

 入河ちゃん、ちょっと落ち着こうね。」


柊先輩は苦笑しているが、


「落ち着けるわけないじゃないですか!!」


そう私は興奮していた。

完全に私は空気に飲まれているのであった。


・・・選手ではないんだけど・・・



ちなみに横いる同じく付き添いの久本先輩もそわそわしていて、

柊先輩から2人ともが笑われてしまうのであった。


その後は一度テントに戻って、テーピングの処理を再度確認する。

しながらもいつも通り過ごす柊先輩がにみんながジュースや水、タオルを進めており、

その対応を苦笑しながら断る柊先輩だった。



そんな時に加藤先輩が、


「柊君は何組?」


「俺は2組。」


「誰か知り合いいる?」


「残念ながら・・・1人強敵がいる。」


そう言って、加藤先輩にタイムテーブルを渡したので、私もそれを覗かせてもらうと、

そこには同じ県で、柊先輩のライバルである人の名前があったのだ。


「珍しいね・・・。」


「そうだね。普通3組あればうちの県の上位1、2、3は

 バラバラの組に分かれると思ったんだけど

 どうやらめんどくさいことになったみたいだよ。」


その人は全国2位を獲った人で、かなりの強敵である。

だからか、


「とりあえず組の上位2位に入れば決勝進出だからね、

 何とか入れるように頑張るよ。」


控えめに2位を狙うと言っていた。

まあ、体力温存は必須なので、当然の対応で、

すでに決勝に照準を当てているのが良く分かる。




今度は試合前のアップをしに行く柊先輩に私は当然ついていく。


知り合いもいるらしくて、ちょいちょいとその人たちと話しながら、

笑いながらアップをしていた。


「・・・余裕ですね。」


「だね。あそこら辺が柊ってすごいよな~。」


私と久本先輩は柊先輩を見て関心するばかりであった。


ただ、やっぱりアップを終えて、試合会場へ行くと様子が少しだけ変わる。

普通に話してはいるのだが、やっぱりピリッとした空気に変わっている。


「じゃあ、荷物お願いね。」


そういって、ジャージやカバンを入れた籠を私に私てくる。


「はい!絶対に勝ちましょう!!」


「任せといて。」


そういって、柊先輩はスタート付近へと向かったのであった。

そして、ついに柊先輩の番である。



「オン・ユア・マークス。」


スターターの声と共に、スタートの構えをする柊達選手。

そして、ゆっくりと揺れていたのが、みんな制止すると、


「セット。」


その声と共に腰を上げる選手たち。

そして、


「パン!」


そのスタート音とともにみんなが一斉にスタートを切る。

その中で、4コースを走っている柊先輩と5コースを走っているライバルが

共にいいスタートを切って、並ぶように、いや、一歩前をライバルが進んでいる。


大丈夫!柊先輩なら!!


柊先輩は決してスタートがうまい選手じゃない。

後半スピードに乗るタイプの選手だ!!


ハードルを飛び出すと一気に差を広げていくいつものパターン!!


それを期待して見ている。


一台目のハードルを鋭いハードリングで一気に前に出ようとする!!


良し!これで抜ける!!


そう思った瞬間だった!


ライバルがハードルに引っかかりバランスを崩すのである。

そしてあろうことか・・・



「なに!!!」


柊の左手にライバルの手が掴まれて引っ張れてしまうのであった。


一瞬である。

すぐにライバルは何をしたのかに気づいて手を離したのだが、

そのまま転んでしまう。


当然掴まれて失速した柊は躓いて転びそうになるのだが、

何とか立て直してはしりだすのだが、

やはりそれだけのロスがあると一気に差がついてしまう。

6人がそのまま進んで、最後に柊先輩がゴールインしたのであった・・・。


コースに審判員から黄色カードが投げ込まれるた。

それは5コースにだけであったが・・・


・・・一縷の望みをかけて私は願っているのだが・・・


それが通じるはずもなく、5コースの選手だけがやはり失格になっただけだった。

柊先輩は7位でのゴールである。


呆然としていると、


「お疲れさま!」


いつもの柊先輩がそこにはいた。


「どうして、そんな普通なんですか???」


「まあ、仕方ない・・・。こういうこともある。」


そんな悟ったような言葉を掛けないでください!!!


「ありえないんですけど!!!」


私の中では全く理解できない。

ここで柊先輩が転んだのなら理解できる

だけど、転んでもない、反則もしていない。


ただ、転んだ相手に巻き込まれた。


そして、そのせいでその力を十分に発揮できなかった。

もう一度同じレースをすれば間違いなく柊先輩が勝つ!!

審判団だってわかってるはずなのに・・・


「何で妨害にあったのに、再度試合をとかにはならないんですかね。」


私は怒りが全然おさまらない。


「まあ、それが陸上の試合だからだよ。よくあるさ。」


柊君のあっけらかんとした態度に益々仏頂面をしてしまう。

そして、落ち着いてくると私の心の中にはある思いが湧いてくる・・・



「だって・・・だって・・・。」


ついには涙を流し始めた・・・



「これで・・・柊先輩の走りが見れなくなってしまうんですよ・・・。」


それを思うだけで涙が止まらなくなってしまう。

そんな時だった、私の頭を撫でながら私が落ち着くまで待ってくれる・・・


その手が私に差し出されたのは、



「ははは、優しいね。入河ちゃん。」


いつもの、本当にいつもの柊先輩がそこにはいた。


「猫のようになだめても駄目ですよ!!」


少しだけ頭をずらすが、意図はバレているのだろう。

そのまま頭を撫でる手はのけられることはなく、

ゆっくりと、そして優しくなでてくれる。


しばらくこの状態であったが、私が先輩に服を渡すと柊先輩はゆっくりとだが、

服を着替えだした。


今は私と柊先輩しかおらず、


「・・・さっきの試合、俺が走っている姿みたよね?」


「・・・はい。」


「どうだった?リスタートした後?」


「・・・。」


「さすがに気づいてたんだろう?」


「・・・・。」


「いや~もろい膝だよね。」


柊先輩が苦笑していた。

私も気づいていたのだ・・・


柊先輩が掴まれて転びそうになった時に、膝が一瞬抜けてしまうところを

たぶん、あれで踏ん張れなくて致命傷になったんだとわかる。

そしてその後もずっと膝をかばってハードルを飛んでいるところを・・・


「膝・・・かばってましたね。」


その言葉に笑みが返ってきた。


「やっぱり入河ちゃんはよく見てるよ。」


「だって・・・私の尊敬できる先輩で・・・好きな先輩だから・・・。」


最後の言葉は私の心の中でつぶやくにとどめた。

ここで言うのはフェアじゃないし、

今一番ショックなのは柊先輩なのだから・・・


「じゃあ、帰ろうか。」


軽やかに、そして晴れ晴れとした顔をした柊先輩の言葉に私はうなづくだけだった。




気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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