入河ちゃん ~14~
入河ちゃんの話です!
カエルって美味しいんだっと思っていると、
「さあさあ!まだまだメインイベントが残ってるよ!」
嬉しそうに私達に進めてくる天野先輩。
その声にこたえるのはやっぱり柊先輩で、
「まあ、俺はワニ肉は去年食べてるから大丈夫なんだよね。」
そう言って、柊先輩はワニ肉を躊躇なく食べる。
「ほら、坂井ちゃんも食べて食べて!去年食べてるじゃん!」
天野先輩に促されるまま坂井先輩はワニ肉を食べる。
カエルに比べて抵抗が少ないのは去年食べているからだろう・・・
「・・・覚悟を決めなきゃ・・・。」
いよいよ私が食べる番だ。
恐る恐る箸を進めていると、
「鳥のささみみたいな感じで食べやすいよ。」
「そうそう、絶対に美味しいと思うよ。」
柊先輩と坂井先輩が私に大丈夫と言ってくれて、
私も覚悟を決めて食べるのだが・・・
「・・・美味しいですね・・・。」
その肉は本当に鳥のささみのような触感で、
ただ鳥のささみよりもジューシーな感じであり、
美味しく感じるのであった。
「さてと・・・残るは・・・。」
そう、残るはカンガルー肉である・・・
「じゃあ、食べますね。」
やっぱりこういう場面では男らしくて、柊先輩が率先して食べてくれる。
箸で掴んで口に運び、咀嚼すると・・・
渋い顔をする柊先輩!!
「・・・味はどう・」
坂井先輩の言葉にノーコメントで、水を飲む柊先輩。
「感想はどうですか?」
「これは人それぞれによって、感想が変わる味だね。」
「どういうこですか!?」
「俺は苦手な味ってことで・・・。」
「どう苦手なのか教えてくださいよ!!」
「そうよ!ちゃんと教えてよね!!
私と坂井先輩に詰め寄られて、渋々と言った感じで、
「先入観を持つから嫌だったんですけど、ちょっと臭みがある肉ですよ。」
「臭み??」
「ええっと・・・猪肉とかにある臭みな感じです。」
「「猪肉食べたことないし!!」」
私も坂井先輩もツッコム。
「そう言われても・・・まあ、食べてみたらいいんですよ。」
そう言って私達に進めてくるのだが、
「柊君が美味しくないって言ったものを食べる気にはなれないよ・・・。」
「ホントですよ!!美味しくないって知ってて食べたくないに決まってるじゃないですか!!」
「・・・だから、コメントしなかったのに・・・。」
私達3人のやり取りを見ていた天野先輩が急に、
「そんなに?」
そう言ってカンガルー肉を食べるのだが・・・
「・・・まずい・・・。」
ものすごい渋い顔をする天野先輩。
・・・もしかして2人がまずいと言っているのに
食べなきゃいけないのかな・・・
どうやら私だけではなく、坂井先輩も同じことを考えたようで
2人でうなづいて、
「「じゃあ、帰りましょうか!!」」
2人そろって逃げようとする。
だけど・・・
「逃がすわけないでしょう。ささ!食べて食べて!!」
私と坂井先輩の肩をガッシリと捕まえて逃がさない姿勢を示す天野先輩。
すると、
ポン!
天野先輩の頭を柊先輩が軽くたたいて、
「まずいものを進めちゃ駄目でしょう。」
「だって!!分かち合いたいじゃん!!」
「まずいものを?」
「いやいや、これも思い出になるって!!」
「イヤな思い出になりますけどね・・・。」
「それも笑って話せる仲になれればいいじゃない!!」
「・・・どうしても食べさせたいんですか?」
「うん!これを食べてくれたら、入河さんをこれから入河ちゃんって呼ぶよ!」
「ふぇ!?」
唐突にちゃんづけで呼ばれることを言われて、
驚いていると、ここまでで終わりじゃなかったようで・・・
「柊が!!」
「そこで何で俺!?」
思わず目を見開く柊先輩に、
「だって、私と坂井はすでに入河ちゃんのことを受け入れて、
可愛い後輩になってるもん!」
「僕だって、可愛い後輩と思ってますよ!!」
「だけど“さん”付けでしょう?それって距離を感じちゃうよね~、入河ちゃん?」
「そ、それは・・・ちょっと感じますが・・・。」
「じゃあ、決まり!これを一口食べたら柊が入河ちゃん呼びになりまーす!」
「・・・」
急に距離が一歩近づくチャンスだ・・・。
あと、食べるのは嫌なんだけど、興味もある・・・
ここは覚悟を決めるしかない!!!
私はすぐに箸を手に取って、カンガルー肉のから揚げを取り、
一口食べると・・・
「ああ・・・なるほど・・・臭みが凄くて・・・ちょっと食べれないですね・・・。」
柊先輩や天野先輩が言っていたことが実感できる。
好きな人は好きな癖なのだろうけど、私は受け入れきれない味だ。
「さてと!あとは・・・坂井だけだね!」
「ええ!?私も!!」
「4人いて、3人が食べたのに・・・
しかも1年と2年の後輩が・・・。
体育会ってのは、上下関係に厳しいし、先輩風を吹かせるのにな・・。」
「ちょ、ちょっと!何よその嫌な点から突いてくる言葉は!!」
「やっぱり先輩には、先輩らしいところを見せて欲しいよね!」
「「はい。」」
「うわぁ!!柊君と入河ちゃんに裏切られた!!
この薄情者達め!!」
ついに覚悟を決めたのか、箸を手に取って、カンガルー肉へと進めていく。
震える手でカンガルー肉のから揚げを取って、おずおずと口に進めるのだが・・・
「・・・ああ・・・。」
そう言って、水を一気に飲み込んで、どうやら唐揚げを流し込んだようだ。
その目は涙目になっていた。
「ああ、最悪だった・・・。口直しをしたくなるわよ。」
「ホントにね・・。」
「それなら入河ちゃんの所が、喫茶店をやってるから行ってみたらどうですか?」
「ホントに!!じゃあ、今から行こうよ!」
柊先輩の言葉に天野先輩が私の腕を掴んで急かす。
「俺は今から展示の見張りの時間だから3人で楽しんできてください!」
「了解~!さあさあ!坂井も急いでいくよ!ほら、入河ちゃんも!!」
こうして私の柊先輩との文化祭めぐりが終了することになったのだった。
・・・さっき柊先輩『入河ちゃん』って呼んでくれた!
何か・・・照れるな・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




