大分さん ~3~
これで大分さん終了です。
次からは別の人に代わります。
同じ県内であるものの、私は次の転校先が私立中学校だったため
授業がすでに公立中学校よりも進んでおり、全然ついていくことが出来なかった。
前の学校では半分より上にいたんだけど、
この学校に入って、私は下の方の順位になった。
元々、公立からの転入であったためか、
どこか上から見られているように感じていたのだが、決定的になった。
クラスメイトの態度は、私と会話をしようとせずに、班を作る時にも
露骨に避けられるようになった。
教室内でも
「大分さんって、やっぱり公立よね。」
「どうしてうちなんかに来たのかしらね?」
小声ではあるのだろうけど、私に聞こえるように囁かれていた。
こうなると学校に行くのが、どんどん憂鬱になっていく。
何とか一学期を乗り越えることで来て、夏休みを迎えれた。
クラスメイトに会うことがないと思うと本当にホッとした。
そんな時に竹林ちゃんから連絡があって、
柊君が私の市内にある陸上競技場で試合があると教えてくれたのだ。
私はお母さんと一緒に初めて市内の陸上競技場にきた。
その日は夏の強い日差しで厳しい照り返しがあって、
前を見るのが厳しいくらいの日差しで、帽子をしているにもかかわらず
目を細めて何とか自分の進む方だけを見て、進んでいたのだが・・・
「お、大分じゃん!」
私に声をかけてくれたのは中学一年生の時に担任をしていて、
陸上部の顧問をしている村西先生であった。
「お久しぶりです。」
私が挨拶をして、お母さんも一緒に挨拶をする。
そして、柊君が県大会に出ると聞いて応援に来たと伝えると、
「そっか、そっか。じゃあ、うちの学校のテントに来るといい。」
そう言って、私達を学校のテントへ案内してくれた。
先生が言うには、県大会に出場できる選手とその付き人を各1人ずつしか来てないから
ガラガラ何で遠慮なく入ってくれと言われて、テントの中に入ると、
「大分!久しぶり!」
笑顔の柊君が私を迎えてくれたのであった。
他にも同級生の女の子も県大会に出場するらしくて、テントの中にいた。
顔は知っているのだが、話したことがないので、挨拶を交わす程度であったが・・・。
柊君と久しぶりに話すことが出来たのだが、
すぐに試合の準備のために柊君はテントからいなくなった。
ただ、アップをする場所はテントから見える場所であたため、
アップしている柊君の姿がそこから見えた。
付き人の同級生?と共に笑顔でアップをしている柊君。
そこから一時間後にはハードルの予選はが始まり、
その組で1着を取るとテントの中が一気に湧いたのである。
どうやら組で1位を獲ると無条件で準決勝に参加できるため
準決勝確定で沸いたとのことであった。
試合を終えた柊君は、テントに戻ってきたかと思うと、
すぐにおにぎりを食べだしたのにはちょっと驚いた。
まだ時間は8時40分ぐらいだと言うのに・・・
「次の準決勝が11時からだからね。2時間前までには食事を終えておかないと駄目なんだよ。」
その言葉を聞いて、私は驚いてしまった。
私はそんなことを考えて食事をしたこともないし、
部活に対してもそんなに思いを込めてはいなかった。
結構な衝撃が私の頭に響くのを感じるのである。
真剣にやっている人はこうなんだ・・・
聞いたことがある。
柊君は成績もよく、時間を見つけては勉強したりしているということを。
この姿勢を見るときっとしっかりと考えてしているんだろうなと思ってしまう。
今までテストでも部活でも自分が思っていたことと全然違うのだと痛感するのであった。
真剣にすると言うことは・・・
その後の柊君は、水分を摂取一つとっても少しずつ取ったり、
時間を図りながら水分を取っていた。
ある時、お母さんが差入としてかき氷をみんなに配ったのだが、
柊君だけは申し訳なさそうに、
「申しわないです。」
そう言って断っていたのであった。
テントの中で柊君は目の部分にタオルを置いて横になっていたのだが、
ある時急に、
「そう言えばチョコくれたの大分だったんだってね?」
すっかり渡したことを忘れていたため
心の準備もできていなかった私は思わず
「ほぇ!?」
声にならない声が口から漏れてしまった。
たぶん、今私の顔を見ると耳まで真っ赤になっているんだろうな・・・。
「竹林が言ってたよ。それで・・・お返しできてないけど、何か欲しいものとかある?
屋台とか売店とかしかないからたいした物は返せないけど。」
「あ、あの・・・。」
そう言いながら頭の中では、なんで竹林ちゃんいったの!?とか、
どうしようとかが頭の中を駆けまわるのだが、1つもいい案は浮かんでくることはなかった。
だけど、思わず口に出たことは・・・
「表彰台に立っている姿を見せて欲しい・・・。」
「おおっと!なかなか、重いお願いじゃないか。」
先生がニヤニヤしながら、柊君に言う。
表情はタオルがかかっていてはっきりとは分からなかったけど
見えている口元は一瞬歪んでいるのだから、きっと困ったんだろうな。
だけど、すぐに、
「分かった。」
短いがハッキリと返事をしてくれたのであった。
その後に先生から聞いたら、今、柊君は県で5番目ぐらいの位置にいるらしくて、
もう一段気合を入れないと取れないから、いいはっぱになったよっと笑ってくれた。
準決勝も無難に勝ち上がり、決勝では柊君は3位となり、
私のお願いを見事に叶えてくれたのであった。
表彰台の上で私に向かって手を振る柊君は本当に・・・素敵だった。
その後、先生の計らいで表彰状をどこかでコピーしてくれて、
それに柊君のサインをして渡してくれたのであった。
「俺・・・サイン何ってしたことないけどね・・・。」
苦笑しながら渡してくれた。
柊君の試合が終わると中学校の選手も試合が終わったので
お母さんが「帰ろうか?」と言ったので、
最後の挨拶をみんなにしていく、最後に柊君にと思ったのだが、
その姿はテントにはなかったのである。
同級生の女の子に聞くと、
「柊?・・・ああ・・・・。」
そう言って口ごもる。
「たぶん・・・競技場の裏手にいるとは思うんだけどね・・・。」
あまりに浮かない顔をされたのだが、ここで会っておかないと、
それに伝えておかないときっと後悔をしてしまうと思って、
競技場の裏手へと行くのだが・・・
確かに柊君は見つかった・・・
だけど・・・
そこには・・・
涙を流して、壁を蹴り、殴っている柊君がいた。
「なんで・・・
なんで・・・
勝てないんだよぉ!!!」
さっきまで私達に見せていた笑顔とは全く違う姿がそこには会った。
今回の大会で上位二人は大会新記録を出しており、そのタイムは全国でも
1位と2位を取るっと先生が言っていたのである。
全国1位と2位に彼は勝つつもりで本気で挑んでいたことを初めて知ったのだ。
泣きながらも並べていたハードルで練習を始めている。
私の中でまた・・・
いや・・・
これが本当にショックだった。
心を打たれるというのは後にも先にもこれしかない。
私は本気で勉強していたのだろうか?
私は本気で頑張っていたのだろうか?
どこかで今まで習ってきてないしと思っていなかったのか?
柊君みたいに頑張っているのだろうか?
今の柊君に対して、私は頑張っているよと言えるのだろうか?
私はこの日から変わることが出来た。
夏休みを終えた時にはテストで学年でも上位に入ることが出来たのである。
更に人間関係も変わっていく。
うちの学校から陸上部の子達がボランティアに参加していたらしくて、
私が柊君と話しているのをたまたま見たらしい。
夏休みを終えて、クラスに行くと陸上部のクラスメイトや他のクラスの子が来て、
「大分さん!柊君と知り合いなの!!」
唐突に質問されたのであった。
彼女や彼は1年の時から柊君を知っており、
「いや~、同じ1年なのに先輩達をお構いなく抜くんだぜ!!」
「ハードルだってあんなに滑らかに飛ぶ人いないよ!」
全然違う学校なのに柊君のことで話が出来て、盛り上がってしまった。
たったそんなことで?と思うかもしれないけど、
この事があって、私の学校生活が本当に救われていった。
私の部屋には、あの時貰った表彰状が今でも飾ってある。
それを見ることで、私は頑張ることが出来きた。
今日は20歳を迎えて、小学校の時のクラス会が行われる。
幹事の竹林ちゃんの話では柊君も来るらしい。
今日は柊君伝えよう
君のおかげで私の人生を変えることができたことを
感謝の気持ちを
そして・・・
私が好きだったということを・・・
今度は言葉にして
また話を修正・追加するかもしれません。