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柊君へ  作者: Taさん
第一章
25/254

藤森さん ~6~

藤森さんの話です。

年が終わる頃になるとある噂が流れてきた。


“柊君が入院している”


え?っとは思うのだが、確認することなく私達は冬休みを迎える。

年が明けても柊君が登校していいないことを知った私は、

柊君のクラスに行って、いないことを確認しながら、

柊君の親友である深田君に話しかけるのだ、


「深田君!」


「え!?あ、藤森さん、どうしたの?」


私が柊君と付き合っている頃は一緒にバスケをしたりしていたので

お互い面識があるのだが、柊君と別れることになってからは、

校内で会っても挨拶をする程度であった。

そんな私が話しかけたことで驚いていたのであろう。


「柊君って・・・入院しているの?」


「あ、うん。」


「具合が悪いのかな?」


「そうだね。」


YES、NOはハッキリと言ってくれるのだが、

内容には答えてくれない。


「・・・どんな状態か教えてくれないかな?」


「・・・柊が言ってないなら、俺の口からは言えないよ。」


「・・・昔から?」


「そうだね。俺が知ってるだけで、3回くらい入院してる。」


「・・・知らなかった・・・。」


「まあ、そうだろうね。同じ小学校のやつらも知らないくらいだし。」


「深田君は知ってるんだね?」


「ああ、入院してる時に読む本とか差入してるからね。

 あいつ俺には遠慮なく呼び出すんだよ。」


「・・・そうなんだ。」


「そうそう、入院生活が度々あるから、

 あいつは本を読むようになったって言ってね。

 入院している時の本を読む量は普段の数倍以上でさ、

 俺なんか、毎日持って行っているくらいだよ。」


苦笑しながら笑う深田君。


「それは大変だね。」


「そういえば、藤森さんも良く読んでいるね本。」


「・・・え?」


「ここんとこ、柊にいわれて、この本をって言う本を選ぶんだけど

貸出者の所によく藤森さんの名前があるんだよね。」


「・・・私も本を読むの好きなんだよ。」


柊君との思い出がよみがえってきてしまって

ひどく弱く小さな声しか出てこなかった。


「・・・藤森さん、放課後少し時間ある?」


そんな時に深田君から誘いを受けたのだ。



放課後の教室で、私は深田君を待っていた。

永田ちゃんは今日は検査の日でいない。


深田君が私の教室に入ってきて第一声に


「藤森さんってどこまで知ってるのかな?」


そう私に聞いてきたのであった。


「え?どいうこと?」


「暴力事件のこと。」


「・・・・。」


私が柊君と別れることになった暴力事件のことを聞いてきた。

そして、思い出そうとするのだが・・・ハッキリとは思い出せないことに気づく。


「何か、みんなの中では派手に他校とケンカをしたってことになってない?」


「あ、けど、カツアゲが関係しているとか・・・。」


「そうなんだけどね。みんなの話を聞いていると

 他校とケンカをして、暴力沙汰になったけど

 柊とかは陸上でも勉強でも期待されているからって、

 罰を受けなかったんだって言われてるだろう?」


「・・・」


そんなことを言われていることを私は知らなかった。

そんなことをみんなからコソコソと言われてたのか・・・


「その話は全くの嘘でさ。」


「え!?」


「いや、ケンカしたのは本当なんだけど・・・。

 あの時はさ、俺が塾の授業が終わって、

 近くのコンビニにジュースを買いに行ったんだけど、

 その時に他校って言うか、高校生に絡まれてカツアゲされたんだよ。」


「・・・うん。」


そこら辺までは知っている。


「そこで俺が絡まれているのを見た誰かが柊達を呼びに行ってくれて、

 俺を助けに来てくれたんだ。」


・・・あれ?ケンカを仕掛けたんじゃ・・・


「最初は柊もそのカツアゲした連中を諭そうとしたんだけどね。

 そいつらが仲間を呼び出したんだよね。そしたら、そこら辺に仲間がいて

 人数が10人以上になって、あいつら勢いがついたんだろうな。

 俺達を殴り始めたんだよ。それで柊がその攻撃をいなし始めたんだけど、

 あいつが強いって言ってもたかだか知れてるからね。手加減できるのも

 数人レベルであって、人数が増えると手加減とか言ってられなくて

 あいつが全力で殴り倒しだしたんだよ。」


「・・・そ、そうなんだ・・・。」


私の脈がドンドン速くなっていくのを実感できる

頭が痛い・・・すごく痛くなっていく。


「俺達も必死に抵抗していたんだけど、

 向こうがナイフとか、警棒とか出してきてさ・・・。

 ああ、柊の頭の怪我は俺をかばって、

 警棒で殴られてパックリと割れたんだよ。」


ああ・・・柊君はやっぱり柊君なんだな・・・

友達をかばって自分が怪我をするって・・・

どこかで心が温かくなる。


「それでね・・・ここからは言いにくいんだけど、

 連中、実は藤森さんのことを探してたみたいなんだ。」


「・・・え!?」


「まあ、ついでにカツアゲもって感じだったんだろうけどね。

 その集団のボスみたいなやつが、柊の顔を見て、


 「お前!藤森ちゃんの!!」


 って叫んで、殴りかかったんだよ。」


・・・私?何でそんな人が私の名前を・・・


「藤森さんって、他校にファンクラブがあるんだってね?

 そいつもファンクラブの1人らしくて、どうしても藤森さんに

 自分と同じ学校に来て欲しくて、藤森さんに接触しようとしたみたいだよ。」


ちょっとまって!

じゃあ、私のせいで柊君はケガをしたってこと?


「まあ、それに気づいた柊は容赦なくその男をボコってたけどね。

 あれだけやれば、藤森さんにちょっかいを掛けようとは思わないよ。

 あれはトラウマになるくらいだよ。」


深田君が笑うのだけど、私は全く割る気持ちになれない。


どうして・・・私に何もいってくれなかったの?


あんなに何でも話せてたよね?


頭の中を色んな疑問が浮かんでくるのだが、その回答は誰も答えてくれない。


「・・・柊君って今、どこに入院しているの?」


「それを教える気はないよ。」


「え?」


その時になって私は気づいたのだ深田君の目が厳しいことに。

いつも笑顔だったはずの深田君の目が、今までにないくらいに厳しい目になっていた。


「だって、藤森さん・・・


 柊を切りすてたじゃん。」


その言葉に衝撃が走ってくる。

確かに・・・柊君に別れを告げたけど・・・


「柊に事の真相を聞いたりした?

 まあ、あいつは話はしないだろうけど、

 俺や竹中とかに聞いたりした?」


「・・・。」


「してないよね?

 それに俺も藤森さんが来た時に、同じ教室にいたけど、

 何も聞かずにただ断罪して切り捨てて去っていっただけじゃん。」


「けど・・・事情を知らなかったし・・・。」


「まあね、それは分かるよ。

 だけど、何も聞かずに決めつけたのは藤森さんだよね?

 柊が話をしようとしても話を拒絶したのは藤森さんだよね?」


“会って話がしたい” 柊君からはメッセージは来ていたけど、

私は返答することなく、無視していた・・・


「少なくともそんな人に教えるつもりはないよ。」


「・・・・。」


「それに柊には今、一緒にいてくれる彼女がいるからね。」


その言葉に衝撃を受ける。


「え?柊君、彼女いるの?」


どこかで柊君のことを気にしている自分がいて、

実際のところ、聞き耳は立てていたが、そんな話は全く聞いていなかった。


「ああ、俺の恩人でもある人だよ。

 俺が絡まれた時に助けに来てくれて、すぐに警察を呼んでくれた人。

 その子が今、毎日柊の所に行ってるから、邪魔はしてほしくないんだよね。」


「・・・。」


「あと・・・残念だけど、柊はスマホ変えたから。番号ごと。」


「え?」


「藤森さんと付き合うようになってから、誹謗中傷のメッセージとかが多すぎて

 変えたんだよ。今は一部の人間しか知らないから、連絡はできないと思うよ。」


私は・・・そんなことになっているとは知らなかった。


柊君・・・


その日からしばらく、ほとんど寝ることが出来ずに過ごした。

柊君に真相を聞きたいと思っても、その手段すらない。


入院している柊君だが、たまに学校には来るようになったらしい。

けど、学校で私は会うことは出来なかった。

あとから聞いた話では教室にはいかずに、保健室で休み休み勉強をしていたようだ。


更には、受験のために柊君は他県の高校を受けたりして、

学校に来ない日も多々あった。

当然私も同じように受験で学校に行けない日があり、

会えない日が続いていた。


ただ、柊君の成果は見ることが出来て、


「県内で一番の私立高校受かったらしいぞ!!」


とか、


「九州最難関の私立高校受かったらしいぞ!!!」


などの情報だけは耳に入れることが出来たのであった。

だけど、そんなすごいことでも私は暗い気持ちになってしまっていたのだが・・・。



気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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