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柊君へ  作者: Taさん
第三章
206/254

田澤さん ~8~

女子高育ちの控えめ女子 田澤さんのお話です。

三回生の末になるとそれぞれどこの研究室を希望するのかの

調査用紙が配られた。



「どこにする?」


「うぅ~ん・・・どうしようかな~。」


私と日暮さんは悩んでいた。

日暮さんは希望している研究室が2つあって、

どっちにしようかで悩んでいた。


ポジティブな理由での悩みだから私はものすごく羨ましかった。


逆に私はどこの研究室に行きたいっというのがなくて、

困ってしまっていたのだ。


研究室の見学はすでに済ませているのだけど、

全部を見てもそれでもどこに行きたいというところがなくて、

本当に困っていた。


そんな時に、



「私と一緒の研究室にしない?」


日暮さんが誘ってくれたのである。


すっごく嬉しいことではあったのだけど、

正直に言って、私がまったく興味がないのが

今、日暮さんが選んでいる研究室なのである。



・・・どうしよう・・・


日暮さんのお誘いはすごくうれしいけど、

どうしようと思うばかりだ。


ただ、どこも興味がないのなら、

友達と一緒の研究室に行くのもありかと思う。


例えそこが興味のない分野だったとしても・・・



「ちょっと・・・考えておくね。」


「ええぇ~!!いいじゃん!一緒にいた方が楽しいよ!

 私は田澤ちゃんと一緒だと嬉しいのにぃ~!」


日暮さんからは結構熱く口説かれて

私もそれでもいいかな?と思っていたのだけど・・・





“くぅ~”



「・・・今日は部活の前に軽く何か食べておこうかな・・・。」


いつも部活が終わってからご飯を食べていた私だけど、

今日は部活がコンサート前だから遅くなるのと

お昼少なめのご飯だったせいか、お腹が空いてしまっていたので

夕方に久しぶりに学食へと向かう。


するとそこには、窓辺でご飯を食べている柊君を見つけたのだ!



「柊君!」


「あ、田澤さん!どうしたの?夕方に食堂に来るなんて珍しくない?」


「うん、今日はちょっとお腹すいちゃって、

 それに今日の部活は遅くなるから食べようかと思ったの。」


「へぇ~、そうなんだ。」


「・・・ここって空いてる?」


「うん、空いてるよ。荷物置いて行って大丈夫だよ。」


「じゃあ、お願いするね。私はご飯取ってくるから。」


「はいよー!」


私はいそいそとレジの方へと向かうのであった。


レジでご飯を受け取った後に

また柊君のいる席へと戻って来た。



「・・・それって、進路?」


柊君はテーブルの上で、パソコンを見ながら、食事をとっていた。

その画面に映し出されていたのは、とある研究室のホームページである。



「そう、いやぁ~、どこにしようか悩んでいるんだよね。」


「へぇ~柊君でも悩むんだね~。」


「まあね、やりたいことが二つあって、

 どっちにするのかを悩んでいるんだよ。」


「そっか・・・。」


柊君は私に自分が悩んでいる理由をすらすらと話してくれる。

結構、私って信頼されているんだね~・・・。


そんな時に私はふと、



「柊君の周りの人達はどっちにいくの?」


そう尋ねると、



「え?あいつらがどこに行くのかなんて知らないよ?」


「・・・え?」


「だって、あいつらはあいつらはだし、俺は俺じゃん!

 自分でそこはしっかり選ばないときっと後悔するんじゃない?」


「・・・。」


「その後悔を友達に押し付けるのはしたくないからね~。」


淡々とそう答えてくれたのだ。



・・・それは・・・そうだよね・・・


誰かに選んでもらう方がきっと楽だよね。


それにもしそれが失敗したとしても

それをその人のせいにすることもできるしね・・・。


柊君が何でもないように言ってくれたことが

私の頭を結構激しく殴ってくれたような気がした。


今の私の選択は日暮さんの選んだ選択に便乗しようとしていた。

とくに私がしたい、学びたいと思っていない分野にも関わらず・・・


だけど、そんな選び方って駄目なんだな・・・


もしかしたら日暮さんに感謝するかもしれないけど

逆もありえるのだから・・・


ホント・・・柊君の言う通りだだよ。


私は食事をしながら、自分の悩んでいることを打ち明ける。

すると柊君は私のことにも関わらず、親身になって相談に乗ってくれたのであった。


実際にその日だけではなく、

そこから連日私と話をしてくれたし、

少しでも興味がありそうな研究室が見つかったら、

柊君のコネで先輩を見つけてくれて、

一緒に色々と話を聞いてくれたりもしてくれた。


柊君のおかげで私がやりたいと思える研究室を

何とか見つけることができたのである!!



「ありがとう・・・本当に・・・。」


そんな私の本当の感謝に、たた一言だけ、



「どういたしまして。」


そういって、笑顔を向けてくれるだけで終わったのだ。


色々と迷惑をかけたと思うからお礼をと思ったのに

まったく受け取ってくれない柊君。


ああ・・・・


見返りを求めることもなく、

本当に善意だけで私を助けてくれたんだな・・・


気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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