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柊君へ  作者: Taさん
第一章
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原さん ~2~

とりあえず原さんの最終話です。

私はクラスメイトみんなからいじめを受けていた。

見てみぬふりをする生徒もいたのだけど・・・


そんなある日、朝来て、一番に


「まだ来るのかよ・・・。」


私を見た男の子が大きな声でいうのであった。

いつも通り、教室では陰湿ないじめを受けていた。


「あ、原さんってこのクラスだったんだ。」


私の席は廊下側で、たまたま窓を開けていたところを

柊君がその横の廊下を通った時に、私に話しかけてきたのであった。


「う、うん。そうだよ。」


返事がどもってしまう。

私の心の中で、私のいじめが柊君にまで行ったらどうしようかと思っていた。

柊君にまで被害が・・・そんな不安にさいなまれていると


「そう言えば、竹中、次に時間の国語の教科書忘れたんだよな?」


柊君の後ろにいた竹中さんに急に柊君が話しかけた。


「そうそう。忘れたんだよね。」


「原さん、竹中に国語の教科書貸してくれない?」


「え、うん・・・。」


思わずそう言って、後悔をしてしまう。

これで金子君だけではなく、竹中さんまで迷惑をかけてしまうからだ。


「ありがとう!原ちゃん!!」


そんな心配をよそに竹中さんは明るく嬉しそうに話しかけてくれた。

(初めて話したはずなのに、原ちゃんと呼ばれるのは・・・。)


そして、それは起きた。

私と柊君たちのやりとりを見逃すはずがないのである。


「柊、お前、ブスと知り合いなのか?」


そこには西尾さんの取り巻き男子がヘラヘラと笑いながら柊君に近づいていく。

私の頭には黒い影がどっぷりと侵食してきて、意識が遠のくような感じがする。


頭が重い・・・


動悸が起きてうまく呼吸ができない・・・


どうしようどうしようと思っていると柊君が、


「お前さ・・・


 誰にブスって言ってんだ?」


そう言って、近づいてきた男の子の胸倉をつかんだのである。

そして、そのまま壁まで押して、男の子の体を壁に叩きつける。


「クズが。」


短いが激しい怒りを込めた柊君のどすのきいた声が響くのであった。

そんな中で、急に竹中さんが私に、


「ねえ、原ちゃんってさ、テニス部?」


そう言いながら、私の机の傍にあるラケットを指さす。

この喧騒とした空気の中で、そんな突拍子もない質問がくる。

思わず、素の状態で応えるのだが、


「あ、うん。」


「そっか・・・。」


そういって、西尾さんの方を向いて、

少し考えてようなそぶりをしたと思ったら、すぐに


「柊、コレ仕切ってるのは君の元カノだよ。」


そう告げるのであった。


元カノ?・・・


そう言えば、西尾さんが嬉しそうに柊君のことを話していた時期があった。

どうやらその時、付き合ったらしいのだが、すぐに別れたって聞いていたな・・・


「・・・西尾、お前か?」


柊君が怒りが止まないまま西尾さんに声をかけていると、

西尾さんはおびえたような顔をしている。


「に、西尾ちゃんは直接何かしてないよ!」


西尾さんの傍の子がそう告げると、


「そうだよ!証拠、証拠はあるのかよ!!」


今度は別の子がそう騒ぎ出したのであった。

しばらく西尾さんの取り巻きの子達が騒いではいたのだが、


「くだらないことを言ってんじゃねえよ!!」


柊君の声を聞いて、騒いでいた子達が一斉に静かになっていく。


「わ、私達は加わってないもん。」


西尾さん達とは違うグループの子達が

泣きながらそう訴えてくるのだが、


「いじめを見てた奴も同罪だろ?何もしてないってことは止めようとしなかったんだろう?」


あっさりときっぱりと切り捨ててる柊君に対して、

泣き出す女の子も出てきたのだが、


「何で泣いているの?泣く理由何ってないだろう。」



厳しい声と共に冷たい視線が飛んでいくのであった。

そして、泣いていた西尾さんにも・・・


「お前さ、前も同じようなことしてたよね? 

 それで俺はお前のそんなところが嫌いだっていって、別れたよな?

 全然変わってないんだな。」


本当にバッサリと切り捨てていたのであった。

異様な空気になってしまったところで、竹中さんが、


「柊、この子達に何を言っても無駄だよ。ここからは大人に任せれば良いんだよ。

 内申書にキッチリと書いてもらわないと、なーんにも響かないよ。」


そう言って、竹中さんは傍にいた子に先生を呼んできてと伝えたのであった。

当然、クラス中が騒然とする。内申書にこのことを書かれる何って思ってもいなかったのだろう。

ある子は驚き、別の子は泣きだしたりもする、終いにはあいつが悪いと言い出す子も現れる中で、


「黙れよ!お前ら!!」


今度はドスのきいた声を竹中さんが出すのであった。

ただ、一瞬だけ怖い顔をしていた竹中さんであったが、次の言葉冷静ではあったのが

ものすごく冷たい響きのある声で、


「覚えときなよ。原ちゃんに何かするのなら、あたしはもちろん柊も黙ってないからね。」


そしてニッコリ笑う竹中さんが、私は本当に恐ろしい・・・。

守ってもらっている私が恐ろしいのだ。ほかの子達はホントに恐ろしいだろう。


その後は先生たちが大騒ぎになった。


穏便に済ませようとしていた担任に対しては、私は失望していたのだが、

学年主任である先生が私を呼んで、


「いじめられてたのか?」


真っ直ぐ聞いてきたのである。

担任が持っていた事なかれ主義とは全く違う

怒りを持っている学年主任の先生に私は、


「・・・いじめられてました。」


そう答えるのであった。

こう答えることで精いっぱいであった。

なぜか、背中を押されたような気持になり、目から涙が止まらなくなったのである。


落ち着くまで待っていた先生は、私の話をしっかりと聞いてくれて、

私の上履きや駄目にされたノートを先生に提出すると本格的に動き出したのであった。


ただ、解決したかと言えば解決はしなかったというのが私の本音である。


今回の件で私はクラスで


“アンタッチャブル”


誰にも触れらることはなくなったのだ。


ただ、他のクラスの子達はそんなことはなく、柊君や柊君の友達、

その後はその友達の友達が話しかけてくれるようになった。


だから、3年生になって、クラスが別れるとそのクラスでは

クラスメイトと話すことが出来るようになったのであった。


私は柊君に出会ったことで救われた。


学校生活もそうなのだが、勉強もそうだ。


塾で柊君や竹中さんに教えてもらっていたのだが、ある時、


「原さん、勉強方法を変えてみたら?」


「変える?」


「そうそう。たぶん勉強方法があってないんだよ。勉強教えていると

別に地頭が悪いとは思わないから、たぶん今の勉強法があってないだけだろう。」


そんなことを唐突に言われて、柊君の勉強法や竹中さんの勉強方法を教わったのだが、

ここから少しずつ上がっていったのであった。


こうなるとすべてが好転してくる。


クラスでも頭がいい方になった私には、クラスメイトから尋ねられたりするし、

家でも両親に笑顔が増えていった。成績のことでもそうだし、何より友達のことを

両親に話すことができるようになったからだ。


私の人生で転機をくれた柊君を今でも本当に感謝している。


私は今は中学教師をしている。

きっかけは柊君人の人生を変えることをしたいと思った。


そして、私みたいに容姿が優れていない人間でも笑顔になれるし、

楽しく過ごせるんだよと伝えていきたかったからだ。


それにもしいじめられている子がいたなら支えてあげたい。


柊君にしてもらったことを今度は、私が次の世代の子にしたい。



修正・追加していきます。

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