中畑さん ~6~
素直になれない中畑さんのお話です。
「わざわざ外にでて待ってなくてもいいのに・・・。」
思わずそう言ってしまう。
本当は違う!
本当はうれしいのだけど・・・
わざわざ家の前で待っていてくれるなんてさ!!
わかっているけど・・・うれしいんだけど!
自分の母親に見られるなんてさ!!!
もう!!お母さんもあんな興味深々でこっちを見なくてもいいじゃんか!!
はずかしいし・・・
もし柊が気づいていたら、挨拶してくれるよ・・・こいつは・・・
そしたら・・・もう!!あんなお母さんを柊になんか紹介できないし!!
いろんな思いが自分の中で渦巻いてしまう。
そして、それが・・・柊に当たってしまうのだ・・・
本当に最悪だよ・・・
「近いけど、中畑は女の子じゃん。だから、何かあっても困るだろうからさ。」
「・・・近いんだから大丈夫だよ。それに田舎者だし大丈夫。」
「そうか?別に見た目で田舎者とかはわからないけどね。」
「・・・そういいながら、どこかあか抜けないとか思ってるんじゃないの・・・。」
自分の中では、心配してくれた柊に対して、すごくうれしい!
うれしいけど・・・それを素直に言葉には出すのがめちゃめちゃ恥ずかしいし・・・
「え?いや、全然。っていうか、中畑はかわいいから心配したんじゃん。」
・・・え?
今、柊って何て言った?
私のことをかわいいって言ってくれた?
もう一度聞きなおしたい!!
そう思って、
「・・・なんていった?」
聞こえないふりをした。
今はちょうど柊が前を歩いて、柊の家の庭を歩いていた。
本当に柊の部屋は庭の中に離れてあって、そこまで歩いて行かないといけない。
まあ、ちょこっとだけどね。
だけど、普通に親がいる建物から離れている部屋に
柊と私が二人でいるって・・・
そう考えるだけで、心臓がバクバク言う!!
すぐそばに柊の両親がいる建物がいるとわかっていても
柊と二人きりって考えただけで、顔まで熱く感じてしまう!
そんな中でだ!!!
「中畑はかわいいって言ったんだよ。」
そんなことを私の目の前に顔を近づけて行ってきたのである!!!
たしかに私が聞いたけどね!!
それでもわざわざ顔を近づけなくてもいいじゃんか!!
ってか、近いし!!
私は思わず顔をそむけてしまう!
だって、あんな至近距離で直視なんてできないし!!
・・・なんか柔らかい匂いもするし・・・
私・・・匂い大丈夫かな・・・そんな心配をしてしまって、
柊から一歩だけだけど距離をとるのであった。
「・・・ねえ、聞いてた?」
柊の言葉を聞いてハッと気づく!!
そういえば柊から今もまた“かわいい”って言われたし!!
なんかうれしいけど、照れ臭い・・・
自分の中でいろんな気持ちが混ざってしまうのである。
「・・・うん・・・。」
何とか柊に対して返事をして、あとは黙って、柊の後ろを歩いていく。
すぐに柊の部屋について、
「どうぞ。」
「うん・・。」
柊の案内で柊の部屋へと入っていくと、
部屋の中には、ベッドと勉強机、それと部屋の真ん中に小さなテーブルがあった。
「そこにあるクッションに座ってよ。」
「・・・わかった。」
私は言われるがままにクッションに座ると、
柊はなんと部屋に備え付けの冷蔵庫を開けるのだ!!
「柊、部屋に冷蔵庫があるの!?」
「まあ、小さくって、冷蔵しかないけどね。」
そういって、お茶を出してくれて、私に差し出してくれるのであった。
「うらやましい!!部屋に冷蔵庫ってめっちゃ便利じゃんか!」
そういいながら柊からお茶を受けとる。
きっちりと冷やされており、火照っている今の私にはぴったりだ。
そのお茶を飲んで一息ついたところで、
「じゃあ、とりあえず勉強を始めようか。」
「・・・うん。」
私の座ったテーブルの反対側に柊が座り、
お互い、学校の教科書を開いて、授業が始まったのだ。
丁寧に、しかもわかりやすく教えてくれる柊・・・
・・・こいつ・・・先生としてもやっていけるんじゃないの?
そう思えるくらいに教えるのが上手な柊。
「・・・もっと早く教えてくれたらよかったのに。」
思わず口から洩れてしまう不満!
だけど、本気でそう思っているのだから仕方がない!
これだけ丁寧に教えてくれたのなら、
決してこの間の実力テストで最下位なんか獲らなかったのに!!
・・・というか・・・
「・・・ねえ、柊。」
「なに?どこかわからなかった?」
「いや、そんなことはないけど・・・。
それよりも私って・・・
一年の時の勉強もあんまりできていない?」
ふとしたことで気づいてしまった。
柊がスラスラと教えてくれるからなのだが、
いくらわかりやすいとは言え、急に計算式が飛んだりする。
例えば、途中で「公式のこれを使って。」と言ってくれるのだが、
私にはその公式なんて記憶にない!
だから、一瞬手が止まってしまう。
当然柊も気づいてくれるのだが、
教えられていることをわざと教えてくれない。
気を使われているのである。
なんか・・・ちょっといい気分ではないな・・・
その後も勉強を続けてい行くのだけど・・・
「ねえ、柊。」
「何?」
「私・・・一年生の頃からの勉強をしたほうがいいんじゃない?」
決して前の学校では成績が悪かったわけではない!
むしろ学校では1、2位を争うくらいに勉強はできていた!
それなのにここに来たら、いきなり最下位になるし・・・
いや、今はそこはいい!
それに柊の優しさもわかっているし!!
それに・・・私の・・・自分の気持ちもわかっている!
だから私は、
「・・・ねえ・・・一年生から教えてよ。」
「・・・やっぱりそうなるよね。」
柊もやっぱりうすうすと気づいていたんだな・・・
柊が自分の机から、一年生の時に使ったと思われる教科書を
準備してくれたのであった。
・・・っていうか、やっぱり私の基礎が足りないってわかっていたんじゃないよ!!
もう!それは優しさじゃない!!
キッと柊を思わずにらんでしまうのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




