福留先輩と大賀さんと城田さんと時々、私(松田さん) ~6~
積極的な大賀さん、腹黒い福留先輩、奥手な城田さんと松田さんの話です。
「福留先輩、先輩達で話さなくて大丈夫ですか?」
「今日は新入部員の歓迎会だからね。
新入部員と話さないとダメじゃない。」
分かりやすいくらい露骨に私の存在を
嫌がる大賀さんに思わず笑ってしまう。
それはお互いさまか・・・
柊君にボディタッチをどちらかがすれば必ず相手もボディタッチをしてくる。
特に大賀さんの場合はその大きな胸を柊君の腕や背中に当てるのは
良く自分のことを理解していると感心してしまう。
ただ、私は私の良さを知っている。
小柄な私は、大柄な柊君とは30センチほどの身長差がある。
私が腕を掴んで、柊君を見上げると・・・
ほら・・・
思わず、笑みが出そうになるが、そこはグッとこらえる。
男子って、上目遣いで見られれると反応しちゃうんだよね。
それは柊君も一緒で、一瞬だけど私に反応したのは見逃さない。
・・・大賀さんも気づているみたいだし・・・。
一瞬、張り付いた顔を見逃すわけもない私。
すぐにまた笑顔に戻ったけど、一瞬素がでてたわよ。
まあ、これでお互い認識したわ。
お互いが恋敵であることを。
二次会のカラオケに行った時も当然柊君と同じ部屋に行ったのだが、
「福留先輩って大学生の彼氏いるって本当ですか?」
にっこりとしながら私を追い込むように大賀さんが言う。
完全にこいつはタイミングを見計らっていたのだろう。
私が、先ほどから柊君と膝を合わせて話していたり、
これからデュエットして歌おうとしたところで言ってきたとことなのだから。
「いるよ・・・。だけど、イマイチうまく言ってないんだ。」
そういって、私は悲し表情をしながら柊君と大賀さんを見る。
当然、大賀さんならそこを突いてくるよね~。
だけど、そう言われるのも想定のうちだよ。
苦々しい顔をしている大賀さん。
こうやって相談すると距離が一段近づくってことを知ってるんだろうね。
いつもは自分がする側なんだろうけど、
される側には回ったことがないんだろうね。
私の思い通りに動いてね。
その後は大賀さんから、
「ここで話すよりも彼氏さんと話をした方がいいんじゃないですか?」
といってくれたので、
「柊君、男性としてこんな時はどうして欲しいかな?」
と相談するネタまで提供してくれたのであった。
2時間ばかりのカラオケもおかげさまでずっと一緒に入れたし。
帰りも私の家まで送ってもらえることになったしね。
相談って柊君のまじめな性格には使えるな~。
GW明けになると柊君とついに一緒に帰れるチャンスがやってきた!
いつもは一緒に男女練習をするとは言え、
基本的には女子の方がかなり早く終える。
男子はそこから1時間くらい練習をしているのだが、
その日は女子もいよいよ迫ったインターハイ予選に向けて
追い込みをしており、男子と同じ時間に練習終了となったのだ。
「松田さん、今から帰るの?」
制服に着替え終えて部室を出たタイミングで
ちょうど柊君が部室の前を通り、私に話しかけてくれた。
「うん。」
「そっか、じゃあ一緒に帰る?前に約束してたよね?」
柊君覚えててくれたんだ!!
私は一段テンションが上がって、すぐに、
「お願いします。道教えてね。」
そう言って、2人で話しながら帰っていった。
ただ、帰りしなどこかしら柊君に元気がないように感じていた。
けど、結局はそのことに触れることはなく、
談笑をしながら私の家まで送ってもらって、
「それじゃあ、お休み!」
「うん、ありがとう!柊君、気をつけて帰ってね!」
そう言って、別れたのであった。
この日はすぐに矢田さんにメッセージを送って、
私の話を聞いてもらったのであった。
気分よく次の日を迎えたのだが、
すぐにとある子から呼び出しを受けてしまう・・・
「昨日、柊君と一緒に帰ったの?」
朝登校するとすぐに大賀さんから声をかけられた。
挨拶もすることなく、いきなりそんな風に尋ねられたのである。
「う、うん。帰るタイミングが一緒だったから・・・。」
「それは知ってるんだけど・・・柊君何か言ってなかった?」
「え?いや、普通にお話してただけだよ。」
「本当に?」
「う、うん・・・。」
何か鬼気迫るような雰囲気を出す大賀さんに少し引きながら回答をする。
「そう・・・なら、いいよ。」
そう言って、立ち去ろうとしたところで、
「・・・松田さんも柊君狙ってるの?」
大賀さんの言葉にビクリと反応してしまうが、
ここで立てつかない方がいいと思って、
「・・・ううん、違うけど・・・。」
「ならよかった。私の敵じゃないってことだね。」
そういってニッコリと微笑んでいく大賀さんに少し恐怖を感じるのであった。
私が彼女に柊君のことが好きと答えたら、
彼女は一体私に何をしてきたのだろうか・・・
「大賀ちゃん!柊君の彼女が亡くなったらしいよ。」
昨晩、部活を終えて帰宅した私のスマホが鳴ったので出たら、
そんな情報が私にもたらされたのであった。
「柊君落ち込んでるよね。」
「きっとそうだよ!可哀想だね柊君!」
「・・・私、何か出来るかな?」
「大賀ちゃんなら、すごい励ましになるよー!優しいしさー!」
「そんなことないよ。けど、何を話していいのか分からなくて・・・」
「それなら私も明日一緒に行くよ!!」
そういって、友達が私を激励してくれて、
明日一緒に行ってくれることになった。
先日柊君の彼女に忠告を友達がしたせいで、
私の立場が少しだけわるくなったのだけど、
今回の件であれば、自然に心配が出来て、距離を詰めることができるわ。
通話を切りながら、
この情報はどこまでの人が知っているんだろうか?
そのことを考える。
今日一緒に松田さんが一緒に帰っていたから、
もしかしたらこの情報を聞いているかもしれない。
そしたら、きっと松田さんのことだから、一生懸命励ましてるだろうな・・・
柊君が話してないことを願って、
私は明日つける香水をどうするかを考えていた。
すぐに電話はしない方がいいかな・・・
どうしてこの情報を私が知っているかを聞いてくるし、
私ではなくて、友達が矢面に立ってくれた方が、何かと都合がいいしな。
とりあえずは・・・明日のシミュレーションをしておこう・・・。
福留先輩がこの情報を知らなければ一歩リードだわ。
それと私が部活に出ていないのをいいことに、
ちょっかいを掛けようとした松田さんには
一つ釘をさしておかないといけしね。
結局、松田さんに聞いたところでは、どうやら何も話してないようだ。
それは・・・
まあ、当然か・・・
自分の彼女が亡くなったことを簡単に話すとは思えないし、
なら私がまずは一歩リードさせてもらうわ。
すぐに柊君のクラスに行くとまだ登校していなかったので、
昇降口へと向かい、柊君を待っていると柊君がいつも通りの様子で登校してきた。
「・・・あまりいつもと変わらないね?」
友達の発言だが、ここで私は、
「そうかな・・・やっぱり暗いよ。いつもよりも随分。」
「さすがは大賀ちゃんだね~。」
驚いたような表情を友達は浮かべた。
すぐに柊君が近くに来たので、私と友達は声をかける。
最初は友達が声をかけて、会話を促し、すぐに私が代わってもらう。
ゆっくりと歩きながら、柊君と話す。
ここでの話の内容から言えば距離を詰めても問題ない話の内容だ。
それは柊君も理解しているのだろう。
私が距離を詰めても何の抵抗もなく話をしてくれる。
ほのかに匂う柊君の石鹸の臭いが鼻をくすぐるほどだ。
「・・・私で良ければいつでも連絡してね。」
そう言って、柊君の手を握る。
「ありがとう。大賀さん。」
その笑顔がどうやら私との距離を一歩近寄れたことを
確信して柊君と別れたのであった。
「大賀ちゃんどうだった?」
「うん・・・やっぱり柊君無理してたよ。」
「そうだよね・・・。」
「少しでも柊君の心の負担を軽くしてあげられたらいいんだけどね。」
「きっと大賀ちゃんなら出来るよ!私に出来ることがあったら言ってね!」
優しい友達を持って本当に良かったと思いながら、
私も自分の教室へと向かうのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




