福留先輩と大賀さんと城田さんと時々、私(松田さん) ~18~
積極的な大賀さん、腹黒い福留先輩、奥手な城田さんと松田さんの話です。
「柊君一緒に帰らない?」
「うん?いいよ。」
ここで声をかけなくても、同じ方向に行くバスにどうせ乗るので一緒に帰ることになると思っていたのだが、
それをハッキリと言葉にした方が、周りの人達にも伝えられると思って伝えたのだ。
バスで一緒に乗るバスを待っている間、
「今日は楽しかったね。」
「そうだね。久しぶりにはしゃいだ気がするよ。」
いつも通りの柊君がそこにはいた。
ただ、私の方がいつもとは違う。
普通に話しているつもりなのだが、心の中では早鐘がなっている。
バスに乗り、私は降りて、柊君はそこにで乗り換える場所まで行く。
私はここから5分ほどの所の家に帰るところだ。
そこで私はあることをつたえる。
「柊君・・・私は柊君のことが好きだから付き合ってほしいの。」
真っ直ぐと柊君を見る。
その表情は揺れているのが分かる。
これなら・・・と思ったのだが、
「・・・ごめん。」
どのくらい経って出てきた回答なのだろうか分からないが、
私は柊君に断られてしまった・・・
「どうして・・・。」
自分で何がいけなかったのかが分からない。
思わず聞いてしまう私。
なぜかは分からないけど尋ねてしまった。
「・・・俺はまだ先輩のことが好きなんだよ。
その思いが強かったから・・・。」
「そっか・・・まだ先輩が好きなんだね・・・。」
別れた先輩か・・・
5カ月経っても消えない思い・・・
ああ、こんな柊君の思いを受けられる先輩がうらやましいな・・・。
「私、帰るね。」
「・・・ごめんね。」
「ううん、こちらこそ・・・。」
歩きながら戻るのだが涙があふれて止まらない。
前告白した時よりもずっと自分が柊君のことを好きなのを再認識してしまう。
5分何てあっという間に着いてしまった。
家にゆっくりと入って、そのまま部屋に入る。
すでに両親も兄も寝ているようで、誰にも会わずに済んだ。
家のベッドで横になっていると
“ピロリン”
その時、スマホがなって、画面にメッセージが浮かぶ。
“無事に帰れた?”
それは柊君からのメッセージだった。
「こんな時にも心配してくれるなんって・・・。」
“無事に帰れたよ。ありがとう”
こんな時に返している私もどうかと思うけど・・・。
返してしまう。
何で私、告白したんだろうと後悔が頭の中をずっとリフレインしてしまい、
結局そのまま、その日は寝ることが出来なかった。
「今日が日曜日で良かった・・・。」
泣き過ごしたせいで目が腫れている。
はぁ~、これからどうしようかな。
部活は引退したし、クラスも違うから会うことは・・・
いや、数学と化学を柊君と同じ先生を選択していたな・・・
数学の時はどういった顔をしていればいいんだろか・・・。
とりあえず、シャワーを浴びて、陸上部のメンバーがいる図書館に行こうかな。
頭に入るかは分からないけど、今年は受験生なのだから勉強をしないといけない。
勉強してこの気持ちを少しでも頭の中から追い出そう。
そう思って、服を着替えて図書館へと向かう。
「・・・どうしてここに福留先輩がいるんですか?」
私達が行っている図書館は区の図書館で、個別のグループでまとめて勉強できる自習室がある。
そのため陸上部でよく一室を借りて、みんなで勉強していた。
当然、去年までは福留先輩がここに通っていたのは知っているけど、
大学生になってからは今まで一度も来たことはなかった。
だから、驚いているのだ・・・
どうしてここに先輩がいるのかと・・・
「それは昨日の結果をきかなくちゃと思ってね。」
・・・この先輩は本当に意地が悪い・・・。
しかも城田さんもいるし、他の部員もここに居るにも関わらず聞いてくる。
少しは人の気持ちを考えて欲しいのだけど・・・。
「まあ、ちょっとお茶でもする。」
そう言われて、私は荷物を置いて、財布だけを持って福留先輩と
近くにある自販機の所へと向かう。
「どれがいい?」
「え?」
「後輩におごるのは先輩の務めだよ。」
「じゃあ、紅茶で。」
そういって、ミルクティーを買ってもらう。
「・・・断られた?」
「・・・。」
はいっと言おうとするのだが、その言葉が出てこなかった。
「よく頑張ったね。」
そう言って、ゆっくりと私を抱きしめてくれる福留先輩。
私はその行為に涙が一気にあふれてきたのであった。
どのくらいその態勢でいたのかは分からないが、
ずっと私を抱きしめてくれた福留先輩。
優しい先輩に感動していたのだが、
「やっぱり坂井さんはなかなか手強いよね~。」
「え?」
「いや、柊君の元カノだけど、知らないの?」
「いえ、知ってますけど・・・。どうして元カノが出てきたのかが・・・。」
「だって、私も昨日告白したからね。」
そういって、舌を出して笑う福留先輩。
え?どういうこと?だって、昨日は私と一緒だったのに
いつ告白するタイミングあったのだろうか・・・
「い、いつ告白したんですか?」
思わず聞くと、
「夜、電話したんだよ。」
え!?驚きが頭に浮かぶ。
「だって、気になるじゃん、松田ちゃんがどうなったかって。」
そんなことを聞いたのかと驚いていると、
「だけど、柊君は何も答えてくれなくってさ。
だから、私も告白させてもらったのよ。だけど、彼から言われた言葉は、
『坂井さんのことが忘れられないから』
っていう、回答だったからね。
ああ、松田ちゃんはフラれたなこれはって思ったのよ。」
・・・私は絶句してしまう。
「もしかしてそれを確認するために告白したんですか?」
「そうよ。だって、気になるじゃない。それにもし松田ちゃんに流れていたのなら
気持ちが動いているってことだし、私にもチャンスが生まれてくるでしょう。
まあ、それにあわよくばっていう思いもあるけどね。」
笑顔で飛んでもないことを言っている福留先輩。
・・・私、この人には敵わないかもしれない・・・。
「それに大賀さん何って、1、2カ月に一度は告白してるみたいよ。」
ここで更に驚いた情報がもたらされる。
自分自身の告白という概念がこの人達とは大きく違うようだ。
「・・・告白して傷つかないんですか?」
「う~ん・・・、、ちょっとはショックだけど、あんまり気にならないかな。
その人とは縁がなかったってことですぐに次に行けるしね。」
「・・・だけど、柊君には何度も告白してるんですよね?」
「そうだよ。何度告白したのか・・・・分からないね。」
「じゃあ、縁がなかったって思わないんですか?」
「ここまでくると・・・意地?」
「意地って・・・。」
「ここまで一人に固執したことは今までないからね。
何が何でも手に入れてみせる!!って思っちゃうのよ。」
「・・・。」
「まあ、松田ちゃんには理解できないでしょうけどね。
それに私も自分がこんなに固執するタイプとは思ってもみなかったわよ。
もっとサラリとした性格だと思ってたわ。」
「・・・じゃあ、なんで?」
「まあ、柊君だからじゃない。」
そう言って笑顔を私に向けてくるのだが、その笑顔がまぶしかった。
「そう・・・ですかね・・・。」
正直私の中で本気で人を好きになった人は柊君が初めてである。
だから、比べようがない。
「あとは、これから松田ちゃんがどうするかだよ。
この恋を忘れるのか、それとも柊君のことを好きでい続けるかを考えないとね。」
「・・・正直わからないです。」
「そう?じゃあ、しっかり悩みなさいよ。
悩んで悩んで自分で答えを出さなきゃいけない問題だよ。
人に相談するのもいいけど、人がこうだから出した答えを
そのまま鵜呑みにしてたら駄目だから。
自分で自分が納得するまで悩んで、苦しんで、そして自分で答えを出しなさい。
まあ、それが1年しか違わないけど先輩からの助言よ。」
そういった福留先輩はその後はたわいもない話や自分の失敗談などで
私を励ましてくれたのであった。
結局私はこの後、悩んでいたものの、柊君に二度と思いを告げることはなかった。
最後の卒業式で、一緒に写真を撮って、ボタンを貰って高校生活を終えるのであった。
「柊君ありがとう。」
「松田さんこそ、ありがとう。楽しい高校生活を送れたよ。」
そう言って、握手を交わして、私達は別々の道を進んだ。
柊君は関西の大学へ、私は地元の大学へと進んだ。
年に一度部活のOB会で会うことが出来るのだが、
その時には、柊君と笑って話せるようになっていた。
すっかりと気心が知れた仲になった時に、
ふとしたきっかけで私が柊君に悩みを打ち明けるたのだが、
優しい柊君は私を後押しをしてくれた。
“人生は一度きりだし、したいことがあるのならやるべきだと思うよ!”
大学卒業後、花の勉強をするために関西に行く時には、
どこに住むべきかなどを親身に相談にのってくれた。
その後は私は、東京へと移り住み、花屋に勤めつつ、
自宅でのフラワーアレンジメントの始めると、
柊君が開業している経営コンサルタントの顧客に送る花をいつも注文してくれるようになった。
「同級生だからね。」
そう言ってくれて助けてくれる柊君に感謝です。
本当に私の青春に色々な体験をさせてくれた柊君。
今では感謝しているものの、当時は本当にお腹が痛くなったり、
もやもやした気持ちにさせられたりと大変だったけどね・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




