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柊君へ  作者: Taさん
第二章
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児玉さん ~7~

柊と児玉さんの最終話です。

年が明ける頃になると、にわかにある動きが大学内にあった。


私は、親が経営する会社への就職が決まっている。

実際に、秋にあった新入社員の顔合わせ会にも参加したりしているのだが・・・



「あ、あのさ・・・児玉さん・・・。」


そう言ってきたのはいつも私が授業に出ると話しかけてくる3人組の女子達の1人で、

何か言い難そうにしながらも近づいてきた。



「それで、話しってなに?」


教室では話にくい感じであったため校内のカフェテリアに行き、

2人だけで話を聞くことにしたのだが、


「・・・実は就職が決まってなくて・・・。」


ああ・・・そういう時期なのか。

すでに次の卒業生のリクルートが始まりだしており、

そのため今年卒業の子の枠はなくなって、

もしくはあってもかなりハイクオリティを求める求人しかないと・・・。


「それで私の親が経営する会社に入社できないかってこと?」


「・・・そうなの・・・。」


そう言ったと思ったら、いきなり地面に両膝をつけて

私に頭を下げる彼女。


「お願いします。何とか、何とかお願いします!!」


「ちょ、ちょとやめてよ!頭を上げてよね!!」


慌てて、立たせて席に戻すと、


「一応、今日にでも父にでも話をしてみるわ。

 ただし、期待はしないでね。」


そういったにもかかわらず、感謝をし続ける彼女をみていると

これで約束が取り付けれなかったら私はひどい言われようにされるんじゃないのかな?と

不安に駆られるのであった。



夕飯を実家で食べることを告げて、久しぶりに実家に帰る。

ちょうどタイミングよく、兄と母も海外から帰国しているタイミングだということで、

久しぶりに家族みんなで食事をするため、父を待ってからの食事となったのだが・・・


・・・お母さんってこんなに弱っていたの?


兄はピアニストとして世界中を回っている。

そのマネジメントの仕事も父の会社ではやっており、

マネージャーを付けているだのが、

ハッキリ言ってメンタルが弱い兄は、

どこでの公演であっても家族が近くにいないとダメな人間なのだ。



そのため私は学生であったため母が一緒に年中海外を同行していたのだが・・・


「お母さん、大丈夫?」


「私は大丈夫よ!毎日素敵な音楽を聴けるのよ。」


嬉しそうに兄が弾くピアノの音色が聞けることを話す。

たしかに好きな音楽に携われるのならいいかもしれないけど・・・

今にも体調を崩しそうになっていては・・・



父が帰っててから、家族団らんでの食事は美味しかった。

美味しかったので、家政婦に美味しかったと伝えたのだが、

えらい驚かれたのはちょっと気になるのだが・・・


私、そんな言わないキャラだっけ?


ちょっと釈然とはしなかったのだが、

これからはちゃんと言葉にして伝えようと思う。

・・・こんなことを年下に教わるとはね・・・。



お茶を飲みながら今日依頼されたことを父に話すと


「そうか。まだまだ景気がいいとはいえ、就職口が決まらないものもいるのだね。

 いいぞ。人事に話ておくから、友達には履歴書を送るようにいいなさい。」


「ありがとうございます。」


これで肩の荷がおりた。

何とか恨まれずにすみそうだわ。


そんなちょっと油断した時に急に父が私に、


「私からもお願いあるのだが・・・。」


「なに?私に出来ることであれば・・・。」


まあ、交換条件というところだろうか?

なんだろうと思っているととんでもないことを言ってきたのである。



「お母さんと代わって、兄のマネージャーをやってくれないか?」


とても言い難そうにしているのだが、それは言いにくいだろうな・・・。

だけど、確かにあの母をみたら私が同じ立場だったらいうだろうな・・・


「たのむ!お前しかいないんだ!!」


兄は頭を下げて私にお願いをする。

別に兄とは仲が悪いわけではなく、むしろ仲がいい方だ。


幼い私と一緒にいっぱい遊んだり、勉強を教えたりしてくれた。

何より、留学を後押ししてくれたのは兄であった。


だから・・・


私も力になれるのならと思ってしまうのだが、

柊とのことが、その答えを詰まらせてしまう。


・・・私、ずいぶん変わったな・・・。


きっと柊と出会う前であれば私はすぐに返事をしただろう。

だけど、今は天秤が大きく動くのは感じるのだが、

どちらかに決着をつけることはできなかった。


「また、後日でかまわないから返事を聞かせてくれ。」


兄も父も私の意見を尊重してくれる。

だから、ゆっくりと考えて欲しいと時間をくれたのだ。




「これ読んだ?」


そう言って、私の家に来た柊が二冊の本を私に渡してきた。


「え!?どうしたのこれ!!私が探してなかたった奴じゃん!!」


「ここに来る前に本屋に寄って、あったから買ってきた。」


その本は数日前に販売されて、すぐに完売していた本だ。

大学の生協でも大手書店でも売り切れており、

追加がいつ入ってくるか分からないと言われて

しばらく読めないなと思っていたのに・・・


私が何気なくつぶやいた言葉をしっかり覚えていてくれたんだ・・・柊・・・


さも偶然に見つけたと言っているのだが、

このカバーを付けるのは、この近隣の書店ではしないカバーで、

電車に乗って何駅も離れたところにある書店のカバーだ。


それにこの本は一冊がハードカバーで高い。


それを2冊・・・一組買うのは高校生が即決できる値段ではない。

きっと、探し回ってくれたんだな・・・


「嬉しいよ。ありがとう。」


素直な思いを柊に伝えると、


「お、おう・・・。」


そういって、顔を赤くする。

・・・可愛らしいな・・・・


たぶん、他の人からすれば些細なことなのかもしれないけど

私にとっては、すぐ幸せなことである。


柊といると本当に幸せだ・・・


私はすごく実感する。


可愛らしい柊を見ていると自分の気持ちを抑えきれずに抱きしめてしまう。

こんな自分がいる何って本当に知らなかった。


知らない自分がみつかり、更にはこの柔らかく幸せな時間を柊がそばにいれば過ごせるんだな・・・




柊が帰り、1人部屋にいると、


「あれ?さっき使ったサイコロが・・・。」


柊と双六をなぜかしていた。

この歳になって双六をするとは思わなかった。


だけど・・・たかだか双六で、大笑いをして、拗ねて、怒ったりして・・・


本当に楽しかったな。


転がっていたサイコロを手に取った時に、



「運命をサイコロで決めようかな・・・・。」


そんなことを頭がよぎったのである。

ここに偶然あったサイコロ・・・いや、必然だったのかもしれない。


私では決めれない。


柊といる人生か、兄といる人生か・・・


「奇数が柊、偶数は兄で。」


そんなことを決めて、サイコロをなげたのだが、

そのサイコロが指にひっかかって、狙っていたところには転がらずに、

“たまたま”換気のために開けていた窓からベランダへと

転がっていったのであった。


「なかなか、神様も焦らすな・・・。」


大きなため息をついて、ベランダへと向かうのだが、

一歩一歩がほんとうに遅いし、重い。


真っ直ぐ歩いてるよね?


そう言いたくなるくらい、グラグラと頭が揺れているように感じるのだ。


それでも結果をみなくてはと這う這うの体でベランダに向かうのだが・・・



「・・・え?ない?」


今、ベランダに転がっていったはずのサイコロが見つからないのである。

私はスマホを取ってきて、照らしながらベランダを探すのだが、

どこにもサイコロはなく、見つけることは出来なかった・・・



「ひどいなー神様・・・自分で決めろって?」


どうやら私の人生は神様は決めてくれないようだ。

・・・日頃の行いが悪かったのかな?


だけど、確かに自分の人生なのだ。


誰かに決めてもらうようなものではない。


だから、私は・・・





「ここは泣きながら、彼女を引き留めるところじゃないかな?」


今、柊と私は空港にいる。

私が選んだのは兄と一緒にいることであった。


「じゃあ、逆に言うけど彼女の方が泣くもんじゃないの?」


「残念、私は柊とは別れたのよ・・・。」


「じゃあ、なんでお別れのハグをしているだか・・・。」


「・・・お姉さんだからね。お子ちゃまを慰めるのはお姉さんのつとめよ。」


そう言いながら柊の胸の中に私は頭をうずめる。


今にも泣きそうになっている私だから・・・


最後の別れに涙は相応しくない・・・


「・・・素敵な彼女を作りなよ・・・。」


「そうですね・・・。」


「・・・いい男になりなよ。」


「児玉が後悔するような男になっておくよ。」


「・・・私に送る言葉ないの?私ばっかりだよ。」


「すぐに俺よりも良い人だ見つかるよ。」


「・・・見つからないかもしれないじゃん。」


「そう?あんな百面相な顔をして、一緒にいて楽しい人はいないけどね?」


その言葉を聞いた時、言葉が私の中で詰まってしまう。

私が今まで知らなった自分を教えてくれたのは柊なのだから・・・



「私も楽しかったわ。」


「なら、良かった。」


・・・これ以上柊といると離れられない・・・


そう感じると最後の思いを振り絞って、柊から離れて最後に交わしてから、


「じゃあ、いってきます。」


「いってらっしゃい。気をつけて。」


そういって、いつもの笑顔で私を柊は見送ってくれたのであった。



気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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