御船さん ~12~
真面目だけど苦難が起こる御船さんのお話です!
こうして大学院の博士前期課程を修了した後、
さらなる勉強のために博士後期課程へと進んだのである。
そして・・・
そこから2年が経ち、あと一年で博士後期課程が終わる時期となった。
そこで私はまた悩んでいるのである・・・
「ホント・・・どうしたものかな・・・。」
そう言いながら、私はスマホに写し出されている柊君を観ている。
そこには4年前に卒業式で撮った写真が写しだされており、
「お互い若いな・・・。」
たかだか4年!されど4年だ!
この時に比べて若さが足りないのを実感してしまうのである。
今の悩みはこのまま大学に残ってポストドクターになるべきか、
それとも就職するべきなのかを悩んでいた。
所謂私のやってきたことは基礎研究であり、
それをそのままやっている企業はない。
だから、この基礎研究を引き続きやりたいと思ったのなら、
研究室に残って研究していくしかない。
一応ポストドクターの枠はあると言われているのだが、
契約社員のようなモノで、一年契約でと言われている。
だから、一年後にまた契約を結んでくれるのかは不明である。
そんな状態を良しとするか・・・
正直に言って、今の段階で各大学とも助教などの教員枠が空いていないため
教員になると考えた場合には、何年か待つ必要があり、
そのためにポスドクを選択するというのもありだ。
だけど、その枠がいつ空くかもわからないのに待つのは精神的に辛そうだよね・・・
だったら就職か・・・
私が専門的にやってきたことではないけど、
私のいる研究室でやっている研究がいくつかあるうちの1つをやっている企業がいて、
そこの企業には毎年博士前期課程卒業以上の人に応募がきており、
私も希望を出せば、そちらに行くこともできる。
少しの妥協で、まだまだ研究が出来る上に、正社員となれるため
ポスドクよりもずっと安定的になるのである。
だから、他のみんなはいつも嬉しそうにこの枠を使って、就職していた。
私も・・・そうするべきなんだろうか・・・
博士後期課程に入ってからずっと考えていたが、ここまで約2年間考えても
まったく結論が出ないのである。
「それなのに、今日ちょっと悩んだくらいで結論なんてでないよね・・・。」
柊君の笑顔の写真を見ながら苦笑してしまっていると、
いきなりスマホの画面が変わって、鳴り出したのだ!!
思わず目を見開いてしまう!
そこには柊君の名前が表示されていたからだ!!
私間違って柊君に電話かけたかな!?
それをまず最初に疑ってしまう!
だって、今日はずっと柊君の写真を開いてみていたのだから、
写真の検索していると思っていたが、実は電話帳の検索をしていて
気がついたら電話をかけていたとか!?
だけど、何度見てもそこに表示されているのは柊君で
そのマークは私に対して電話を掛けてきているのであった。
私は襲る襲る電話にでると・・・
「お久しぶり!御船さん!」
「お、お久しぶり!っていうか・・・今ってアメリカにいるんじゃなかったの?」
「ああ、ちょうど日本に帰国したばっかりだよ。
あれ?御船さんの学校の方のメールに昨日から帰宅するって入れていたと思うけどね。」
「え?・・・みてないや。」
「それあ・・・御船さんが悪いんじゃないかな?
じゃあ、来週みんなで飲みませんかって前田さんが音頭を取っているメールも見てないと?」
「見てないね・・・知らなかったわ・・・。
明日にでも見て、返信しておくよ。」
「宜しくね。それで、今電話大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。」
「御船さんって来年には卒業できそうなの?」
「・・・いきなり失礼なことを聞いてくるね。出来るわ!!」
「それは良かった。それでその後はどうするつもり?」
「え!?」
思わず目を見開いてしまう!
だって、今そのことを悩んでいたのだから!!
まるで私の心を見透かしたような感じのタイミングでの電話だし、
心臓が止まるかと思うくらいの驚きをしてしまう!!
「決まってるの?」
「・・・決まってないよ。今は・・・悩んでて・・・。」
これは神の思し召しのように感じてしまって、
思わず素直に柊君に今の悩みを告げるのであった。
私は人生の節目節目には必ず柊君に甘えてしまってるな・・・
だけど、これは自分で決めなくちゃいけない進路のことなんだから!
そう思っていたのだが、柊君からの予想だにしない言葉に
私はまた心臓が止まると思ってしまうほど驚いてしまう!!
だって、その発言はまったく予想していなかったのだから!!
「俺が電話したのはさ、今俺が勤めている企業が大学といくつか共同研究しているだけど。」
「うん。」
「そのうちの一つで、神大学としているんだけど、
共同研究をしている研究室ではないけど、うちとの共同研究をするにあたって
力を貸してもらっている研究室があるんだよ」
「うん。」
神大学は関西圏にはあるけど、中心ではなくて、
少し離れたところにある大学であった。
ただ、あそこって女性の教員が多くって、
私達女性研究員の中ではちょっと有名なところである。
「そこの助教がさ、うちの企業を受けるみたいなんだよね。」
「へぇ~、そう・・・なん・・・だ・・・って!?え!?」
最初はそのまま流そうとしていたのだが、
その話の流れだともしかして・・・
私の心臓が早鐘を打ち始める・・・
もしかして・・・
その続きは・・・
「それでさ、その助教はたぶん受かるわけなんだよ。」
「う、うん。」
「それでそこの助教の席が一つ空くんだよね。
どうかな、御船さん受けてみない?」
「え!?」
話の途中から予想はしていたのだが、予想通りの言葉に驚いていしまう!!
というか、柊君の電話は予想外だったし、こんな話をされるなんて本当に予想外だよ!!
「そこの研究室ってたぶん、御船さんがやっている研究と類似してるよね?」
そう言いながら研究室名を教えてくれて、更には助教の名前を教えてくれるのだが、
まさに柊君が言う通りで、私がやってきたことと少しアプローチが違うだけで、
やっていることがだいぶ重なる研究をしている研究室であったのだ!!
「やってるやつだよ!!」
私はものすごく興奮していた!!
今悩んでいたことことの一番の解決策を
今この電話が解決してくれる可能性があるのだから!!
「どう?やってみたいと思わない?
もし受けてみたいと思うのなら、俺はそこの教授と面識があるし、
推薦状は書かせてもらうけど・・・。」
柊君が言い終わるよりも早く私は、食い気味で、
「宜しくお願いします!!」
そういって、電話越しだというのに、立ち上がって、頭を下げていたのであった!
そのくらい興奮している!!
「推薦状があっても、面接等があるから、そこからは御船さんの力だからね。
助教がいなくなってから公募が始まるから、あと数ヶ月先だけど、
公募が合ってもうちの会社の推薦があれば間違いなく受けさせて貰えるよ。」
「うん!受けさせて貰えるだけでも感謝だよ!!」
本当にそうである!
こんなに心強い推薦がもらえるなんてなかなかないことだ!!
「じゃあ、俺が日本のいる間に一度教授と准教授に挨拶に行こうか?」
「うん!!」
急に私の未来が開けていくのを感じたのであった。
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。




