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柊君へ  作者: Taさん
第二章
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福留先輩と大賀さんと城田さんと時々、私(松田さん) ~15~

積極的な大賀さん、腹黒い福留先輩、奥手な城田さんと松田さんの話です。

帰り道、私と柊君、入河ちゃん、城田さんは帰る方向が一緒で、

同じバスに乗っていた。


「しかし・・・本当に大学ではやめちゃうんですか?」


「やめるよ~。」


入河ちゃんはまだまだ納得していないようで、また柊君に確認していた。



「だけど・・・怪我が心配なら引退して手術すればいいんですよ!そうすればまた走れますし!!」


「そんな手もあったね。」


「もう!こっちは真剣に話をしてるんですから!!」


怒り出す入河ちゃんに、するりと交わすような会話をする柊君。

そんな中で、


「推薦をくれた陸上部の顧問からは・・・。」


余りの剣幕で柊君に詰め寄っていた入河ちゃんについに観念したように話し始める。


「日本のトップクラスになれる素質はあるって言われたんだよ。」


「そうでしょう!!そうですって!!」


「だけど、オリンピックに出れるような選手にはなれないって言われたんだ。」


「・・・え?」


「元々あそこの大学の顧問って中学の時から知ってる人なんだよ。

 それで俺の考え方やアプローチについてよくわかっている人でさ、

 だから、あそこの大学にきてその考え方や練習方法を後輩たちに

 伝えていくことをやってほしいって言われたんだよ。

 もちろん、現役の時は自分のことを優先にしてとは言われてるんだけどね。」


「・・・選手としての評価ではないんですか?」


「まあ、次の世代の肥やしになってほしいってところかな?」


「そんなのひどすぎます!!!」


そういって、バスの中で大声を出してしまい、注意されて、バスを降りることになったのだが、

そこからは入河ちゃんが叫ぶのであった。


「なんですか!そのひどい先生は!!!」


憤りながら、更に言葉を続けていく入河ちゃん。


「そんなに怒らなくてもいいじゃん。」


柊君が抑えるように言うのだが、そんなことでは全くおさまらないし、


「いいですか!私は柊先輩に憧れて陸上部入ったんです!!」


「そうなの?」


「そうですよ!!

 部活動紹介で、柊先輩が目の前でハードル飛んでる姿があまりにもキレイだったから、

 私はこの陸上部に入ろと思ったんです!!」


「部活動紹介が終わった後に俺の所まで来て、


 『私も先輩みたいに飛べるようになりますか?』


 って聞いてきたもんね。」


「!?覚えててくれたんですか?」


「もちろん。」


「・・ずるいです・・・。」


下を向く入河ちゃん。だけど、すぐに正面を向いて。


「中学時代はテニス部で、そんなに強くもなかったから、高校ではどうしようかと思ってたんです。

 そもそも運動部に入ろうとも思ってなかったですから・・・。だけど、あの時、柊先輩の姿を見て、

 私もなれるって言われたから私も陸上部に入ろうと思ったんですよ!!!

 いつもすごくキレイな飛び方をしている柊先輩に憧れていたんです。

 私もこんな風に飛べたらなって・・・なのに・・・なのに・・・。」


肩を震わせている入河ちゃん。


「何でそんなことをいう人がいるんですか!!!

 そんな奴、馬鹿なんですよ!!そんな奴の言葉を信じる必要何ってないんです!!

 絶対、絶対柊先輩は勝つんです!すごく活躍するんです!!」


そう言って今度は泣き出したのであった。

柊君は入河ちゃんにハンカチを差し出して、涙を拭いたりしている。


その後は入河ちゃんの家まで、みんなで送ることになった。

その間もずっと入河ちゃんは柊君のことを悪く言った人のことを『馬鹿なんです!』と言っていた。

柊君はずっと苦笑しているのであった。



「ものすごい思い入れがあるみたいだね柊君に。」


「そうみたいだね。」


柊君が苦笑している横で、城田さんが、


「けど、分かるよ、入河ちゃんの気持ち。」


「え?」


「だって、私も入河ちゃんと同じ気持ちでこの部活に入ったんだもん。

 ただ、柊君がハードルを飛んだだけなのに、キレイって思えて、

 私もやりたいって思って部活に入ったんだからね。」


「・・・そ、そりゃどうも・・・。」


「だから、柊君は私達の憧れなんだから、しっかり頑張ってもらわないとね。」


そう言って、城田さんは話を締めたのであった。



その後は、柊君とは違うバスに乗って、城田さんと一緒に帰る。


「城田さんもそんな風に柊君のことを見ていたんだね。」


「そうだよ・・・。いや~、このことを告白する時が来るとは思ってもみなかったよ。」


照れる感じで話す城田さん。


「けど、実は私もあの飛ぶ姿に憧れてたんだよね。」


「やっぱり!!結構みんなもそんな思いがあるっぽいけどね。

 だけど、陸上部に入るまでにはならないみたいだけど。」


そう言いながら苦笑する城田さん。

たぶんあのことを思い出しているのだろう。



それは修学旅行の時の出来事である。


修学旅行は私達はスキーをしに長野に行ったのだが、

その時、早朝練習を陸上部やバスケ部はしていた。


それになぜか、数人の女の子達が参加したのである。

当然、柊君を好きだという子も中にはいたし、

もう一人人気のある男子が陸上部にはいたので

その男子を狙って参加した女子もいた。


1週間の早朝練習だったにも関わらず、みんながずっと参加していたのである。

昼はスキーをして、夜もスキーをした後にも関わらずである。


ただ、本格的な練習には参加はできなておらず、

その練習の辛さにやっぱり入るのは躊躇していいた。


ただ、マネージャー希望者は多くいたのだが、

こちらも大賀さんと別にもう1人いるためみんなお断りをしていた。


その後はなぜか、一部女子達から陸上部短距離の練習風景を見守る女子達が風物詩になっていた。

柊君のハードルを飛ぶ姿を見てうっとりとする集団とイケメンな男子が走る姿を見て

キャーキャーと声を上げる集団で、ちょっと困ったりもしたのだが・・・



「しかし・・・自分の才能に駄目だしされるってどんな気分なのかな・・・。」


「辛いと思うけどね・・・。」


「私もそう思う。」



まさに青春をかけているのに、それを否定されるって本当に辛いのでは?と思ってしまう。

私なんかは、青春をかけるほどの才能も思い入れもないけど・・・


その後も2人で柊君のことを話していると、


「松田さんって柊君のこと好きだよね?」


「・・・う、うん。」


「実は私もなんだ・・・。」


「そうなんだ・・・。」


そう言うのだが、内心では知っていた。

そして、ここでなぜその話題になったのかを考えていると、急に


「お互い恨みっこなしで!」


「え!?」


「私、本当は気持ちを伝えるつもりはなかったの。

 高校は柊君のことが好きだったでと思っているだけだと思ってたけど、

 今日入河ちゃんを見て、いつかちゃんと伝えたいと思ったんだ。

 あんなに真っ直ぐな思いを見ると、私もって思っちゃったんだ。」


はにかむような笑顔を向けてくれる城田さん。


「・・・私も思った。柊君に伝えようと。」


「だよね!だからさ、いつになるか分からないけど、きっと私は思いを伝えるんだ。

 加藤さんもだよね?だから、お互いどちらかがうまくいったとしても恨みっこなしで

 相手の幸せを願おうって思ってね。」


「・・・そういうことか・・・。」


「だけど、私達の前には大賀さんと入河ちゃんっていう、かなり高い壁があるから

 2人とも泣いちゃうことになるかもしれないけどね。」


そういって、ばつの悪い顔をする。

それに私も同意して、笑ってしまう。


「お互い、恨みっこなしで!」


「恨みっこなしで!」


そんな誓いを2人で立てたのであった。



気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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