藤森さん ~1~
藤森さんの話です。
ちょっと長い話になっています。
小学校の時、隣の小学校とバスケットボールの対抗試合があった。
3つの小学校が試合をするのだが、大会の会場が私のいる小学校だった。
自分の学校だったので、私のいた学年全員で自分の学校の代表を応援するのだが、
私は他校の1人の男に夢中になってしまう。
第一試合で、その彼のいた学校と私の学校が試合をした。
この試合で私はこの日彼から目を離すことは出来なくなった。
ジャンプボールでその彼が簡単にマイボールにし、
ポイントガードにボールを渡すと
すぐにゴール下に向かっていったのだが、ここからがホントにすごい!
開始早々で、まだまだバタバタとしている中、それは起こった。
ポイントガードの子がふわっとしたパスを出すのだが、
ボールはあさっての方向に行ったので、
みんながパスミスだな・・・と思っていたところを、
彼が空中でキャッチする!!
そして・・・
そのままボールを掴んだままゴールに叩き込んでしまうのだ!!!
静まり返る会場の中で、選手が鳴らす靴の音だけが
キュ、キュと響き渡る。
「アリウープ・・・アリウープだよ!!」
私は思わず叫んで友達の手を取ってはしゃいでしまうのだが、
先生から、
「藤森さん、敵のチームだからね。」
注意をされてしまうが、私の興奮は冷めやらない。
今試合をしていない学校の生徒達は大声で叫んでいるが、
うちの学校の生徒はざわついて、
「勝てるわけないじゃん・・・。」
と小声で話すだけであった。
その後の試合も彼のチームが圧倒していく。
ゾーンを組んで、ゴール下を封じて、
彼にプレイをさせないようにするのだが、
そうなると彼がゾーンの外からシュートを打ってくる。
それに、彼のチームには外から完璧に決める選手がいて、
ゾーンでは止めることが出来ないのである。
“スラムダンクの世界みたい”
私が好きなマンガの世界がそこには広がっているようだった。
私の学校はそのまま何もできずに負けてしまい、
2試合目の他の学校も一応対策に彼にマンツーマンで付かせてはいるものの
ドリブルも上手な彼を止めることが出来なくて、結局彼の学校が勝ってしまう。
優勝が彼の学校で、私の学校は最下位に沈んでしまった。
だけど、そんなことはどうでも良くなっており、
何とか彼のことを知りたいと思ったのだが・・・
結局話しかけることもできずにこの出会いは終わる・・・
そう思っていたのだが・・・
小学校も後、半年で卒業というタイミングで親が家を購入する。
小学校校区は変わらないのだが、中学校の校区が変わってしまうのだ。
家が変わる前だと、私が通っている小学校の生徒がメインで、
他の校区から数十人が集まってくる学校であったの。
だけど引っ越しをした先の校区ではバスケの彼がいた小学校がメインで
私達の学校と別の学校から数十人が集まってくる校区の中学校。
“こ、これって・・・”
私と仲が良かった友達の永田ちゃんも同じ校区になるので、
今まで別れることにすごく悲しかったけど、それもなくなった上に
彼にも会える可能性がものすごく高くなったのである。
だけど、もしかしたら、こっちの中学校に彼が来る可能性も・・・
期待も、不安も抱えながら残りの小学校生活を過ごしていった。
中学校への入学式
その日は緊張と期待とであまりに眠れなかったので
一時間も前に学校に行ってしまう。
ただ、永田ちゃんも同じだったみたいで、
2人で仲良く一時間も前に登校しちゃったのだ。
一年生の玄関にはクラス発表が張り出されていて、
二人で仲良く探していくと・・・
「あったよ!藤森ちゃん!私も一緒のクラスだよ!!」
「やったねー!」
二人で手を握りはしゃぎ合ってしまう。
「良かった。クラス一緒で。」
「ねー。」
仲良く2人で教室に向かっていき、教室を家探ししながら、
ベランダに出たりして過ごしていた。
さすがに席までは近くとはいかずに、少し離れた位置だったので、
二人でベランダで時間が来るまで話したり、通ってくる生徒を見ていた。
ただ、メインは・・・
「藤森ちゃんの好きな彼がいるといいね~。」
知っているのだ永田ちゃんは・・・。
二人で一生懸命探したのだが、
生徒数が800人ほどの中から一人を探すのはやっぱり無理だった。
入学式でも探してみたものの結局分からず、
その後も数日が経っても見つけることは出来なかった。
「う~ん、私は覚えてないし、藤森ちゃんの記憶だけが頼りだからね・・・。」
休みの日に私の家で永田ちゃんと作戦会議をしている時に、
「あ!!!」
永田ちゃんが大声を出すので、
「どうしたの?」
「あの学校の子達がいるんだから、バスケの代表の子のことを聞けばいいじゃんか!!」
まさに目から鱗のアイディアだった。
「そうだよねー!聞けばいいんだ!!」
「そうだよ!私達2人で探す必要はないもんね!!」
永田ちゃんを「天才だよー」とほめて、
「うむ!苦しゅうない!」と永田ちゃんがいって
2人で笑い合って、次の登校日を待っていた。
ただ、私達の作戦は月曜日の朝にいい意味で崩れることになった。
学年集会が月曜日の朝から開かれたのだが、
「みんな、先週末に実力試験の結果は返ってきていると思うけど。」
入学してすぐに実力試験があって、
永田ちゃんと「ひどい!!」と叫んでいた試験だ。
それについて何かあるのだろうかと思って、
学年主任の先生の声に耳を傾けると、
「はっきり言って、例年になく悪い!
これだと自分達が希望する高校には行けなくなるかもしれないぞ!!
だから、今年はテスト結果の張り出しを一時的に取りやめようとしていたのだが、
例年通り張り出していき、みんなで競い合っていってもらいたい。」
テスト結果を張り出していく!?
驚きのあまり目が点になってしまう。
私・・・あんまりテスト良くないのに・・・。
うぅ・・・っとうなってしまうのだが、
「ただ50位以内までの張り出しだから、
自分の名前が張り出されるように頑張ってもらいたい!
それと上位10人がどういうやつらかなのを確認して、
これから自分もみんなの前で呼ばれるように頑張ってもらいたい。」
そういって、学年主任が一位から生徒一人一人を呼び、立ち上がらせるのであった。
立ち上がった生徒は思い思いの対応をして、1位の曽田君は笑顔で皆に手を振るのだが、
みんなからブーイングが飛び、3位の田原さんは・・・すごい綺麗な子でびっくりした。
「5位 柊!」
「はい。」
ちょっとやる気のない返事で立ち上がった生徒に目が釘付けになる。
彼だよ!!!
思わず、声が漏れそうになるのだが、必死で我慢して柊君を見つめてしまう。
小学校の時に見た彼。
あ!?
急いで彼が立っている位置を確認して、彼が6組にであることを確認する。
私が1組だし、校舎が別棟のクラスだから気づかなかったんだ!!
本人を見つけるとドンドン知りたい欲求が湧いてくる。
“あぁ、永田ちゃんに伝えないと!それから、柊君の下の名前を調べて・・・。
あ、す、ストーカーにはならないように気をつけないと!!
だけど、彼のことがもっともっと知りたいな・・・。”
学年集会が終わって、クラスに戻ったら、すぐに永田ちゃんに駆け寄って、
「見つけたよ!!」
私の声に目を見開いて驚いてくれた永田ちゃん。
だけど、この時は話す時間もなくって、次の休み時間、その次の休み時間、
結局この日は休み時間の度に柊君のことを話すのであった。
「落ち着いて、落ち着いて藤森ちゃん。」
苦笑しながら永田ちゃんが私を落ち着かせてくれるのであった。
帰りには廊下に貼られた成績表で下の名前を確認する。
今日は一日ものすごく楽しい日になったな~。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




