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柊君へ  作者: Taさん
第二章
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福留先輩と大賀さんと城田さんと時々、私(松田さん) ~7~

積極的な大賀さん、腹黒い福留先輩、奥手な城田さんと松田さんの話です。

「柊君の彼女が亡くなったらしい!!」



そんな衝撃の情報が陸上部内を駆け巡るのであった。


「どういうこと?」


その情報をくれたのは城田さんだった。


何でも城田さんの友達が柊君の彼女のいる高校に言っており、

葬儀の時に柊君を見かけたらしい。


亡くなったのはGW明けとのことで、ちょうど私が一緒に帰った頃には

柊君は彼女を亡くした直後だったって事か・・・


それで少し暗かったのか・・・


それだと納得いく。

それと大賀さんはこのことを知っていて、聞いてきたのかな?

何か柊君が言っていたかと・・・


それなら私は知らないって答えは正しかったかなと思っていると、



「これはチャンスね。」


そんなことを言うのが福留先輩だ。

正直言って、私の中ではドン引きをしてしまう。


人としての気持ちを考えるとそんなことを間違っても言えないように思えるのに

福留先輩はそのまま口に出してしまうのだ。


「そ、それはさすがに不謹慎ですよ。」


城田さんの注意に、


「そう?だけど、それで大賀さんが動いた理由が分かったわよ。」


「「え?」」


私も城田さんも驚いてしまうと、


「あれ?知らない?大賀さんって柊君に告白したらしいんだよね。

 結局は断られたみたいで、今部活に参加してないのはそう言うことよ。」


そう言えば、ここしばらく大賀さんは部活に来ていなかった!!

体調が悪いと聞いていたので、そうだと思っていたのだが・・・


「断られたのなら、部活にも来づらいか・・・。」


そう言うと、


「そんな子じゃないでしょう。

 たぶん、そんな風に見せてるだけで、すぐに復帰するわよ。

 甲斐甲斐しく柊君に接していくと思うけどね。」



・・・確かに・・・


そう思ってしまう。

大賀さんがそんなことで凹むとは思えなくなっていた。


「ある程度作戦よ。まずは弱っているところにその弱みに付け込んで、

 行こうとしたけど失敗したくらいにしか思ってなくて、

 今も次の作戦を考えてるんじゃない?

 だって、私の知ってるところでは柊君が大賀さんのことを

 俺の女だと言ったみたい噂が流れてきてるもん。」


「「え?!」」


「まあ、ウソなんでしょうけど・・・。

 まずは外堀から埋めに来たんじゃない?

 一つの手が駄目になってもいいように、

 次の手をすでに打ってるって事でしょう。

 

 ・・・何か嫌になっちゃうわ。

 そんな子を相手にしないといけないと思うと・・・。」


そう言いながらも福留先輩は柊君を狙うことをあきらめていないようで、


「私も何か考えないとね・・・。」


そう言って、練習に向かったのであった。


「・・・肉食女子ってまさにピッタリな言葉だね。」


福留先輩が出た後、城田さんがそう漏らすと一緒に苦笑するのであった。





柊君は最初は怖いと思っていた。


それは事実である。


だけど、うちの学校では入学して応援団による放課後に居残りでの

校歌や応援歌などの練習をする風習がある。


大声で叫ぶようにしなければいけないのだが、

頑張って声を出していたつもりであったのだが、

声が出てないとのことで・・・


「城田、お前放課後に応援団の部室に来い!」


と言われたのであった。



正直友達について来てもらいたかったのだが、

みんなが怖がっているため無理にお願いすることもできずに

私は1人で応援団の部室に向かった。


するとそこでは、和気あいあいとしている団長や旗手の先輩がいた。

私が部室にたどり着いてもその笑顔は絶えることはなく、

私を笑顔で迎えてくれたのだが・・・


「城田さんって、可愛いよね。」


唐突にそんなことを言ってくる団長、

それに同意するように旗手の先輩も


「新入生の中だと一番だよね。」


そういって、近づいてくるのであった。


あまりの恐怖で声すら出なかった。

扉は空けており、逃げだそうと思えば逃げ出せるのに

それができないのであった。


ただただ、その場で立ち固まっていると更に言葉は続けられる。


「彼氏っているのかな?」


「俺か団長どっちかと付き合わない?それとも両方でもいいよ。」


ニヤニヤしながら私の肩を掴んでくる先輩に

思わずその手を払いながら、


「いやぁ!!!」


そう叫ぶ。


「まあ、落ち着いてよ。ここにジュースもあるしさ。」


そう言って、ジュースを差し出してくるのだが、

私の中では嫌な予感しかしない。


何か盛られてるのでは!!


ジュースをコップに入れる処も見ていないし、

いつから用意していたか分からないジュースに戦慄を覚える。

そもそも先輩達の分は用意されていないって・・・



そんな時だった。


「何してるんですか?」


そこには柊君が顔をひょっこりと出してくれたのであった。


「なんだお前は!?」


激怒する先輩に、柊君は、


「普通悲鳴が聞こえたら心配するでしょうに。」


憶することなく先輩に声をかけていた。そして、


「彼女は今日陸上部の体験入部する予定なんですよ。」


そういって、私の前まで来て、先輩達との間に立つのであった。

私を遮ってくれて、先輩の目に触れないようにしてくれた。


しばらく罵声が飛び交っていたのだが、しばらくすると・・・


「・・・○○中の柊か!?」


団長の方がそう言うとその後2人の先輩は静かになったのである。


「あんまりはしゃぎ過ぎないようにしてくださいね。」


柊君がそう忠告して、私と一緒に外に出てくれたのであった。


「あ、ありがとう。」


「何か、大変なことに巻き込まれたね。」


そう言って、苦笑しながらも、


「気をつけて帰りなよ。」


部室棟から外まで見送ってくれたのであった。


あの後は柊君の関係者ということで、

応援団の先輩達からはこれ以上絡まれることはなかった。



あの時、私は助けてもらったのだから、

柊君にはいつか恩返しをしなければと思っていた。


今回、そんなショックなことがあったのなら、今こそ恩を私は返す時だ!!


部活を終えて、私は部室に残って、男子が終わるのを待っていた。


すると柊君が1人自転車置き場の方へと歩いていくのを見かけて、

私は急いで部室を出ていくのであった


「偶然だね!柊君!」


「城田さんも部活終わり?」


「そう。一緒に帰ろう。」


「ああ、いいよ。」


こうして私は何とか柊君と一緒に帰ることに成功したので、

私はある御店に柊君を連れていくのであった。


そこは電車の駅の近くで、夜も11時まで開いているかき氷屋さんだ。



「こんなお店があるんだね。」


柊君が驚きながら店内を見ている。


「ここのメニューは200種類以上あるから、

 迷うよ~メニュー選びに。」


ここの売りの一つがメニューの多さがある。

私は子供頃から来ているが、今だにすべてのメニューは食べていない。


「私、ここのかき氷を制覇するのが夢なんだ!!」


「そうなんだ。じゃあ、今日のは交換して食べようか?どれを食べてない?」


「ええっとね・・・杏仁とか、レアチーズケーキ味とか食べてないよ!!」


「・・・なかなか、かき氷では聞かないメニューだね・・・。まあ、それでいこうか。」


そういって、柊君が注文をしてくれた。



待っている間は勉強の話や今度あるキャンプの話をしながら

盛り上がり、更には届いたかき氷を食べながら盛り上がった。


「・・・レアチーズケーキ味って・・・


 レアチーズケーキがのってるかき氷だったんだね!!」


苦笑しながら食べてる柊君で、味の感想は、


別々に食べた方が美味しいと思うという感想に私も同意するのであった。


会計をするときには、柊君が出そうとするので私が出そうとしたのだが、


「俺バイトもしてるしね。」


そう言って、私が出すのをどうしても嫌がったのでごちそうになった。

その後は私の家まで送ってもらったのだが、


「・・・何か気を遣わせたね。」


「元気になってほしいからね。」


柊君に対して、本心で私は話す。


普段通りにふるまう柊君だが、

やっぱりどこかで無理しているのが分かるから。


「・・・何でみんな知ってるんだろうか?」


「それは柊君が人気ものだからだよ。」


「人気者?俺が?」


「そうだよ。ちょっとヤンキーが入ってて近寄りがたい雰囲気を醸し出しているけど、

 実はいい人だしね。」


「いい人か?」


「少なくとも私を助けてくれたからね。私の中ではいい人だよ。」


「ああ・・・そんなこともあったね。別に気にしなくていいのに。」


「私は気にするよ。私の中ではヒーローだからね柊君は!」


「ヒーローって・・・。」


「ヒーローじゃん!ピンチの時に現れてさ。だから、私に出来ることをしたいの。

 今度は私が助ける番じゃん!」


「あ、ありがとう。」


むむむ・・・あんまり柊君に思いが伝わっていないように思える。

どうすればこの気持ちが伝わるのかを考えて・・・


よし!


柊君に抱きついてしまう。


「なぁ!?」


おどろく柊君だが、


「こうやって背中を撫でてあげるとうちの妹たちは泣き止むから。」


「・・・俺は妹さんか・・・。」


「だめぇ~?」


「いや・・・男としては嬉しいんだけどね・・・。」


しばらく抱きしめてあげた後、私はゆっくりと離して


「また抱きしめてあげるね。」


「・・・抱きしめられないように元気になります。」


「何でよ~!せっかく頑張ったのに!!」


「ありがとう。」


さっきまで曇っていた笑顔が、いつも見る笑顔に変わったのを見て

私はやって良かったとこの時は思った。


全然意識をしてなかったが、私が男子というものを理解して、

柊君にしたことを恥ずかしく感じるのはもう少し後のことであった。


やっぱり私って天然なんだろうな・・・



気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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