田澤さん ~8~
女子高育ちの控えめ女子 田澤さんのお話です。
三回生の末になるとそれぞれどこの研究室を希望するのかの
調査用紙が配られた。
「どこにする?」
「うぅ~ん・・・どうしようかな~。」
私と日暮さんは悩んでいた。
日暮さんは希望している研究室が2つあって、
どっちにしようかで悩んでいた。
ポジティブな理由での悩みだから私はものすごく羨ましかった。
逆に私はどこの研究室に行きたいっというのがなくて、
困ってしまっていたのだ。
研究室の見学はすでに済ませているのだけど、
全部を見てもそれでもどこに行きたいというところがなくて、
本当に困っていた。
そんな時に、
「私と一緒の研究室にしない?」
日暮さんが誘ってくれたのである。
すっごく嬉しいことではあったのだけど、
正直に言って、私がまったく興味がないのが
今、日暮さんが選んでいる研究室なのである。
・・・どうしよう・・・
日暮さんのお誘いはすごくうれしいけど、
どうしようと思うばかりだ。
ただ、どこも興味がないのなら、
友達と一緒の研究室に行くのもありかと思う。
例えそこが興味のない分野だったとしても・・・
「ちょっと・・・考えておくね。」
「ええぇ~!!いいじゃん!一緒にいた方が楽しいよ!
私は田澤ちゃんと一緒だと嬉しいのにぃ~!」
日暮さんからは結構熱く口説かれて
私もそれでもいいかな?と思っていたのだけど・・・
“くぅ~”
「・・・今日は部活の前に軽く何か食べておこうかな・・・。」
いつも部活が終わってからご飯を食べていた私だけど、
今日は部活がコンサート前だから遅くなるのと
お昼少なめのご飯だったせいか、お腹が空いてしまっていたので
夕方に久しぶりに学食へと向かう。
するとそこには、窓辺でご飯を食べている柊君を見つけたのだ!
「柊君!」
「あ、田澤さん!どうしたの?夕方に食堂に来るなんて珍しくない?」
「うん、今日はちょっとお腹すいちゃって、
それに今日の部活は遅くなるから食べようかと思ったの。」
「へぇ~、そうなんだ。」
「・・・ここって空いてる?」
「うん、空いてるよ。荷物置いて行って大丈夫だよ。」
「じゃあ、お願いするね。私はご飯取ってくるから。」
「はいよー!」
私はいそいそとレジの方へと向かうのであった。
レジでご飯を受け取った後に
また柊君のいる席へと戻って来た。
「・・・それって、進路?」
柊君はテーブルの上で、パソコンを見ながら、食事をとっていた。
その画面に映し出されていたのは、とある研究室のホームページである。
「そう、いやぁ~、どこにしようか悩んでいるんだよね。」
「へぇ~柊君でも悩むんだね~。」
「まあね、やりたいことが二つあって、
どっちにするのかを悩んでいるんだよ。」
「そっか・・・。」
柊君は私に自分が悩んでいる理由をすらすらと話してくれる。
結構、私って信頼されているんだね~・・・。
そんな時に私はふと、
「柊君の周りの人達はどっちにいくの?」
そう尋ねると、
「え?あいつらがどこに行くのかなんて知らないよ?」
「・・・え?」
「だって、あいつらはあいつらはだし、俺は俺じゃん!
自分でそこはしっかり選ばないときっと後悔するんじゃない?」
「・・・。」
「その後悔を友達に押し付けるのはしたくないからね~。」
淡々とそう答えてくれたのだ。
・・・それは・・・そうだよね・・・
誰かに選んでもらう方がきっと楽だよね。
それにもしそれが失敗したとしても
それをその人のせいにすることもできるしね・・・。
柊君が何でもないように言ってくれたことが
私の頭を結構激しく殴ってくれたような気がした。
今の私の選択は日暮さんの選んだ選択に便乗しようとしていた。
とくに私がしたい、学びたいと思っていない分野にも関わらず・・・
だけど、そんな選び方って駄目なんだな・・・
もしかしたら日暮さんに感謝するかもしれないけど
逆もありえるのだから・・・
ホント・・・柊君の言う通りだだよ。
私は食事をしながら、自分の悩んでいることを打ち明ける。
すると柊君は私のことにも関わらず、親身になって相談に乗ってくれたのであった。
実際にその日だけではなく、
そこから連日私と話をしてくれたし、
少しでも興味がありそうな研究室が見つかったら、
柊君のコネで先輩を見つけてくれて、
一緒に色々と話を聞いてくれたりもしてくれた。
柊君のおかげで私がやりたいと思える研究室を
何とか見つけることができたのである!!
「ありがとう・・・本当に・・・。」
そんな私の本当の感謝に、たた一言だけ、
「どういたしまして。」
そういって、笑顔を向けてくれるだけで終わったのだ。
色々と迷惑をかけたと思うからお礼をと思ったのに
まったく受け取ってくれない柊君。
ああ・・・・
見返りを求めることもなく、
本当に善意だけで私を助けてくれたんだな・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




