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柊君へ  作者: Taさん
第一章
26/254

藤森さん ~7~

藤森さんの話です!

卒業式の日、私はやっと柊君に会えた。


式が終わって、正門前に学年全体で写真を撮った時に

ふとしたタイミングで柊君と正面から向かいあったのだ。


「卒業おめでとう。お互い無事に卒業できて良かったね。」


そこには私が楽しい時間を一緒に過ごしていた時の柊君がそこにいたのだ。


涙が・・・


涙が止まらない・・・


柊君の・・・いつもの柊君の声が聴けただけなのに・・・


とめどなく出る涙目に、とまどっている柊君の姿がぼんやりと見えたのだ。


話さなきゃ!!そう思ったのも束の間で

友達や後輩たちが私を、柊君によってきて、

結局話をする時間すら作ることが出来なかった。


だけど・・・


「柊君!ありがとう!柊君のおかげで中学生活は楽しかったよ。」


一生懸命にそれだけを伝えた。

その後、柊君からボタンを貰って、写真を撮った。


目が真っ赤になっていて、取り直しを要求したかったのだが、

すでに柊君は他の生徒達に囲まれていて、それもできなかった・・・


卒業式は、結局ただ一言だけ感謝の言葉を

伝えるので精一杯で終わってしまった・・・




高校は女子高に行くことにした。

男子に少し抵抗を覚えていたためと、

永田ちゃんが女子高にあこがれを持っていたらしくて

女子高しか受けなかったので、私がそれに付いていく。


「藤森ちゃん、私と結婚したいの?」


永田ちゃんの言葉に、


「永田ちゃんとなら喜んで♪」


こんなバカなことを言い合う仲なのだから。


女子高に入ってと言うか、中学時代からなのだが、

私はそんなに勉強はできない。


高校に入るとそのレベルの高さに四苦八苦してしまう。

これはヤバいということで永田ちゃんとと共に

2年生から塾に通うことにしたのだが・・・



「帰りのバスまであと30分くらいあるし、どこかでお茶する?」


「う~ん、私そんなに持ち合わせないから、ジュース買って自習室で飲まない?」


永田ちゃんの提案に賛同して私達はジュースを持って自習室に行く。

すでに最終の授業を終えた時間であったためか

自習室にはほとんど人がいなかった。


「ねえ、藤森ちゃん、あれって・・・。」


永田ちゃんが驚いた顔で誰かを指さして、私に見るように促す。

その先にいたのは・・・


「・・・うそ!?柊君?」


そこには中学の時は長かった髪をバッサリと切って

短い髪になった柊君がいたのであった。



「藤森、永田、どうしてここに?」


「それはこっちのセリフだよ!」


そのセリフを言いながら、柊君が言っている意味も分かる。


柊君が通っている学校は所謂進学校であり、同じ制服を着た生徒が多数いた。

それに対して、私の通っている学校は・・・バカな高校であるため

ほとんど・・・いや、まったく生徒が通ってはいなかった。

・・・自分でいうのもなんだけど・・・。


「私達はちょっと勉強についていけなくて・・。柊君はどうして?」


「俺は・・・じつは・・・。」


そこで柊君から聞いた衝撃の事実。


柊君はこの塾主催の模擬試験を受けたところ、

テストの点数が良かったために、何と塾への入学料と授業料がタダらしい。

更には塾から毎月5万円のおこずかいを貰っているという裏話を教えてくれたのだ。

バイトもしているらしいだのが、部活の遠征費とか必要なので来ているとのことだ。


「俺以外にも何人かいるぞ。」


どうやらこの塾の進学率の良さは、こういう生徒が多数いることで

成り立っているようだ。


私立の合格者数は、柊君のように呼んだ生徒に受験料と宿泊費、交通費を渡して

受けてもらったりして、稼いでるとのことであった。


柊君も塾からいくつかの私立大学の受験をして欲しいとお願いされているらしくて

そこの問題集を貰ったりしていた。


久しぶりに柊君と出会えたこともあって、喋り過ぎてしまい

自習室から追い出されてしまう。


「そろそろ帰らないとヤバいんじゃない?」


柊君の言葉でハッと時計を見るとあと少しで

最終のバスの時間になっていたのである。

3人で一緒にバスに乗って帰り、同じバス停で下りる。


「じゃあ、また来週ね!」


そんな私のサヨナラの挨拶に、


「ああ、来週はたぶん塾には行かないよ。」


「え?」


「これから陸上の試合が始まるからね。」


「ああ、そうだんだね。頑張ってね!また塾で!」


そう言って私達と柊君は分かれたのであった。



「まだ、陸上部してるんだね。」


感心したように永田ちゃんが言う。


「そうだね。ジュニアオリンピックとかに出てるしね。

さすがに全国で8位とかになる人は高校でもするんだね~。」


私も感心していた。


高校まで行くと、部活をする人は正直言って少ない。

うちの学校では、ある程度のレベルの人は高校で部活をしていない。


推薦できた子やレベルの高い子がやっているので、

私なんかは部活動紹介を見た時に感動してしまって、

私がその中でやっていける想像もできなかった。


この日は柊君の話題で盛り上がって帰宅したであった。



柊君が言ったように柊君の姿は塾で見ることはなかった。

女子高の陸上部の友達に聞いても、毎週試合だよ!と言って

お疲れだったので、柊君もきっと疲れているんだろうなと思って納得していた。


それに塾では難関大学コースの柊君とは授業の日も違っており、

なかなか会うことはなかった。

(チラッとは姿を見ることが出来ることもあったのだけど・・・。)



「ねえ、君ってさ、あそこの女子高の子でしょう?」


塾に入って男の子達から度々声をかけられてくる。

小柄な私にとって、数人で囲うようにされるのは

本当に怖いモノなのに・・・


「そ、そうだよ。」


怖さのあまりに強張ってしまう。

それなのに・・・


「うわ、緊張しているの?それも可愛いね。」


何を思ってか、ますます近寄ってくる男の子達に

逃げることすらできなかったのだが、

そんな時には必ずと言っていいほど・・・


「何か用事か?」


柊君が来てくれていた。


教室ではさすがにないのだが、自習室を使う時に

かなりの頻度で声をかけられていた。


授業の関係で、バスとの時間が合わずに30分から40分待つのだけど、

それを自習室で時間を潰そうとした時を私はよく狙われていた。


「チィ!」


舌打ちをする男の子達に、ビクッとしていしまう私。

どうしてもそんな態度が怖くなってしまっていた。


そんな時に柊君は私の傍にいてはくれるのだが、

絶対に私と距離を詰めようとはしなかった。

私が落ち着くのを見計らってくれて、落ち着いてから

ゆっくりと私に話しかけてくれるのであった。


ハッキリと言って、私はまた柊君のことが

好きになっているのを自覚している。


だけど、この時柊君には一つ上の先輩と付き合っていた。

その事実を教えてもらった時に、


「ちゃんと何でも話さないとダメだよ。」


「そうだな・・・。」


お互い苦笑したものだ。



気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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