福留先輩と大賀さんと城田さんと時々、私(松田さん) ~9~
積極的な大賀さん、腹黒い福留先輩、奥手な城田さんと松田さんの話です。
水遊びを終えてから、みんなで夕飯のカレーを作るのだが、
当然これは新入部員である一年生が作っていく。
ここで活躍するのが柊君であった。
「・・・っていうか、これだけいて、料理が作れる奴いないの?」
柊君の質問に誰もうなづくことが出来ない。
ここからは柊君が私達みんなに指示を出していく。
人参とジャガイモを皮むき器で剥く班、玉ねぎの皮むき班、
サラダ用のキャベツの洗い方、野菜の切り方、
更には米の研ぎかたまで教えていく柊君・・・
「一家に一台、柊君だね!」
城田さんの名言にみんながうなづくと、
「絶対に嫌だね。」
断固拒否する柊君。
「・・・これ明日の朝ご飯大丈夫なのかな・・・。」
柊君のつぶやきにみんなが不安を覚えたことは言うまでもない。
後はカレーを煮込むのとご飯が炊きあがるのを待つ間に
柊君がキャベツをざく切りにしていく。
「何してるの?」
傍にいた城田さんが聞くと、
「明日の朝、ご飯とみそ汁、卵焼きと魚、それと野菜って言われてるだろう?」
「うん。」
「その野菜をこれにしようかと思ってね。」
そういって、切ったキャベツを袋に入れて、その袋に塩昆布を入れていく。
そして、その袋を閉じて思いっきり振りだしたのであった。
「そ、そんなので大丈夫なの?」
私が思わず聞くと、柊君は袋を開けて、一枚キャベツを取り出して、
「食べてみてよ。意外と美味しんだよね。」
そう言って、何と一切れを私に手で食べさせてくれたのである!!
し、心臓がバクバクしたな・・・・
「あ、美味しい・・・。」
ものすごく簡単に作られているのに美味しい!!
城田さんも食べさせて貰っていて、美味しいと言っていた。
「これにごま油とか垂らすとまた一段と美味しいよ。」
「・・・料理するんだね。」
私達が本当に驚いていると、
「まあ、簡単なモノは自分で作れるよ。」
本当に何でもないようにいう柊君であったが、
私の中での柊君は一段上がっていたのだが、
これって私・・・どうなんだろうと思う部分も発生していた。
・・・女子として、好きな人より料理できないといけないよね・・・
次の日の卵焼きやみそ汁、焼き魚も柊君が中心となって
料理を作っていき、みんなに好評であった。
今回の陸上部女子の中で、柊君のポイントはうなぎのぼりである。
「料理できる男子っていいね・・・。」
みんなが口にしていて、今後は料理が出来る男子を
好みの欄に入れようという先輩までいたのであった。
晩ごはんを食べ終え、温泉をに入ってきて
私達は女子だけのロッジで休んでいたのだけど、
「あれ?大賀さんは?」
当然ロッジの中にいるべき大賀さんがいなかったのである。
「ああ、今は柊君に告白してるんじゃない。」
そんなことを普通のテンションで言う福留先輩。
私は告白しているということにひどく動揺していると・・・
「大丈夫よ。万に一つもないんじゃない?」
「そ、そうなんですか!?」
「うん、だって、一度すでにフラれているしね。」
衝撃の事実が福留先輩の口から漏れるのであった。
「ふ、フラれてるんですか?大賀さんって・・・。」
「そうよ。まあ、それでもあきらめてないみたいだし、
彼女の中では目的がちがう・・・
いや、本命は付き合えたらで、フラれても柊君に女性として
認識してもらえればとか思ってるんじゃない?」
「・・・女性ですか?」
「そうよ。女性という認識がなかったら付き合う何ってできないじゃん。
友達と付き合うとはならないでしょう?」
「・・・。」
「松田さんも城田さんも柊君のこと好きなんでしょう?」
その突然の指摘に私はビックリするのだが、
更には城田さんも柊君のことを好きだって言うことに驚いた。
何って言葉を言っていいのか分からな今までいると、
「私は・・・好きだと思うんです柊君のことが。
だけど付き合いたいとかいうところまでは考えていなくって・・・。」
「そうなの?傍にいてくれたらな~って思わない?」
「それは思います・・・けど、今でも時々話をするだけで頭パニックってしまうので・・・
前までは意識していなかったから、普通に話せてたんですけど、最近は・・・
一緒にいたいですけど、今の距離感でもいっぱいいっぱいですから、
これ以上いるととても処理できないですよ。体に悪すぎます・・・。」
「そうなの?私なら一緒にいて欲しいと思うけどね。」
城田さんが柊君が好きなことを認めて、それに福留先輩が応える。
「・・・福留先輩は今、柊君が告白されているのって平気なんですか?」
「私?・・・う~ん・・・ただ、やっぱり告白って大事なことだから、
周りに人がいて欲しくないと思うのよね。
だから、告白してるのだから、それを邪魔する気もないってところかしら。」
意外とまともな意見を福留先輩が言ってきたのに驚いていると・・・
「それに私には本命の彼氏がいるからね。柊君は予備だし。
だから、彼氏彼女の関係ではなくていいのよね。」
「・・・いいんですか?」
そういうとフッと笑ってから、
「私って、付き合ったことあるの年上ばっかりでね。
みんな大人なのよね。それに比べて、学校の男子ってみんな子供っぽいでしょう。
全然興味が湧かなかったんだけど、柊君は別格だった。
落ち着いていて、ずいぶん大人なんだよねー。
だから、きっと彼も大人の関係を理解しているし、私はそれで十分なのよ。
まあ・・・告白されたら考えてあげてもいいけどね。」
正直、福留先輩の考えには賛同はできないというのが私の感想だ。
その後は、みんなのことを話しだして、
「私は松本先輩のことを中学に入った時から好きで・・・。」
同級生の女の子がすごいピュアな思いを話してくれた。
なんか、さっきまでの毒々しかった福留先輩の話を洗い流してくれるようだった。
「じゃあ、告白とかしないの?」
「・・・実は卒業式の日に一度してて・・・。」
「「「おおぉ!!!」」」
「フラれたんですけど・・・諦めきれずに受験しました・・・。」
「「「おおぉ!!!」」」
こんなピュアな話はホントに盛り上がっていく。
福留先輩も嬉しそうにはしゃいでるのを見ていると
さっきまでの話は何だったんだろうと思えてくるのであった。
結局、夜中に大きなため息をつきながら大賀さんは帰ってきたのであった。
水辺の傍で2人でベンチに座って
「だいぶ元気になったんだね。」
「大賀さんには心配をかけたね。」
「ううん。柊君が元気になったのなら良かったよ。」
健気な大賀さんを演じているのだが、
ここからどうやって告白させるようにもっていこうかな・・・
「私ね。やっぱり一人だと寂しい時ってあるんだ・・・。」
「そうだね。一人でいる時って寂しさを感じるよね。」
「だよねー。やっぱり人が傍にいてくれないとね。
特に彼氏って心強いと思うんだ・・・。一緒にいて欲しいな・・・。」
そう言いながら柊君に上目遣いをして見つめつつ、
膝をお互い当てる。
少し寒いねと言って、すでに腕をくっつけている。
だけど、これでもこの唐変木は・・・気づかない。
「そうだね・・・。大賀さんならすぐにでも見つかると思うよ。」
「・・・見つかるかな?」
「うん、だって、人気あるじゃん大賀さん。」
「だけど、本当に好きな人ってその中にはいないんだ・・・。」
「大賀さんって好きな人いるの?」
「うん・・・いいなって人はいるよ。」
「そっか・・・。」
・・・どうして・・・あと一息踏み込んでくれないのよ!!
そっかで終わらせないでよ!!
ここから誰?って聞いてくれて、実は・・・っていう話になると思ったのに・・・
「柊君は好きな人はいないの?」
「好きな人?・・・今は何とも言えないなぁ~。」
「なあに、何とも言えないって?」
「俺って人を好きになるのって遅いんだよね。」
「・・・遅いって?」
「何だろうね・・・。
徐々に好きになっていくって感じかな?
だから、今はその前段階にいるって感じかな。」
「ええ!?じゃあ、好きになりそうな人がいるの?教えてよ~。」
「いわないよー。」
「けち~!いつも色んな事を話してるし、相談にものってもらってるんだから、
少しは話してくれたら、私も力になるのにな~。」
「いや~、大賀さんに相談ってのもね・・・。」
言葉を濁す柊君に私はちょっと確信を持ってしまう。
もしかして・・・私なのかな?
それなら相談を私にはできないよね・・・
そっか、それならもう少しじっくりと時間をかけてあげてもいいわね。
柊君から言ってくれるのだから、当然待つわ。
残念でしたね福留先輩・・・
どうやら柊君は私のことを好きになりだしたようですよ。
水着とか頑張ってましたけどね、
私にはおよばなかったようですよ。
顔には絶対に出さないようにしながら、
柊君と夜空の下で話をつづけたのであった。
結局今日は付き合うのはお預けか・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




