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柊君へ  作者: Taさん
第二章
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福留先輩と大賀さんと城田さんと時々、私(松田さん) ~16~

積極的な大賀さん、腹黒い福留先輩、奥手な城田さんと松田さんの話です。

「本当にいいんですか?」


私達は地方大会に進んだ柊君を応援するために隣の県の試合会場に向かった。

今回もまた入河ちゃんのお母さんが運転してくれる車で皆で行くのだが・・・。


「いいのよ。どうせ、車の中は空いてるんだから気にしなくて。」


そう言ってくれるものの、わざわざ試合を観に行くために

車を出して、運転してくれる何ってっと思っていると、


「大丈夫ですよ。母は、昔っからスポーツを観にどこへでもいってましたから。」


入河ちゃんが言うには、お母さんは地元のプロ野球チームのファンであり、

本拠地はもちろんのこと地方球場にまで足を運んで試合を観ているらしい。


更にはもともと陸上部にいたため

自分の娘の高校が地方大会に出るとなると喜んで観に行っているとのことであった。

確か、ものすごい望遠のついたカメラで写真を多数撮っていた。


初めて地方大会に来たのだが、一種のお祭りのようになっていて、

陸上競技場周辺には出店まで出ていた。


「すごいですね!?」


入河ちゃんも驚いているが、ここにいるみんなも驚いていた。

そんな中、私達は、柊君の迎えを待っていたのである。


先ほど柊君に電話をした入河ちゃん。

こういう躊躇がないところが本当にすごい・・・。



「わざわざこんなところまで。」


現れた柊君はいつものジャージ姿であったが、

何だか早い選手のように思えてしまう。

実際にこの大会に出ているってことは早いのだけど・・・。


「応援しに来ましたよ!」


「遠路はるばるありがとう。」


そう言って笑いながら入河ちゃんに返答して、私達をテントへと案内してくれた。

先生が入河ちゃんのお母さんと挨拶をしている中で、

同級生の男子を発見する。


「あれ?大賀さんは?」


「ああ、今回は1人だけだし、後学のために俺が付き人することになったんだよ。」


どうやら今日は大賀さんはいないようだ。


「だったら、私もやりますよ!」


大きな声で入河ちゃんが手をあげる。


「じゃあ、2人にお願いするよ。」


柊君の言葉に『頑張ります!』とグゥを作って答える入河ちゃん。


その後はいつも通りにテントの中に座って、

タイムテーブルと腕時計を眺めながら過ごす柊君。


「柊君は何組?」


「俺は2組。」


「誰か知り合いいる?」


「残念ながら・・・1人強敵がいる。」


そういって、私に見せてくれた組表には柊君のライバルの名前があったのだ。


「珍しいね・・・。」


「そうだね。普通3組あればうちの県の上位1、2、3は

 バラバラの組に分かれると思ったんだけど

 どうやらめんどくさいことになったみたいだよ。」


苦笑する柊君。

相手は全国2位を獲った子だ。


「とりあえず組の上位2位に入れば決勝進出だからね、

 何とか入れるように頑張るよ。」


そう言いながら、おにぎりを食べだす柊君。

柊君は食事を2時間前までには終了するようにしていた。

予選が開始まで2時間半のため食事を開始したのだろう。


どこでも柊君らしいな・・・


そんなルーティンを見ているといつものことを淡々とこなしている柊君であり、

更には本まで読んみだす始末であり、緊張などが微塵も感じられない。


「・・・何でそんなにいつも通りなの?」


思わず口に出る言葉に、


「わざわざ変える必要なくない?」


・・・うん、平常運転の柊君だ。


冷静な柊君を見ていると、試合の雰囲気にのまれていた自分に気づいて

落ち着くを取り戻すのであった。



アップに向かう柊君に2人が付き添い着いていく。


私達も一緒にアップ会場に行って柊君を見るのだが、

いつも通りのアップを行いながら、知り合いらしい人達に話しかけられて、話をしていた。


「他県でも話しかけられるって、やっぱり有名人なんだね。」


城田さんの言葉に私はうなづいた。



柊君達はそのまま荷物を持って、試合会場に向かったので、

私達はスタンドのテントに戻って試合を見守るのだった。


スタートライン付近にはいつも通り、

ストレッチをしながら試合を待つ柊君の姿がそこにはあった。


本当にいつも通りだな・・・


そして、いつも通り勝つのだなと思っていたのだが、

だけど、現実は違ったのである。



「オン・ユア・マークス。」


スターターの声と共に、スタートの構えをする柊君達選手。

そして、ゆっくりと揺れていたのが、みんな制止すると、


「セット。」


その声と共に腰を上げる選手たち。

そして、


「パン!」


その音ともにみんなが一斉にスタートを切る。

その中で、4コースを走っている柊君と3コースを走っているライバルが

共にいいスタートを切って、並ぶように、いや、一歩前をライバルが進んでいる。


だけど、柊はハードルを飛び出してから差を詰めていく後半タイプだ!

ハードルを飛び出すと他の選手を放していく!!!

一台目のハードルでするどいハードリングで一気に前に出ようとしていた。


まさにいつも通りの展開!!


・・・そうなろうとした瞬間である。


ライバルがハードルに引っかかりバランスを崩すのである。

そしてあろうことか・・・


「ちょっと!!!」


柊の左手にライバルの手が掴まれて引っ張れてしまうのであった。


一瞬である。

すぐにライバルは何をしたのかに気づいて手を離したのだが、

そのまま転んでしまう。


当然掴まれて失速した柊は躓いて転びそうになるのだが、

何とか立て直そうとしていた。


だけど、さすがにそんなスキを見逃してくれる選手は誰もおらずに

残りの6人がそのまま進んでいったのであった。


柊も少し戻って助走をつけ直して、飛び出すが、すでに決着はついており、

差は縮まることなく試合が終わったしまったのだ・・・。


当然スタンドはざわつく。

先生も慌てて審判団の方へと向かって行った。


だけど・・・


判定は覆らないだろうな・・・


この場合、どうしようもないとあきらめることしかできないのだろう。


“不幸だった”


その一言で片づけてしまうのかもしれないけど

当事者にとってはたまったもんじゃない言葉だ。


結局、先生の抗議もむなしく裁定は覆らずに柊君は予選敗退となった。



「ありえないんですけど!!!」


酷くご立腹の入河ちゃん。

当事者である柊君が落ち着かせるという始末だ。


だけど、私も入河ちゃんに賛同する。

今回の件はどうしようもないことなのに・・・

せめて救済処置があってもいいのでは?と思ってしまう。



「何で妨害にあったのに、再度試合をとかにはならないんですかね。」


ご立腹の入河ちゃんに、


「まあ、それが陸上の試合だからだよ。よくあるさ。」


柊君のあっけらかんとした態度に益々仏頂面をする入河ちゃん。


「だって・・・だって・・・。」


ついには涙を流し始めた・・・


「これで・・・柊先輩の走りが見れなくなってしまうんですよ・・・。」



その言葉にみんながハッと息を呑む。


そうだった。

これで柊君は試合に出ないのだ。


しかも引退も考えているはずだから、私達と一緒に夏まで過ごすことはない。


「ははは、優しいね。入河ちゃん。」


そう言って柊君が入河ちゃんの頭を撫でると

しばらくは興奮していたが、時間が経つと気持ちも落ち着いてきたようで、


「猫のようになだめても駄目ですよ!!」


そういって、頭を少しずらしたのだ。

ただ、本気で頭から手をのけて欲しいとは思ってないのだろう。

少しだけの抵抗だ。そのまま撫でられているままであった。


「じゃあ、帰りましょうか。」


柊君は先生にそう告げた。

こうして柊君のインターハイ予選は終わったのであった。



気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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